マスコミから流される情報を疑う人はあまりいないだろう。しかし大メディアの情報がすべて正しいわけではないし、大本営発表かもしれない。受け手側には、真贋の眼を養ってもらいたいと思う。一方的な情報ほど怪しげなものはない。読者の皆さんにもご一考頂きたい。
報道は時に一方的に
CHAGE and ASKAのASKAが覚醒取締法違反で逮捕された。休日のお茶の間にニュース速報が駆け巡り、各社の報道合戦が繰り広げられた。
「やっぱり」と思う人、「大ショック」と落ち込む人、それぞれだと思うが、ほとんどの人が飛鳥は薬を使用していただろう、と感じたはずだ。実際に記者子もそう思っている。あの報道ではほとんどの人が黒に近い印象を得ただろう。事実は別にして。
昨年の週刊文春でクスリ疑惑が報じられてから数ヵ月後の逮捕だから、なぜやめられなかったのだろうか、と通常は考えるが、覚醒剤の常習性はそれ以上に身体を蝕むのだ。警察への情報提供は近親者からだったということだから、問題は奥深くにあったのだろう。
でもこれは、覚醒剤はけしからん!という記事でも、ASKA容疑者のことが主題の記事でもありません。
逮捕の報道後、知り合いの週刊誌の記者から電話があった。いろいろと調べて、記者子が知っていそうな事柄について尋ねてきた。もうそこまで調べているのか、と妙に感心してしまった。いやいや、感心してる場合じゃないだろう、俺。自分も情報源を駆使していろいろと発信していかなければいけないと身を引き締める。週刊誌の記者もそうだが、記者子たち記者クラブに入っていない者は、名刺(組織力)だけでは情報を取れないので、ネットワークづくりに余念がない。役立つ情報を得られるかもしれないと裏稼業の人たちに近づくこともある。信用でしか情報を得られないからだ。また話題が逸れた。
容疑者はほとんど罪人扱い?
さて、飛鳥容疑者が逮捕されたその日のうちに、「自宅から薬物が見つかる」「尿から陽性反応」「否認している」などなど、次から次へと報道された。誰が見て、誰が聞いたのだろうか? これを受け手側は疑問に思わないのだろうか? それが嘘だとは思わないけど、誰が情報を提供したのか。
それって、捜査関係者しかわからないことじゃないの? 捜査関係者とはすなわち公務員だ。公務員は業務上知り得たことを他言してはならないという守秘義務を負っている。ということは、取調室の状況も誰か公務員が漏らしたか、盗聴しなければ事実はわからないはず。
報道の自由や、知る権利とか言うかもしれないが、公務員の守秘義務違反は明らかに犯罪だろう。普段、特に大マスコミは偉そうに、政治家や官僚の行動をチェックしているが、自らに情報を入れてくれるのであれば糾弾しないというダブルスタンダードはいかがなものか?
各社が一斉に容疑者を悪者に仕立て上げてしまうような情報の垂れ流しを記者子はいつも疑問に思う。捜査機関が、自らを有利にするような情報を流すことがないとも限らない。容疑者は密室の中で何も反論することができないのだから。「疑わしきは罰せず」と公民で習っただろう。袴田巌さん(1966年の「袴田事件」の犯人として死刑判決を受けながら再審が認められ2014年3月に釈放)のように冤罪が作り上げられないとも限らない。
特に、人権にも関わるような報道に関しては慎重にするべきだ。松本サリン事件の河野義行さん(第一発見者で、犯人扱いされた)のように、被害者が犯人だと報道される自体を避けるためにも。
日本では特に情報の受け手側はマスコミの報道を素直に信じる傾向にある。
弊害は記者クラブ制度にある
記者子が独断で考えるに、この問題点は記者クラブ制度という、日本特有の悪癖がある。役所や官邸、地方自治体などには記者クラブがあり、記者会見にはクラブの記者でないと入れない(今は随分と開かれているが)ということも多々有り、取材力に優れたフリーのジャーナリストなどに取材機会が与えられないことも弊害だ。
先進各国に記者クラブ制などない。親睦を図るためのクラブはあるが、会員でないと入れないなどの閉鎖的なものではない。お隣の国、韓国でさえ、その弊害から10年ほど前に記者クラブ制度は解体された。
権力と対峙するため、チェックするためということならわかるが、単なる一時情報提供者の代弁者であるなら、ネットで情報を取ればいいだけだ。役所からの情報をダダ漏れで伝えるだけでなく、各報道機関はその役割をもう一度考えてもらいたいし、矜持を持ってもらいたいものだ。