自民党総裁選投票締め切り直前、一目でわかる4候補政策比較

2021.9.27

政治

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自民党総裁選投票締め切り直前、一目でわかる4候補政策比較

自民党総裁選の政策論争が大詰めを迎えている。新型コロナウイルス対策や経済政策、原発政策、外交・安全保障などをめぐって4人の候補の違いも浮き彫りになってきた。党員・党友による投票の締め切りは9月28日(銀座郵便局必着)で、29日に国会議員票とともに開票される。1回目の投票は半数を占める党員・党友票の影響も大きい。同日中には日本の新たなトップが決まる。

新型コロナ対策と景気・雇用対策に注力

産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が9月18、19両日に行った世論調査によると、次期首相に最も期待する政策(複数回答)のトップは59.2%で新型コロナ対策。続いて景気や雇用40.2%、年金・医療・介護27.8%、子育て支援・教育19.3%、外交・安全保障18.1%、行政改革・財政再建15.2%、環境・エネルギー政策7.0%となった。コロナ禍で緊急事態条項創設の議論が浮上している憲法改正は5.8%にとどまった。

コロナ対策

国民の関心が最も高いコロナ対策については、各候補ともさまざまなアイデアを競っている。河野太郎行政改革担当相は菅内閣でワクチン担当相を兼務していることもあり、3回目接種の準備を進める考えを強調。岸田文雄前政調会長はコロナのような公衆衛生上の危機が発生した場合の司令塔となる「健康危機管理庁(仮称)」の設置を提起し、高市早苗前総務相は治療薬の国産体制を築くと表明している。野田聖子幹事長代行は自宅療養をやめ、軽症患者の重症化を防ぐ設備の整備を主張する。

規模や対象は異なるが、各候補ともコロナ禍における経済対策としての給付金支給に意欲を示すほか、河野氏や高市氏は感染が急拡大した際に海外のように強制的に都市封鎖するための「ロックダウン法制」の整備に意欲を示している。

経済政策

経済政策については安倍、菅両政権の“アベノミクス”と距離感が焦点。高市氏は「サナエノミクス」と称してアベノミクスを維持、強化するとして、財政再建目標を凍結して公共工事に10年間で100兆円を投じると表明。岸田氏は逆に配分重視に転換して「令和版所得倍増計画」を実現するとし、野田氏も大企業の利益増加が中小企業や家計に波及するトリクルダウンからの転換を目指すとしている。河野氏は「デジタル」や「グリーン」を軸とした成長戦略を描くほか、雇用重視の姿勢を強調している。

社会保障

社会保障分野における最大の焦点は年金制度改革だ。河野氏が消費税を財源とした最低保障年金を提唱したのに対し、河野氏以外の3氏は財源などの実現性を疑問視。野田氏は「不安をあおっている」と批判し、岸田氏と高市氏は厚生年金の適用範囲拡大で対応すべきだと訴えている。

子育て政策

社会保障の一部である子育てや教育支援についても国民の関心は強い。自身が障害を持つ子どもの子育て中である野田氏は「こどもまんなか庁」を創設して少子化の克服と女性活躍を推進すべきだと主張。河野、岸田、高市3氏は子育て世代や多子世帯への支援充実などを訴えている。子育て支援については4氏とも積極的な姿勢を見せていて違いは出にくい。

外交・安全保障

主張の差が大きいのが外交・安全保障だ。保守的な政策で知られる安倍前首相の路線を継承する高市氏は、防衛費を現在のGDP1%程度から、2%程度の10兆円規模にまで大幅に増やすべきだと主張。電磁波や衛星を活用して敵基地を迅速に無力化するための法整備を進める考えも示し、岸田氏も敵基地攻撃能力の保有を「有力な選択肢」としている。一方で河野氏は情報収集能力の強化や日米同盟による抑止を重視し、野田氏は対話による関係構築を優先すべきだと訴えている。

政治改革

今回の総裁選が始まる前に、最初の論点となったのが政治改革だ。当時、出馬に意欲を示していた菅首相に対抗するため、真っ先に出馬表明した岸田氏が自民党役員任期を原則3年以内に制限すると提起。実質的な“二階幹事長批判”に同調が広がったことから菅首相も慌てて二階氏の交代を発表し、これによって政権のバランスが崩れて首相の退陣につながった。

岸田氏は政府・自民党の要職への若手の積極登用を唱えるほか、衆議院の比例代表73歳定年制の堅持を強調。河野、野田両氏も定年制に賛成するが、高市氏は反対の立場で「幅広い年代の活躍」を主張している。

河野氏は総裁選の決選投票にオンラインを通じて党員・党友が参加できる制度の導入を提唱。野田氏は衆院選における小選挙区と比例代表の重複立候補、いわゆる「比例復活」の廃止により政治家に緊張感を持たせるべきだと主張するほか、女性候補を大幅に増やす考えを示している。

環境・エネルギー

環境・エネルギー分野では「脱原発」をかねて主張してきた河野氏への注目度が高い。今回の総裁選にあたっては「安全が確認された原発は再稼働するのが現実的」としたが、原発の新増設は認めない考えで、核燃料サイクルも中止すべきだと訴えている。岸田氏と野田氏は再生可能エネルギーを拡大しつつも、当面は原発を維持する考えを表明。高市氏は放射性廃棄物を出さない小型核融合炉の開発を促進すべきだとの考えを示している。

政局だけでなく政策への注目も

総裁選直後に衆院選があるとはいえ、自民党総裁に就任することは総理大臣に就任することと同じ意味を持つ。菅政権は1年の短命で終わったが、それでもデジタル庁の創設や携帯電話料金の値下げなど、菅首相が総裁選で掲げた政策は次々と実現した。

今回の総裁選で4候補のいずれが当選したとしても、政策実現に向けて突き進むことは間違いない。投票権を持つ国会議員も党員・党友も、本気で向き合わなければならない。