世界のCO2排出量計4割、中国とアメリカの協調は可能か

2021.4.26

社会

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脱酸素を進める中国、アメリカと協調は可能か?

地球温暖化の脅威が世界で議論され長年が経つが、それに対する国際社会の取り組みは全体としてうまくいっているとは言い難い。筆者も大学の講義で「地球温暖化と安全保障」を毎年取り上げているが、気候変動によって移住を余儀なくされる気候難民の増加や、温暖化によるテロや紛争の高まりなど、うれしくない話が圧倒的である。地球温暖化を止めるには何が必要なのだろうか。その答えは決まっていて、要は国際社会、特に世界全体のCO2の4割以上を排出するアメリカと中国が協力し、地球温暖化対策を主導していくしか方法はない。では、実際、アメリカと中国の協力はどこまで期待できるのだろうか。

中国が脱炭素を進める背景

中国の習近平国家主席は2020年9月、国連総会でのビデオ演説で「2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」と宣言し、脱炭素を本格化させていく意思を表明している。習政権は脱炭素を国家目標に掲げ、今後40年間で1000兆円規模を脱炭素に投資し、2021年6月にはCO2排出量の専門取引所を上海に創設する予定である。脱炭素は世界的な潮流だが、大規模な公害で知られる中国が積極的に進める背景には何があるのだろうか。

その一つに、これは当然の理由ともいえるが、国境を越えた問題としての地球温暖化である。地球温暖化は世界的な緊急課題であり、一つの国だけが頑張っても全く意味を持たない。習政権は中華人民共和国建国100年にあたる2049年までに世界をリードする国になることを目指しているが、それを実現させるために地球温暖化は避けては通れない課題なのだ。地球温暖化の影響によって、習政権が目指す中華民族の復興が難しくなる恐れも排除はできない。

また、現在、中国はアメリカを抜いて世界最大のCO2排出国という不名誉な立場にある。要は、政治的にはアメリカから非難されやすい立場にあり、他の国々も“世界最大のCO2排出国”には悪いイメージを持つ。よって、習政権は脱炭素政策を強化し、他国からの批判を払拭していきたい狙いがあることに疑いの余地はない。

さらに、習政権には脱炭素技術など最先端・ハイテク分野で中国が世界をリードし、それをもとにアジアやアフリカなどの途上国へ次々に支援を行い、中国の影響力を維持・拡大したい狙いがある。脱炭素技術はどの国にも需要が予想されることから、中国はこれまでの一帯一路構想とも連動させながら、“脱炭素先進国”として対外的影響力を維持・拡大していきたいことだろう。

地球温暖化をめぐっては、長年、先進国と途上国の間では考え方で大きな隔たりがある。先進国は、「地球温暖化が人間の日常生活の脅威になっており、防止策を進めていく」との立場だが、途上国の中には、「これまでの地球温暖化はCO2をジャブジャブ排出してきた先進国によってもたらされたのであり、温暖化対策は先進国がまずやるべきだ」「われわれにも経済発展する権利があり、その前に温暖化対策を徹底しろとの先進国の言い分には納得できない」との不満を持つ国々も多い。よって、経済発展や都市化を阻まない脱炭素などの最新技術は途上国にとって理想的な手段であり、中国は“脱炭素先進国”として安価な値段でそれを途上国に提供していきたいことだろう。これは、いま中国が進めるワクチン外交とも仕組みは似ている。

米中協調は可能か

では、上述のような習政権の脱炭素政策とその背景をもとに、実際のところ、アメリカのバイデン政権との協調は可能なのだろうか。バイデン政権は中国に対抗していく姿勢を鮮明にしているが、協調できる部分では協調していく姿勢も排除していない。その最もたる部分が地球温暖化となる。だが、現在の米中対立の動向を注視していると、地球温暖化という協調すべき部分すら対立に覆われてきている感が否めない。

習政権は脱炭素へ舵を切っているが、これまでのところ、それは他国との協調というより自国主導で進められており、アメリカや欧州など先進国との競争になっている。新型コロナウイルスの感染拡大におけるワクチン開発と提供を見ても、それは正に競争である。相互に情報を交換するとか、補完的にワクチンを提供していくなどは全くなく、脱炭素の部分でも協調どころではなく、競争が激化していく展開が繰り広げられる可能性が高い。

バイデン政権になり、米中間では人権や安全保障、経済・貿易をめぐっての対立は予想されてきたが、地球温暖化に関してまでも対立が優勢になるのであれば、米中対立は極めて深刻化しているといえるだろう。