国会議員の報酬4000万円以上は高いか、安いか

「毎月もらう歳費(給料)は100万円しかない」と発言した細田博之衆院議長 写真:Motoo Naka/アフロ

政治

国会議員の報酬4000万円以上は高いか、安いか

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細田博之衆院議長は5月に都内で開かれた自民党参院議員の政治資金パーティーで「議長になっても毎月もらう歳費(給料)は100万円しかない」「月給で手取り100万円未満の議員を多少増やしてもバチは当たらない」などと述べ、謝罪に追い込まれた。実際に国会議員はいくらもらっているのか? 民間と比べて多いのか、少ないのか。国会議員の懐事情を探る。

一般の国会議員でも4000万円以上

まずは国会議長や国会議員がいくらもらっているのか、そこから紐解いていこう。

国会議員の歳費、つまり給料は法律で決まっている。衆参ともに議長は月217万円、副議長は月158万4000円、一般の議員は月129万4000円。

これに夏冬のボーナスが加わるが、内閣人事局によると直近の2021年冬のボーナスは議長が約527万円で、国会議員は約314万円。夏のボーナスも同額だったので年収ベースで議長は約3658万円、国会議員は約2180万円となる。現在は新型コロナウイルスの影響で2022年7月まで月給だけ2割削減しているが、それでも普通のサラリーマンに比べればとてつもなく高い。

さらに、国会議員には「第2の給与」があるのは既報の通り。文書通信交通滞在費(通称:文通費)なるものがそれで、法律で月100万円支給されることが明記されている。国会議員といえども給与には税金が課されるが、この文通費は非課税。つまり実質的には100万円を大幅に超える額を領収書なしに使うことができるのだ。

名称変更で使途拡大へ 国会議員の第2の給料「文通費」は何に使われているのか

2022.4.14

さらに、国から政党に議員一人あたり年間約4000万円の政党交付金、月額65万円の立法事務費が支払われる。これは議員個人に払われるわけではないが、このうちの一部が派閥や政党支部を通じて「氷代」や「餅代」、活動費などとして議員にわたっている。政党によっても異なるが、少なく見積もっても年間1000万円以上。合計すると一般の国会議員でも4000万円以上の税金を受け取っていることとなる。

細田議長の発言に遡る。確かに議長の月額給与は217万円から2割削減すれば173万6000円。税金を納めれば100万円ほどになるのかもしれないが、おかしいのはその額が少ないとする根拠だ。細田議長は「上場会社の社長は、1億円は必ずもらう」と語ったが、人事院の2020年の「民間企業における役員報酬(給与)調査」によると、企業規模500人以上の事業所の社長の年間報酬平均は4622万円。必ずしも上場企業とリンクするわけではないが、3658万円の給与に加えて1000万円以上の活動費を受け取っている議長と大差はない。

しかも、巨大企業の役員報酬が高いというニュースはよく目にするが、世界的にビジネスを展開している超大企業が中心。それをもって「1億円は必ずもらう」と断定するのは事実誤認だし、世界に名をとどろかせる最新鋭の巨大企業と、遅々として改革の進まない日本の国会を比較するのもおこがましい。首相や最高裁長官、参院議長とともに日本のトップである「3権の長」の一員である衆院議長が、政治家のパーティーでこんな軽口をたたくというのは、批判されてしかるべきだ。

「政治にはカネがかかる」とは選挙費用のこと

ちなみに首相や閣僚の給与はどうか。内閣官房によると、首相の給与は月約200万円で、地域手当とボーナスを合わせた年収は約4000万円。閣僚は月約147万円で年収約2940万円。副大臣は月約140万円で年収約2820万円、政務官は月120万円、年収約2400万円となっている。

現在、首相も閣僚もすべて国会議員が兼ねている。国会議員の給与と合わせたらいったいいくらになるのか、と想像しがちだが、実際には国会議員が兼ねる場合は国会議員の給与との差額しかもらえない。また、国会議員の歳費削減に合わせて首相は3割、閣僚は2割報酬を自主返納している。

ただ、国会議員であるということは文通費ももらえるし、政党からの活動費も受け取れる。実力派の議員であればパーティー券収入や政治献金が1億円を超えることもある。イギリスのある調査では、2019年時点で世界の国会議員の報酬ランキングで日本はシンガポール、ナイジェリアに次いで3位。各種手当を含めると世界一の水準との指摘もある。

「日本の政治家は優遇されている」と言うと、議員側からはこんな反論が予想される。

一つ目は「政治にはカネがかかる」。確かに政治家は地元選挙区に事務所を構え、国から給与の出る3人の公設秘書以外に多くの秘書やスタッフを抱える。それらに要する家賃や人件費は自分で払わなければならないが、何のための事務所で、何のための秘書課というと、ほとんどは選挙のため。つまり自分の就職活動のためで、そのために国が多額の費用を負担しなきゃいけないというのはおかしな話だ。

二つ目は「給与が少ないと政治家の質が下がる」。一見もっともらしく聞こえるが、逆に言うと給与が高ければお金目当ての人が政治に集まってくることにもなりかねない。政治家が本当にやりがいのある仕事なら、多少給与が安くても優秀で志ある人間がたくさん集まってくるだろう。年収4000万円超にもかかわらず国会の人材難が指摘されるのは給与とは別のところに理由があるに違いない。