プラスチックごみ削減に加速 企業&自治体の取り組み
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プラスチックごみ削減に加速 企業&自治体の取り組み

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プラスチックが開発されてほぼ100年、軽くて丈夫、安価に作れることから大量生産・大量消費・大量廃棄が常態化し、プラごみが世界中で大きな社会問題になっています。海に流れたプラごみは、さながらスープ状態(これをプラスチックスープという)、やがてマイクロプラスチックとなって生態系にまで悪影響を及ぼします。わが国は、一人当たりの使い捨てプラごみの発生量がアメリカに次いで2番目に多い「プラごみ大国」です。そこで、プラごみの削減方策を、2022年4月から施行される「プラスチック資源循環促進法」を念頭に考えてみましょう。

“空気のようなプラ”を使わない生活は可能か?

プラスチック(プラ)とは、石油から得られる一つの化合物[単量体、モノマー(Monomer)、monoは分子が一つという意味]を人工的にいくつも繰り返しつなげた物質[高分子重合体、ポリマー(Polymer)、polyは分子が多数という意味]を指し、高分子合成樹脂とも呼ばれる。

セルロース、デンプン、綿、たんぱく質などは天然の高分子化合物で、これらは自然界で分解されごみにはなりません。しかし、人工物のプラは自然界ではほとんど分解されず、これがごみになります。

化学技術の進歩により、人類は多くのプラを作り使用してきました。このプラが日常生活の中で幅広く使われているのは周知のとおりです。少なくとも、50年前にはこれほどの使い捨て食品容器や包装材(シングルユースやワンウエイ商品)は、ほとんど見られませんでした。

2020年7月1日からレジ袋が有料化され1年強が経過しました。コンビニでのレジ袋辞退率は75%と有料化前の25%の3倍にもなっていますので、プラごみの削減につながっているように見えます。しかし、わが国で年間排出されるプラごみは約900万トン、そのうちレジ袋はわずか2~3%、環境負荷を減らす効果としては限定的で、その他のプラの削減が重要となります。

環境対策が叫ばれて久しいですが、一般的にはプラごみ問題は関心があるようで関心がありません。理由は空気のように当たり前に使ってしまっているからです。

プラごみをなくすには、プラの製造・使用を禁止することですが、ここまで便利に使ってきてしまったプラの使用を止めることは不可能でしょう。そもそもプラの製造は石油化学工業と密接に関係、多くの製造会社や関連会社があり、製造・使用禁止となれば経済的な影響は計り知れません。プラの無い生活や社会は今や考えられないのです。となればプラと共存しながら、その削減方法を考えざるを得ません。そのためには、言い古された3R(Reduce・Reuse・Recycle)の推進しか方法はないでしょう。

プラスチック資源循環促進法とは

背景がわかったところで、2022年4月に施行される「プラスチック資源循環促進法」(プラ新法)とは何か考えてみましょう。プラごみ削減の世界的動向に刺激を受け、わが国でも2021年6月にプラ新法が成立。2030年までにワンウェイプラを累積25%削減、プラ製容器包装(後述)の60%をリユース・リサイクル、35年までに使用済みプラを100%リユース・リサイクルし有効利用するなど、その中身はかなり意欲的です。

6月23日に開かれた環境省経済産業省合同の審議会で、プラ新法に基づき、企業や自治体に求めるプラごみ対策案が示されました。

  1. 製造過程で出る端材の発生を抑え、流通で使う包装材を簡素化する。
  2. 年間250トン以上のプラごみを排出した事業者に、翌年度、排出量をどの程度減らすか、リサイクルの推進などについて目標を作成するよう義務づける。
  3. 目標の達成状況はインターネット上などで公表、取り組みが著しく不十分な場合は国が行政指導を行う。
  4. 削減対象とする使い捨てプラ製品は12品目、コンビニ、スーパー、ファストフード店で配られるスプーンやストロー、マドラー、ホテルが提供するヘアブラシや歯ブラシ、クリーニング店のハンガーなど。食品を販売する百貨店や配達飲食サービスなどの事業者にも削減を求める。
  5. 上記製品の有料化、無料提供の受け取り意思の確認、提供を辞退した人へのポイント還元、回収再利用、プラを薄くして使用量を削減など事業者に要請。
  6. コンビニやスーパーなど使用量が年5トン以上の事業者には削減を義務化し、取り組みが不十分な場合は社名を公表。命令に従わない場合は50万円以下の罰金を科す。

以上が、プラ新法の概要の一部です。

コンビニでの回収を促進

プラ新法を先取りして、プラごみ削減に向けて、企業・自治体の動きが加速していますので紹介しましょう。

我が国は、プラごみの分別・回収が進んでいるとはいえ、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルといった再生樹脂などへのリサイクル率は25%です。その他は、火力発電、RPF(廃プラスチック類を主原料とした高品位の固形燃料)、セメント燃料などの熱回収率が57%、焼却・埋め立てが18%と、結局7割程度が焼却(二酸化炭素が発生)されています。

使用済みプラの回収・再利用とリサイクルが一番進んでいるのは、ペットボトルのPET(Polyethylene Terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)です。2019年のペットボトルの回収率は93.0%、リサイクル率は85.8%と世界最高水準。

サントリーは2019年に「プラスチック基本方針」を策定し、「2030年までにサントリーグループが使用するペットボトルの原料をリサイクル素材、または植物由来素材のみにし、化石由来原料の新規使用をゼロにする」という目標を掲げました。

しかし、このペットボトル回収・再利用・リサイクルには大きな問題が潜んでいます。日本のペットボトルは仕様が統一されており、リサイクル工場で何度もボトルに再生できるボトル・トゥー・ボトルに向いています。ただ、街中の分別回収箱にはごみを捨てる人もいて、不純物が再生の妨げになっています。

こうしたなか問題解決のために登場したのが、トムラ等が手がける自動回収機です。ラベルが付いたままのボトルや缶を機械がはじき、再利用に適した状態のボトルだけを集める。一方、利用者は回収機に入れたボトルの本数に応じてポイントを受け取ることができます。

セブン・イレブンは関東を中心に730台を店頭に設置、最近は川崎市と連携して増設を急いでいます。西日本にも広げ、2022年2月末までに追加で約800台増やす計画。工場で再生した樹脂は自社企画飲料のボトルに使います。現状では回収ボトルを資源として活用するには自治体ごとに相談する必要がありますが、プラ新法では一定の条件を満たせば自治体ごとの相談が不要になり、22年度以降はさらにリサイクルに力を注ぐ方針のようです。

都内のセブン・イレブンに設置された自動回収機。
操作画面

キリンホールディングスが横浜市内のローソンに設置した回収機は、使用済みボトルを逆さにして飲み口から差し込み、飲み残しの混入を防ぐようになっています。回収したボトルはローソンから購入し、自社製品のボトルに再生。横浜での実験結果を見て回収機の仕様を調整、全国のローソンに設置する計画です。

大手を中心とする飲料7社は、2027~30年までにペットボトル原料の再生樹脂比率を50~100%に高める計画とのこと。2020年の業界平均値は、12.5%ですから、再生樹脂の確保が課題です。

文具やオフィス家具メーカーのプラスは、素材の70%をプラスチックから紙に置き換えたクリアーホルダーを開発、一部の製品の包装をプラから紙に切り替えています。

世界的なおもちゃメーカーのマテルは、海洋プラごみを再生した素材を90%使用した人形を初めて作り、2021年8月中旬から日本でも販売を開始。商品の包装にもプラではなく紙が使われ、マテルは、2030年までに、すべての商品と包装に再生素材などを使用するとのことです。

一方、ブロックのおもちゃで知られるデンマークのメーカーのレゴグループは2021年6月、ペットボトルを再利用したブロックの試作品を公開。1リットルのペットボトル1本から平均で10個分のブロックの原材料が確保できるようです。

また、ローソンはこの9月から東京、埼玉、千葉の約30店舗で、鍋などの容器を持参しておでんを購入すると5個ごとに39円割引になる「おでん鍋割セール」を開始、10月から全国展開を予定しています。環境破壊につながるプラごみを削減する“脱プラ”の動きがコンビニおでんにまで影響を及ぼしています。

プラごみ削減に消費者ができること

増えすぎたプラをどう削減すか、人類は大きな課題を背負っています。削減を実現するためには、政治・法律による国の規制、自治体の行政指導、循環型経済(サーキュラーエコノミー)への転換、企業・メーカーの取り組み改革などが必要です。また、並行して消費者の意識改革・モラル向上が求められ、私たちは今、暮らしの在り方を見つめ直すときにきています。以下は、消費者ができる事柄です。

  1. マイバック、マイボトル、マイ箸を持参する。
  2. スーパーなどで食品を小分けするポリ袋の過剰使用を減らす。
  3. 詰替用品を利用し、プラボトルの廃棄を減らす。
  4. 惣菜や弁当のトレーなどをすぐに捨てないで、繰り返しリユースする。
  5. 水は水道水を飲用。緑茶、コーヒー、紅茶は自宅で作りマイボトルに。スポーツ飲料は粉末を利用するなどペットボトルの利用を減らす。
  6. 食品保存は蓋付容器を利用し、ラップの使用を減らす。
  7. 買い物時は簡易包装を頼む。
  8. ごみは分別し、分別の精度向上と異物混入防止に努める。

最後に[8]のプラごみの分別について考えましょう。プラごみは、大きく分けると現在2種類あります。プラスチック製容器包装(プラ包装)とプラスチック製商品(プラ商品)、どちらもプラでできていますが、分別処理の仕方が異なります。

プラ包装とは、お菓子やパンの袋、食品トレー、ペットボトルのキャップやラベル、発泡スチロールなど、食品や商品を入れたり包んだりして、中身と分離した際に不要になる部分で、リサイクルのプラマークの表示があります。この表示が無いものが結構たくさんありますが、これもプラ包装です。これらは基本的にリサイクルされますが、現在の分別の仕方は、異なる素材ごとの分別になっていません。これは大きな問題です。

一方、プラ商品は、文具、おもちゃ、バケツ、サンダル、ホースなどこれも多数あり、これらは燃やすごみとなっています。

このように同じプラでありながら分別処理の仕方が異なるのは、現行法上の問題です。プラ新法によって、いずれはプラ商品もリサイクルされるでしょうが、各自治体によって事情が異なるようです。プラごみの削減は、結局のところ製造するプラの量を減らすこと、使用済みのプラを捨てずに、回収・再利用・リサイクルさせることにつきます。そのためには、消費者の高精度な分別作業が不可欠だということを今以上に浸透させる必要があるでしょう。