経済

入国制限緩和がもたらした? レオパレスの危機脱出

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政府は10月1日から、全世界を対象に入国制限措置を緩和した。まず、3カ月以上にわたって日本に滞在する在留外国人の新規入国を認め、順次、対象者を拡大していく。さっそく、1日からビジネス関係者などとともに外国人留学生の再入国が始まった。

人手不足にあえぐ企業のために

入国制限措置の緩和に際して、菅義偉首相は9月25日の新型コロナ感染対策本部で、「観光客以外については日本人、外国人を問わず、検査をしっかり行った上で、できる限り往来を再開していく方針で臨む」と示唆していた。これまで159カ国・地域からの外国人の入国を原則禁じていたが、感染状況が落ち着いているベトナムやニュージーランドなど16カ国・地域とビジネスに限定した往来再開について交渉を進めてきた経緯がある。

早期に決断した背景にあるのは、恒常的な人手不足にあえぐ企業の要望だ。日本で働く外国人の数は、コロナ禍が本格化する直前の2019年10月時点で約166万人に達していた。安倍政権下で約100万人増加した計算になる。主導したのは、官房長官であった菅氏にほかならない。

実際、建設業や食品製造業、農業など外国人労働者に頼っている業種は多い。念頭にあるのは「技能実習生」の受け入れ再開だ。2019年の出入国管理統計によれば、同年中の新規入国者のうち技能実習生は約18万人で最多を占めていた。新型コロナウイルス感染の拡大で、東南アジアからの技能実習生の受け入れが白紙となった中小・中堅企業、農業事業者は少なくない。

「自らも秋田県のイチゴ農家出身の菅首相だけに、これら企業の苦悩を肌で感じられたのだろう」(永田町関係者)という声が聞かれる。入国者が増加すれば、それだけ新型コロナウイルス感染リスクも拡大するが、検査能力を拡充するほか、宿泊施設などで14日間の待機を求めるなど水際対策を徹底することで解禁に踏み切った。

入国制限の緩和の思わぬ副産物

こうした入国制限の緩和が、市場に思わぬ好結果をもたらしたことも見逃せない。施工不良問題から債務超過に陥ったサブリース大手のレオパレス21が、米投資ファンドの支援を受け、債務超過を解消するメドがたったことだ。

レオパレスは施行不良問題にコロナ禍が重なり6月末で118億円の債務超過に陥った。現預金は6月末で420億円あり、すぐさま破綻する可能性は少なかったが、株価は急落し、信用リスクが顕在化していた。債務超過が長引けば、いずれ法的整理の可能性も棄てきれなかった。

一方、レオパレスは、債務超過を解消するため、増資支援をめぐり複数のファンドと交渉を進めてきたが、「手を挙げたファンドの多くは途中でドロップ(支援を降りる)した」(市場関係者)という。最後に残ったのはソフトバンクグループが筆頭株主である米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」だった。フォートレスは出資と融資を合わせ572億円の支援を行うことを決め、レオパレスは債務超過を解消できるメドがたった。

このフォートレスの背中を押したのは、実は今回の入国制限の緩和にほかならない。金融関係者によると、「レオパレスは改修工事の遅延が問題視されているが、改修を終えた物件の入居率は97~98%と非常に高い。価格が手頃なことから転居する顧客が少ないわけだが、それに加え、外国人就労者の受け入れを業とする法人との契約が高いシェアを占めていた」というのだ。

レオパレスの入居率はコロナ禍により5月以降、損益分岐点の80%を割り込む状態が続いていたが、入国制限の緩和に伴い、外人就労者を受け入れる法人との契約が復活し、入居率の大幅な改善が見込まれる。入国制限緩和の思わぬ副産物といっていい。