野党の“新たな顔”か、埋没か 立憲民主党代表選の立候補者に違いは?

2021.11.26

政治

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写真:つのだよしお/アフロ

枝野幸男前代表が衆院選敗北の責任を取って辞任したことに伴い行われる立憲民主党の代表選。立候補しているのは逢坂誠二、小川淳也、泉健太、西村智奈美(届出順)の4氏だ。立憲民主は、前回衆院選では共産党などとの共闘体制を築いて臨んだが、議席を13減らし敗北。2022年夏の参院選に向け、野党共闘体制をどう見直し、党の体制をどう立て直すかが焦点となる。新代表は、11月30日の臨時党大会で決定。

結党の求心力となった枝野氏の代わりは

今回の代表選は枝野幸男前代表が衆院選敗北の責任を取って辞任したことに伴い行われる。枝野氏が退くのは、2017年10月の旧党結党から初めて。

立憲民主党の代表選の仕組みはこうだ。党所属の国会議員140人に一人2ポイント、国政選挙の候補予定者6人に一人1ポイント、全国の地方議員1265人に143ポイント、党員・サポーター約10万人に143票が割り当てられる。

地方議員と党員・サポ―ターは事前に郵送とインターネットを通じて、国会議員と候補予定者は臨時党大会の当日に直接投票。全572票のうち過半数を獲得すれば新代表に選出されるが、すべての候補者が過半数に満たない場合は上位2人による決選投票を行う。決選投票では国会議員と候補予定者には1回目と同じ286票、各都道府県連の47代表に1票が割り当てられ、全333票のうち、過半数を獲得した候補が新代表に就任する。

4人の候補者

逢坂誠二(おおさか せいじ)氏

逢坂氏は北海道8区選出の62歳。北海道大学薬学部卒業後、北海道ニセコ町職員を経て、35歳で町長選に初当選。人口5000人に満たない自治体ながら、「まちづくり基本条例」の制定や幹部会議の公開などで注目を集めた。2005年の衆院選で民主党から比例北海道ブロック単独候補として初当選。その後、北海道8区に移り、比例代表と合わせて当選5回。落選経験もある。

民主党が与党時代の2009年に鳩山由紀夫内閣の首相補佐官に就任。2010年には菅直人内閣で総務大臣政務官に就いた。政権陥落後は民進党を経て、2017年の民進党と保守色の強い希望の党との合流時には合流を拒否。無所属で立候補し、当選後に旧立憲民主党に合流した。政策的にはリベラル色が強く、党内では最大勢力である旧日本社会党系の「サンクチュアリ」グループに所属。今回は同グループが擁立する形で立候補した。

小川淳也(おがわ じゅんや)氏

小川氏は香川1区選出の50歳。東京大学法学部卒業後、自治省を経て、2003年の衆院選に民主党から立候補するも落選。2005年衆院選で再び立候補し、小選挙区では自民党候補に敗れたものの重複立候補していた比例四国ブロックで初当選した。当時34歳。2009年に発足した鳩山政権では総務政務官を務めた。香川1区と比例代表で合計6回当選。

民進党を経て、2017年に小池百合子都知事が創設した希望の党に合流したが、小池知事の保守的な政策に反発。同年の衆院選後に民進党と希望の党が合流して旧国民民主党が結成された際は同党への参加を拒否、無所属となったが、2020年9月に旧国民民主と旧立憲民主が合流したタイミングで現在の立憲民主に加わった。立憲民主では逢坂氏と同じサンクチュアリグループ(派閥)に所属するが、今回の代表選では野田佳彦元首相らのグループや、立候補を断念した大串博志氏ら中堅・若手の支持を受けて立候補した。

泉健太(いずみ けんた)氏

泉氏は京都3区選出の47歳。立命館大学卒業後、福山哲郎前幹事長の秘書を経て2000年の衆院選に立候補し、落選。2003年の衆院選で、29歳にして初当選した。民主党政権では内閣政務官に就任。京都4区と比例復活で現在、当選8回。

民進党、希望の党を経て、2018年には両党が合流してできた旧国民民主党に参加。希望の党や旧国民民主党では国会対策委員長や政調会長を歴任した。2020年に旧国民民主と旧立憲民主などが合流したのを機に現在の立憲民主に参加。旧国民民主を代表する形で代表選にも立候補したが、枝野氏に敗れた。今回の代表選では自らが率いる「新政権研究会」や小沢一郎衆院議員らのグループから支持を受ける。

西村智奈美(にしむら ちなみ)氏

西村氏は新潟1区選出の54歳。大学講師や新潟県議を経て、2003年の衆院選で初当選した。当時36歳。鳩山政権、菅政権で外務大臣政務官、野田政権では厚生労働副大臣を務めた。新潟1区と比例代表で合計6回当選。落選経験もある。

民主党政権崩壊後は民進党を経て、2017年の衆院選希望の党との合流を拒否。旧立憲民主公認で当選した。2020年には旧国民民主と合流して現在の立憲民主の結党に参加した。これまで野党内でもあまり人の前に出る存在ではなかったが、今回の代表選では「女性候補が出るべきだ」との後押しもあって白羽の矢が立った。菅直人元首相が率いる「国のかたち研究会」が支援する。

いずれもフレッシュな顔ぶれだが

これまでの論戦では、今のところ政策の違いは見えにくい。衆院選時の「野党共闘」の枠組みについては4氏とも意義があるとしつつ、共産党との「閣外協力」については見直す方針を明言。憲法改正議論についても4氏とも前向きな姿勢を示している。

また、2017年に希望の党への合流を拒否した逢坂、西村両氏はリベラル色が強く、枝野路線を継承するとみられるのに対し、合流した小川、泉両氏は中道路線に軌道修正するとみられる。ただ、討論会などでは原発政策や米軍普天間基地移設問題、ジェンダー平等など個別の政策について違いがみられず、党内からも「盛り上がりに欠ける」との声が漏れる。

2012年の民主党政権崩壊後、民主党の流れをくむ政党の代表は海江田万里氏や岡田克也氏、前原誠司氏、枝野幸男氏ら“おなじみの顔ぶれ”が担ってきた。今回の4氏はいずれも政権時の幹部ではないフレッシュな顔ぶれで、世襲ではなく20~30代から政治の世界で身をもんできた実力派ぞろい。野党の“新たな顔”になる可能性があるものの、現時点では多くの国民にとってなじみが薄く、存在感を示せるかどうかは未知数だ。

現状、立憲民主は最大野党だが、足元を見れば日本維新の会が凄まじい勢いで追い上げている。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が11月13、14日に実施した世論調査によると、維新の政党支持率が前回調査から4倍以上となる11.7%に達し、立憲民主の9.0%を上回った。

11月30日に選出される“新たな顔”を中心に結束し、立憲民主党が存在感を高めることができるか。それとも、維新の勢いに押されて埋没するか。今後の政界の構図を占う代表選になりそうだ。