ソフトバンクグループは投資会社 AI企業に注力

2021.2.15

企業

0コメント
ソフトバンクグループは投資会社 AI企業に注力

ソフトバンクグループは2月8日、2021年第3四半期の決算説明会を行った。それによると売上高は6.1%増の4兆1380億円、純利益は371.7%増の3兆967億円と増収増益だった。同グループの孫正義会長兼社長は「ソフトバンクグループは投資会社」であるということをはっきり説明し、その中でもAIを中心とした投資で行っていくと宣言した。

投資は収穫期に、年間10~20社の金の卵

ソフトバンクグループ(SBG)の好調な業績の要因は、日本を含めた世界的に株式市況が好調であることも寄与している。そのため、現在は強気相場だが調整局面に入ったときにどうやってカバーしてくのかという課題がある。

SBGの投資会社としての肝となるソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)についてみていくと、2017年に立ち上げたSVF1は92社、2019年7月に計画が発表されたSVF2は39社に投資しているほか、2019年3月に立ち上げたラテンアメリカ・ファンドは33社に投資。合計で164社に投資を行っている。

SVF1は、2020年12月末までに845億ドルを投資し1048億兆ドルを稼ぎだし、そのリターンは203億ドルに及ぶ。その中で上場を果たしたアメリカのオンラインフードデリバリーのDoorDashには6億8000万ドルを投資、同社は89億8900万ドルと13.2倍のリターンを稼ぎ出した。ライドシェアなどを手掛けるUberは76億6600万ドルが113億3400万ドルと1.5倍になった。

一方、中国の金融機関向けプラットフォームOneConnectとネット保険会社ZhongAnのみマイナスで、合わせて1億6800万ドルの損失を計上しているが、全体的に見れば微々たる数字といえるだろう。

SVF2は多くが2020年9月以降に投資したものばかりであり、これからという形だ。ラテンアメリカは23億ドルで開始し2020年12月現在で30億ドルにまで増えたという。

孫会長は、上場した企業が2020年に11社に達したことから「加速度的に卵の数が増え、やっと収穫期に入り始めた」と。投資においては「出資後に上場したり、100億円以上で売却したりしたスタートアップ企業」を“金の卵”と定義し、孫会長はそれを偶然ではなく「金の卵を計画的に、仕組みを持って生んでいく」のが同グループだと語る。

SBGはベンチャー企業がある程度成長した「レイトステージ」の段階で投資をすることが多い。アーリーステージから将来を見据えて投資をし、何千倍というリターンは来ないものの、規模感を持って行うことから、失敗するリスクは少なく、それなりのリターンとして戻ってくる。「今後は年間10~20社の金の卵が出てもおかしくない」とした。

投資はAIに集中する

2020年11月の「Softbank World 2020」で、米NVIDIAのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)と対談した孫会長。SBGが保有する英Arm全株式をNVIDAに売却し、逆にSBGはNVIDIA株を取得する。いずれにしろNVIDIAを収めることはAI時代をリードするコンピューティング企業になるとした。

特にSVF2は、AIと幼児向けオンラインプラットホームのVIP Think、AIとフィットネスのKeep、AIを駆使するSEER、AIと遺伝子治療を行うTessera Therapeuticsなど多くのAI企業に投資する。しかし「今後のAI技術革新をけん引するのは中国」と発言したように投資先は中国企業に偏りぎみだ。

アリババの子会社アントグループの上場延期に追い込まれ、アリババの創業者ジャック・マー氏はしばらくの間、姿を現さなかった。2020年10月に上海で共産党を非難したことが原因といわれている。会見では、中国政府がIT企業への規制を強めているのではないかという質問が出たが、孫会長は「これまで中国でネット企業は自由にやりたい放題だった。しかし、独占禁止法や金融規制が必要な段階に入った。健全な成長には必要で、欧米と比べても常識的な範囲内。中国のAIの発展には長期的にはプラスになると考えている」と回答。独禁法について話すことで政治リスクへの回答を避けたが、リスクヘッジの観点から見れば世界にもう少し分散するべきだろう。

また、SBGで少々疑問に感じるのがGAFAなどを中心とした上場株を運用するため立ち上げた運用子会社「SB Northstar」だ。「現在、テストしている最中で、2020年12月末の決算の時点で1000億円程度の赤字だったが、今回の決算説明会時点では1000億円弱の黒字」とした。投資先が見つかるまでの余剰資金の運用目的としているが、コールオプションを多く使っているようで(決算書にもコールオプションの単語が結構飛び交う)投機的色彩が強く、SVFとはあまりにも反対の印象を受ける。

SVFの投資先をヤフーやソフトバンクなどと提携

また、SVFで投資した企業の中から、日本に合っているものを、通信事業のソフトバンクやヤフー、LINEを利用して日本に引っ張ってくる考えを示した。4月にソフトバンクの社長に就任予定の宮川潤一氏と、デジタルプラットフォーマー戦略を拡大していくため積極的に行うとした。こちらは見極めれば、効果的なシナジーを生んで便利になり、よりよい生活が待っている可能性がある。