2021都議選が実質スタート、東京五輪開催の是非など争点

2021.6.17

政治

0コメント
2021都議選が実質スタート、東京五輪開催の是非など争点

写真:つのだよしお/アフロ

通常国会が6月16日に閉幕し、与野党は“選挙モード”に突入した。7月に都議選が行われ、その後の9月には衆院総選挙が行われる見通し。前哨戦となる都議選は前回、小池百合子都知事が“小池旋風”を巻き起こし、知事率いる地域政党「都民ファーストの会」が大勝したが、今回はそこまでのブームは見込みにくい。前回惨敗を喫した東京都議会自民党は第一会派復帰を虎視眈々と狙っており、各選挙区で激しい選挙戦が繰り広げられそうだ。都議選は6月25日告示、7月4日投票。

都民ファーストは政権への挑発も

「ふるくておそい頼れない国を はやくてあたらしい頼れる東京が動かす」。小池百合子都知事が特別顧問を務める都民ファーストの会は6月15日に公表した都議選の公約に、菅政権への挑発ともとれる刺激的なキャッチフレーズを掲げた。

都議会の定数は127で、最大会派は都民ファーストの会で46議席。国政与党の自民党が25、公明党が23議席で続き、国政野党の共産党が18、立憲民主党が7議席などとなっている。

各党が掲げている公約で最も注目は直後に控える東京オリンピック・パラリンピックについてだ。都民ファーストの会は、公約に「国が強行開催するならば最低でも無観客を強く求める」と明記。共産党は「中止」、立憲民主党は「延期か中止」を掲げ、開催を推進する立場の自民党と公明党は公約で開催の是非には触れなかった。

五輪開催への影響は?

新型コロナウイルス感染が続いているなかでの五輪開催には国内でも否定的な意見が根強いが、菅義偉首相は6/11~6/13にイギリスで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)で開催への決意を改めて表明。各国も開催を支持し、6月15日には国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ調整委員長が来日するなど政府も関係機関も開催に向けて突き進んでいる。ここまでくると中止や延期、という選択肢はなさそうだ。

観客数の上限についても政府や関係機関が6月中に判断する方針で、7月4日に投票される都議選の結果が反映されるわけではない。それでも開催都市の住民である都民の意思が選挙で示されることには意義があるし、選挙期間中に何度か行われる情勢調査の内容次第では政府や関係機関の判断に影響を与える可能性もある。

狙うは主導権奪還、自公あわせて80人超を擁立

東京五輪以外では、都民ファーストの会は公約にコロナ禍での生活支援として「世帯年収に応じた年間最大15万円の給付」や学生の貧困対策として「携帯電話料金の実質無償化(月額3000円の補助)」、子育ての家庭負担軽減策として「出産への10万円相当の支援」などを盛り込んだ。女性知事が率いる政党だけに、女性活躍や子育て支援に関する政策が目立つ。

都民ファーストの現有議席は46だが、同水準の47人を擁立して第一会派死守を目指す。

一方の自民党は「命を守る。東京を動かす。」がキャッチフレーズで、新型コロナワクチン接種の加速化を冒頭に掲げたほか、災害対策や子育て支援、中小企業対策などを総花的に盛り込んだ。特徴的なのは新型コロナ対応として「減税」を盛り込んだこと。感染が収束するまで個人都民税を20%、事業所税を50%減税するとした。自民党が「減税」に言及するのは珍しいが、都政では「野党」の立場であることから有権者受けの良い政策を盛り込んだようだ。

公明党は2016年の小池知事初当選時から知事に協力姿勢を見せており、前回都議選前には自公連携を解消し、都民ファーストと選挙協力して23人の候補者全員を当選させた。国政と都政でねじれ現象が生じていたが、今回は「国政との連動が必要」として自公連携を復活。自民とともに都民ファーストに挑むこととした。公約には「第2子の保育料無償化」や「高校3年生までの医療費無償化」など8つの政策目標を掲げた。

自民党の現有議席は25だが、2倍以上となる60人の立候補を予定。都民ファーストを上回る第一会派を狙い、23人を擁立予定の公明党とともに都議会の主導権奪還を目指す。

五輪「中止」の共産党、立憲は33人を擁立

共産党は公約に「コロナ危機をのりこえ、安心と希望の政治を東京から」とのキャッチフレーズを掲げ、主要政党で唯一東京五輪の「中止」を明記。新型コロナで休業を余儀なくされている事業者への補償の拡充やPCR検査の拡大を盛り込んだ。現有議席は19だが、33人を擁立して議席の上積みを目指す。

国政で野党第一党の立憲民主党は前回2017年の都議選後に結党しており、現有議席は7人にとどまる。今回の都議選では「コロナ対策にヒト・モノ・カネの集中を。」とのキャッチフレーズを掲げ、低所得者支援や貧困・格差解消、雇用確保などを手厚く盛り込んだ。現有議席を大幅に上回る33人(推薦含む)を擁立し、都民ファーストと自公の間で埋もれている現状を打破、存在感の発揮を目指す。共産党と立憲民主党選挙区のすみわけを図り、共倒れを防ぐ。

このほか、日本維新の会(現有議席1)や国民民主党(同0)、れいわ新撰組(同0)も候補者を立てる予定だ。

9月の衆院選に向けて注目集まる

永田町では「小池知事が『東京五輪の中止』を公約に掲げて都議選を戦う」との見立てが根強かったが、ここにきて「延期は難しい」と明言しており、その可能性は消えたもよう。となると都民ファーストの会と自民党とのガチンコ勝負になるが、小池旋風の去った都民ファーストも、国政で政権支持率が低迷している自民党も決め手に欠ける。

都民ファーストの会が第一会派を維持して小池知事が引き続き円滑に都政を率いるか、それとも自公が主導権を奪取して知事の政策運営に影響力を強めるか。直後には衆院選を控えるだけに、都民以外からも都議選の行方に注目が集まりそうだ。