非常識こそ生き残る道!葬儀ビジネスの既得権益を打ち破った 革命児が打ち出す、次なる一手[葬儀会館ティア]

2014.9.10

企業

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葬儀業界の既得権益を打ち壊すべく、17年前に葬儀会館ティアを創業した冨安社長。氏の強い思いによって、ここ十数年の間に葬儀業界は大きく変わった。”素人集団”といわれながら社を成功へと導いた”ティアイズム”と、次なる一手を聞いた。

株式会社ティア 代表取締役社長

冨安 徳久 とみやすのりひさ

1960年生まれ。愛知県出身。1979年、アルバイトで入った葬儀会社に感動し、入学式直前に大学を辞めて葬儀業界に入る。1982年、東海地方の大手互助会に入社するも、葬儀に対する会社の方針に疑問を持ち独立。1997年、株式会社ティア設立。2006年、名証セントレックスに上場。2014年6月、東証・名証一部上場。2022年4月、東証スタンダード、名証プレミア上場。

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葬儀ビジネスの悪しき習慣を変えたい

高齢化社会が進む昨今、人生の終末に向けて準備をする”終活”という言葉が生まれるなど、日本人の”死”に対する意識に変化が起こりつつある。実はこの潮流の裏側に、葬儀ビジネスを根本から変革し、死に対する新たな価値観をもたらした立役者がいた。17年前、株式会社ティアを創業した、冨安徳久社長だ。

高校卒業後、地域基盤で成り立ち、冠婚葬祭の費用負担を軽減できる”互助会”に勤め葬儀ビジネスに従事するが、業界特有の悪しき習慣に疑問を抱く。

「親が生きているうちに死のことを考えるなんて不謹慎だ、という感覚が世の中にはありました。ゆえに葬儀をご利用される方は実際に親族が亡くなるまで、葬儀についての知識をまったく持っていませんでした。葬儀業者はこれをいいことに、悲しみにうちひしがれているご遺族に対して高額な料金を請求していた。けれど死を扱うこの仕事も、ご遺族から対価をもらう限り普通のビジネスです。葬儀をご利用される方が納得できるサービスを提供する仕組みに変えていかなくてはならないと思いました」(冨安社長)

葬儀会館ティア

成功を支えた、用意周到な3つの戦略

1998年に独立した冨安社長は、ティアの創業にあたり「明朗会計」「利便性の向上」「サービス精神」という3つの戦略を掲げる。

まず、これまで不透明だった価格を「明朗会計」にするため近隣にチラシを配布し、項目ごとの価冨安 徳久格を消費者に開示した。そこで既得権益を守ろうとする葬儀業界から大変な抵抗にあう。価格なんか出すな!という電話が鳴り、ときには身の危険を感じて警察に相談したこともあったという。

「そもそも一軒一軒の家にチラシを配って回るという営業行為自体が初めてのことでした。業界からの抵抗は凄まじいものでしたが、想定の範囲内でしたし苦労だと思ったことはありません。メディアでは『激安葬儀社!』と謳われることも多いのですが、私からすれば適正価格にしただけのこと。当時は業界から非常識だと非難されましたが、その非常識こそ、生き残る道だと思っています」

また、マンションに住み、戸建てもコンパクトになるなどの住宅事情の変化により、葬儀の場所は自宅や寺院から近隣の集会場へ移りつつあった。ここで冨安社長は葬儀場の「利便性」に目をつける。

「本社がある名古屋は車社会なのに、集会場には駐車場が満足にない。広い駐車場と冷暖房を完備した葬儀会館を作ったら、絶対に人が集まるはずだと思いました」

さらに会館一つひとつの規模は小さくして資金をかけない代わりに数を増やすドミナント出店(集中出店)を取り入れた。

「特定の地域に集中させるドミナント出店は、セブン-イレブンの戦略を参考にしました。近くの便利な場所にこそ人が集まるという考えです。同業種をまねているだけでは、結局井の中の蛙。他業種の戦略にこそ、大きなヒントが隠されているのです」

徹底的に消費者の心に寄り添う

そして3つ目の「サービス精神」こそ、冨安社長が一番大切にしてきた戦略だ。

「これまで葬儀社は、葬儀のことが何もわからないお客様の”上”に立ち、自分たちに有利な交渉をしていました。私はそれを逆転させ、サービス業として徹底的にお客様に寄り添う葬儀社を作りたかった。わが社の生涯スローガンは、”目指せ!日本で一番ありがとうと言われる葬儀社”。渋沢栄一さんの本『論語と算盤』のように、どの葬儀社よりも喜ばれる葬儀をたくさん行いたい、という心のあり方(=論語)があってこそ、収益(=算盤)も日本一になると考えてきました。世の中のためになっていなければ日本一にはなれません」

年間で何百件もの葬儀に立ち会う社員には、死に慣れてしまわないよう”命の教育”を行って感性を磨く。葬儀とは、世界にたった一人しかいない故人のものであり、徹底的に遺族や故人に尽くすことが使命であると繰り返し教えるという。

この葬儀や故人、遺族への強い思いこそ、ティアが成功してきた一番の理由であり、他社との決定的な差だ。

「われわれは素人集団と言われてきたけれど、未経験者に一から葬儀に対する考え方とティアイズムを教えてきたからこそ上場が実現できたと思っています」

変わりゆく葬儀事情とティアの思い

現在、ティアは中部・関西・関東を中心に73店舗を展開し、今後は統一ブランドとして全国制覇を目指す。

「まずは影響力の強い東京で成功し、そこから発信してくことが全国制覇への近道だと思っています。そして、人口50万人以上の20の政令指定都市にも店舗を置き、まだ地域に残る古い葬儀ルールと比較してもらえる存在になっていきたい。葬儀を利用される方が地元の葬儀社と弊社のサービスや価格を比較し、ティアを選びたいと思ってもらえるように、スタッフのクオリティーをさらに上げて勝負していくつもりです。

今後はフランチャイズ出店もエリアの拡大が予想されるなかで、人材教育を行う『ティアアカデミー』をさらにブラッシュアップし、大量の人材を早期で育てられる教育制度を構築していく必要があります。いくら条件のいい葬儀会館を作っても、そこにティアイズムを入れなければ、地域に根づき、愛される葬儀社にはなれません。全国制覇を達成し、日本中で家族の誰かがティアのメンバーズカードを持っているという未来を目指して頑張っていきたい」

ティアに追随し、適正価格を提示する競合も次々に登場、葬儀業界はさらなる変革のときを迎えている。コストパフォーマンスの高さが当たり前になったいま、日本人の死に対する価値観の変化に適応し、葬儀を利用される方の心をつかめる葬儀社にのみ生き残る道が残されている。

 

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