キャンプブームで好調、コロナ禍でも成長するアウトドア企業の今後

2021.3.23

経済

0コメント
キャンプブームで好調、コロナ禍でも成長するアウトドア企業の今後

コロナ禍で従来通りの外出ができないなか、「巣ごもり需要」に牽引されたゲーム業界は活況となった。今期成績をみると任天堂は第3四半期累計の売上高が前年比37%のプラスとなり、ソニーも「ゲーム&ネットワークサービス」セグメントでは3Q累計で29%のプラスとなっている。一方、感染リスクの低いレジャーとしてアウトドアが注目を浴び、好調を維持する企業もある。そもそもアウトドア市場は国内で数少ない成長分野の一つであり、近年では初心者向けのキャンプ用品も販売されていることからハードルは低くなっている。海外に目を向けるとアメリカではアウトドア版Airbnbともいわれるサービスが展開されており、世界中で普及するかもしれない。今後の成長が期待されるアウトドア企業を見ていこう。

海外展開も期待されるスノーピーク

Snow Peak(スノーピーク)はキャンプ・アウトドア用品の生産販売を行っている企業だ。自社ブランドとして提供しており、アウトドア好きには高品質・高価格帯のブランドとして認識されている。

シックなデザインが特徴で、テントは黄色や緑といった原色系ではなく茶色などの間色系が多い。ステンレス製のマグカップは3000~4000円台と高めだ。販売は卸売のほか、自社ECや直営店を通じて行われている。直営店は国内に33店舗、内装はブランドのセレクトショップのように洗練され、ホームセンターのように同じ製品が大量に並べられているのではなく、店内は広々としている。

初心者向けのエントリーモデルからハイエンドまで幅広いユーザーに応える品揃え。

新潟県三条市の本社には「HEADQUARTERS」と呼ばれる広大なキャンプフィールドがあり、「雪峰祭」などのイベントも主催。2017年からはグランピング施設の監修などを行う事業も手掛けている。

以前の社名はヤマコウだったが1996年に変更し現在に至る。特に2000年代での成長は目まぐるしく、2014年度にマザーズ上場と売上高50億円突破を果たした後、2018年には100億円を超え、2020年度は167.6億円となった。20年度はコロナ禍でも成長を遂げ、売上高は前年比で17.6%増、営業利益は61.6%増(14.9億円)、そして当期純利益は146.4%増(10.5億円)となっている。

国内での感染拡大と重なる第2四半期(2020年1~6月)こそ売上高は-4.2%、純利益は-39.4%と甚大な影響を受けたが、通期で大幅増となっていることから後半での巻き返しが激しかったことがわかるだろう。前半は店舗やキャンプ場の休業が減収要因となったが、後半は感染リスクの低い遊びとしてキャンプが注目を浴び、売上が伸びたようだ。「家キャン」「おうちキャンプ」なる言葉も広まり、グッズを購入し自宅でキャンプを楽しむ消費者も見られる。アウトドアを積極的に紹介するメディアの動きも影響した可能性がある、と同社は推測している。

今後の展開は同社が公表する中期経営計画(2021-2023年)が参考になる。国内では新規店舗の出店を続けつつ、エントリー商材の導入で顧客の開拓に努めるとしている。海外でも出店を進め、売上高に対する海外比率を30%まで伸ばす予定だ。現状では韓国、台湾、アメリカ、イギリス合わせて8店舗に過ぎないが、withコロナではアウトドアの活況が続くと見られるため、市場環境は良いといえるだろう。こうした取り組みを通じて23年度は売上高290億円を目標としており、今後の活躍が期待される。

圧倒的な品揃えのWILD-1

WIDL-1 千葉・幕張店

数多くの中から自分に合ったものを探したいならアウトドア用品専門店のWILD-1がおすすめだ。アウトドアのホームセンターと例えられるような店舗づくりになっており、店内は広々としている。クルマで行けばキャンプに必要な用品を一日で揃えられるだろう。

さまざまなブランドの商品が販売されており、前述のスノーピークも一部店舗でコーナーを構えている。また、キャンプ用品だけでなくフィッシング・カヌー関連などアウトドア全般を扱っており、行くだけでも楽しい。一部地域の人には残念だが店舗は関東を中心とした東日本に集中しており、西日本は名古屋に1店舗、京都・福岡にそれぞれ1店舗となっている。ちなみにECも展開している。

多彩なアウトドアブランドが並ぶWILD-1の店内。

さて、WILD-1を運営する株式会社カンセキだが、ほかにも異なる店舗を展開している。同社の主な事業は「ホームセンターカンセキ」を展開するホームセンター事業、WILD-1事業、そして専門店事業の3つであり、専門店事業は「業務スーパー」や「OFF HOUSE」などのFC店を展開している。

最新の成績だが、コロナ禍で伸びたアウトドア・レジャー需要が追い風となって2021年2月期の業績は伸びているようだ。WILD-1事業だけに限定すると第1四半期(20年3-5月)はゴールデンウィーク中に全店休業したことで売上高は20.1億円(前年比-23.3%)、セグメント利益は1.1億円(同-64.6)の大幅減少となった。しかし、その後は顧客が戻り、ECの好調も相まって第3四半期累計の売上高は102.0億円(22.8%増)、セグメント利益は16.4億円(42.5%増)と当初の計画を超えている。

キャンプ関連だけでなくフィッシング用品も好調なようだ。ちなみに会社全体ではDIY需要によってホームセンター事業が好調となり、3Q累計の売上高は309.6億円(15.2%増)、営業利益24.6億円(81.5%増)、最終利益は14.7億円(84.8%増)の大幅な増益を記録した。

WILD-1の今後についてだが、企業から公式な計画が公開されていないため筆者の予測にとどまる。だが、アウトドア専門の大規模店舗は競合が少なく、成績次第では西日本への展開も進むだろう。大阪・兵庫・広島など進出の余地は大きい。アウトドア市場が追い風のなか、ホームセンター事業で培った店舗運営技術を生かして規模を拡大するのではないだろうか。

アウトドア版Airbnb、「Hipcamp」

海外でも、新型コロナウイルス感染症の拡大による旅行自粛でAirbnbの業績は悪化しているが、“アウトドア版Airbnb”といわれるHipcampは注目を浴びている。全米で展開するHipcampのビジネスモデルはAirbnbと同じであり、ホストと宿泊者を仲介し手数料を得る仕組みだ。

だが対象となるのは単なる部屋ではなく、キャンプ場や空き地、私有の山などである。もちろんAirbnb同様にスマホ一つで予約でき、宿泊者はトイレやシャワーの有無、キャンプ用品の有無を条件に45万弱のキャンプ場の中から絞り込むことができる。

釣り具と川、テントに調理器具まで貸してくれるホストを見つけられれば、クルマ一つでBBQを楽しむことができるだろう。ログハウスに泊まれる”半キャンプ場”もあるほか、中には乗馬や家畜のエサやり、クライミングなどの体験型キャンプを提供してくれるところもある。最近では若い世代の間でグランピングが流行り、豪華なテントを提供するホストが増えているようだ。

トラブル対策も万全で、Hipcampは一定の基準を設けている。ホスト側は土地さえあれば貸し出せるわけではない。キャンピングカー向けの空き地であれば何も用意は要らないが、キャンプ場が20エーカー以下で設備が不十分であればトイレを用意しなければならず、環境への影響を最小限にすることが求められる。また、仮にマナーの悪い宿泊客が居れば、ホストの評価次第ではアカウント停止措置がとられることもある。ちなみに宿泊客のケガや施設の損害については1泊あたり最大で1万ドルの保険が適応される。

2013年に設立されて以降、Hipcampは目新しいサービスとして注目され、ベンチャーキャピタルからの投資を受けて成長してきた。今では全米をカバーしている。2020年はコロナの感染拡大によってキャンセルが相次ぎ4月に職員を一時解雇したが、その後の回復は著しいようだ。ホストによっては前年以上に宿泊客が来ているところもあり、前年の2倍も売り上げるホストもいる。ステイホームにうんざりした人がキャンピングカーで予約する例が多いそうだ。今後は経済活動の回復と共に利用者はますます伸びていくだろう。日本でも同様のサービスが展開されれば使ってみたいものだ。