予算1兆6794億円の景気対策「Go Toキャンペーン」 わかりづらい内容とその経済効果

2020.07.13

経済

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JR東日本、JR西日本、JR北海道の各社は需要喚起のため、運賃や特急料金が半額になる商品を販売。

かねてから注目されていた政府の景気対策「Go Toキャンペーン」が7月22日から先行実施される。現在、新型コロナウイルスの第2波が懸念されているなか、移動自粛が要請されている地域もありタイミングとしては少し微妙かもしれない。ただ、コロナ禍による経済の落ち込みは甚大で影響は拡大しており、その経済効果は大いに期待するところ。キャンペーンの内容がわかりづらい面もあるので概要の説明もあわせてしていく。

航空会社・旅行会社にとって移動自粛は何よりも痛い

来春採用の学生にとってショックなニュースが相次いでいる。ANAホールディングスは7月10日、グループ37社で進めていた3200人規模の来春採用を中止すると発表した。コロナ禍により人の移動が極端に低下したことを受け、5月に採用を一時中断していたが、第2波ともとれる感染拡大から長期化は避けられないとして決断した。同様にJALも来春採用を一時中断している。

また、大手旅行会社のJTBは、2020年の冬のボーナス支給をしないことを決めた。エイチ・アイ・エスも今夏のボーナス支給を見送っている。「JTBは学生の就職人気ランキングトップの常連企業だけに、ボーナス支給中止はコロナ禍の深刻さを浮き彫りにした」(エコノミスト)と言っていい。

航空会社や旅行会社にとって国内外の人の移動自粛は致命的である。6月末時点で今夏休み期間中の国内旅行の予約数は、昨年の同じ時期に比べ5分の1にまで減少しているほか、海外旅行は8月出発分まですべての国・地域で取扱いが中止されている。7月以降も航空各社では国内線で約5割、国際線の約9割で運休や減便が計画されている。影響は甚大と言わざるを得ない。

予算1兆6794億円「Go Toキャンペーン」が開始

コロナ禍によるこれら業種の苦境に政府も強力なテコ入れに乗り出している。

当初、8月上旬から予定していた「Go Toキャンペーン」を、7月22日から前倒しで実施することを決めた。同キャンペーンは、新型コロナウイルス感染拡大により甚大な被害が及んでいる国内の観光・運輸・外食・イベント産業等に対し、1兆6794億円もの予算を配分し、かつてない規模の需要喚起を促すもの。

「Go Toキャンペーン」には、「Go To Travel」「~Eat」「~Event」「~商店街」の4種類及び、「一体的なキャンペーンの周知」がある。

国土交通省が管轄する「Travel」が1兆3500億円と最も予算が大きい。旅行業者等経由で、期間中に旅行商品を購入した消費者に対し、代金の2分の1相当の宿泊代金割引や地域共通クーポン等(地域産品購入、飲食店・施設利用費、交通費などとして利用可)を、最大一人1泊あたり2万円を上限(日帰り旅行は1万円を上限)に補助する。

「Go To Travel」の補助イメージ

Go To Traveのイメージl

補助のうち7割が宿泊代金の割引、3割分は旅行先での買い物などで使えるクーポンとなる仕組み。宿泊代金割引は、宿泊と交通費がセットになったプランの場合は交通費も割引対象。個人で宿泊手配した場合も割引対象だが、交通費は割引対象外となる。

クーポンは一枚1000円(釣りなし)の商品券やアプリなど電子媒体のかたちで発行され、旅行先の周辺地域で旅行期間中のみ利用可能。事務局が一括発行したものが、旅行代理店や宿泊施設で配布される。

わかりづらいので付け加えるが、例えば一人1泊4万円の旅行の場合、1万4000円の割引と6000円のクーポン発行が受けられるわけだ。なお、連泊や利用回数に制限はないが、7月22日の事業開始時点では代金割引のみ適用し、クーポンは9月以降に導入される。
※キャンペーン実施前に予約している場合は、申請により割引分を還付

農林水産省が管轄する「Eat」では、オンライン飲食予約サイト経由で、期間中に飲食店を予約・来店した消費者に対し、飲食店で使えるポイント等を最大一人当たり1000円分付与するほか、登録飲食店で使えるプレミアム付き食事券(2割相当分の割引等)を発行する。

経済産業省が管轄する「Event」では、チケット会社経由で、期間中のイベント・エンターテイメントのチケットを購入した消費者に対し、2割相当分の割引・クーポンを付与する。なお、バウチャー・前売り券等がある場合は上乗せして割引。

同様に経産省管轄の「商店街」では、商店街等によるキャンペーン期間中にイベント開催、プロモーション、観光商品開発等をする。

なお、「Go Toキャンペーン」の期間終了日は現在未定となっている。

先行実施のタイミングは微妙だが経済効果の期待値は高い

いずれも“大盤振る舞い”と言っていい内容で、その効果についてエコノミストは「実質的に旅行商品価格を最大5割、外食とイベントの価格を2割程度引き下げる効果がある」と分析する。これが消費を喚起し、「旅行で約55%、外食で約20%、イベントで約45%の市場規模増加に寄与しよう」(先のエコノミスト)と試算している。

数値でいえば、キャンペーン期間中の半年間で、旅行は最大2兆1000億円、外食は最大1兆4000億円、イベントは最大2兆7000億円もの市場規模拡大が見込まれることになる。

緊急事態宣言の解除、営業自粛要請の緩和に伴い、コロナ感染の第2波が懸念されるなかの「Go Toキャンペーン」の実施であり、感染拡大に留意した取組みを余儀なくされるが、「安倍政権は財政再建を棚上げしても、足下のコロナ禍による景気の落ち込みを食い止めようと必死だ。かつてない規模の予算も配分されており、高い効果が見込まれる」(中央官庁幹部)という。

現在、感染者の増加に伴い各都道府県知事から移動の自粛要請が発せられるなか、前倒しの効果がどれほどあるかは不明だが、キャンペーンとしての期待値は高い。