郵政3事業(郵便、郵便貯金、簡易保険)を運営する日本郵政グループが、2015年秋の株式上場に向けて資本と事業の基盤の見直しに着手。
これまで、国営時代の年金債務約7,000億円の支払い義務が投資家から問題視され、株式上場の足枷になっていましたが、傘下のゆうちょ銀行の余剰資本1兆3,000億円を活用してこれを一括処理します。
また、成長分野への資金が不足している日本郵便の物流事業にも6,000億円を投じ、ヤマト運輸や佐川急便などとの競争に備えます。投資家が郵政株を買いやすい環境を整えるのが狙いとのこと。
政府は1980年代の旧電電公社(現NTT)を皮切りに、国営事業の民営化を進めてきました。日本郵政の上場は、国営事業で最後の大型上場になりますが、株式の3分の1超は政府が持ち続けます。
国の信用力でゆうちょ銀行が住宅ローン事業を始めること、信書(手紙や請求書など)の取り扱いを事実上独占したまま物流事業を拡大することなど、国が介入することに対する民間の懸念は強く、公平な競争条件の確保が重要になります。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Q.「国営時代の年金債務」というのは何ですか?
A.公務員には以前、恩給というものがあったの。
一定期間働いた人や、その遺族に払うお金。1959年に共済制度に移行したけど、その前に働いていた人に今でも年金を払ってる。その債務が7,000億円になっているから、一括で処理しようということ。
Q.そもそも、国営事業を民営化する目的は何ですか?
A.大きな社会インフラは国営で経営しないと、イニシャルコスト(先行投資)がかかる。でも、時代とともに民間でも賄えるようになるでしょ。
基本的に民間でできるものは民間で運営した方がいい、というのが資本主義の考え。健全な競争がコストダウンにつながるでしょ。
Q.国の信用力を使った事業や、独占事業があり、公平さに欠けると民間企業から反発があるようです。編集長はどう思われますか?
A.反発は当然。
3分の1の株を政府が握っていたら、バックに政府が付いている(よっぽどじゃないと潰れない)という安心感から取引が集中して、ほかの民間事業を圧迫する恐れがある。
ほかにも、国の信用力があった時代に、いろんな優遇措置があって集めた郵貯などがあり、最初から民間金融機関とは違うもの。それに郵便事業は民間が入れない部分があるし、ユニバーサルサービス(全国一律サービス)をしなければいけないのだから、切り離して郵便会社は国営のままで、金融だけ民営化するということもありえたのに。(佐藤尊徳)
[参考:「年金債務7000億円一括処理 日本郵政、上場に備え」(日経新聞1面 2014年9月29日)]
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