【内閣改造】政権の骨格は維持、初入閣11人 支持率は横ばいか
2023.9.15
0コメント第2次岸田再改造内閣(2023年9月13日) 写真:ロイター/アフロ
岸田文雄首相は9月13日、内閣改造と自民党役員人事を行った。茂木敏充幹事長や松野博一官房長官ら政権の骨格を維持する一方、上川陽子氏を外相に起用するなど女性閣僚を過去最多タイの5人起用。閣僚19人のうち、初入閣を11人とした。イメージを刷新して政権浮揚を目指すが、初入閣組などが野党追及の的となる可能性もはらむ。
留任は6人、初入閣は11人、女性閣僚は5人へ
自民党は、9月13日午前の臨時総務会で役員人事を了承。岸田首相は官邸に新閣僚を呼び込み、皇居での認証式を経て第2次岸田再改造内閣を発足させた。
岸田首相は記者会見で「明日は今日より良くなる、誰もがそう思える国づくりに向け、経済、社会、外交・安全保障の3つを政策の柱として、強固な実行力を持った閣僚を起用することとした」と意気込んだ。
党役員人事では、麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長を留任。幹事長に次ぐポストの総務会長に森山裕前選挙対策委員長を横滑りさせ、選対委員長には小渕優子元経済産業相を起用した。
閣僚では岸田首相の女房役である松野博一官房長官や鈴木俊一財務相、西村康稔経済産業相、斉藤鉄夫国土交通相に加え、前回2021年の総裁選で岸田首相と戦った高市早苗経済安全保障相と河野太郎デジタル相の2人も留任。交代する13人のうち、閣僚経験者は外相に就いた上川元法相と経済財政・再生相に就いた新藤義孝元総務相の2人にとどまり、残り11人は初入閣となった。
女性閣僚は上川、高市両氏に加え、加藤紘一元幹事長の娘である加藤鮎子こども政策・少子化担当相、自見英子地方創生担当相、土屋品子復興相の3人が初入閣となり、2人から5人に増えた。女性閣僚の人数は、2001年の小泉内閣、2014年の第2次安倍改造内閣と並んで過去最多。
内閣[役職・名前・年齢・当選回数・選挙区・派閥]
※初入閣は赤字、留任は緑字
- 首相 岸田文雄(66) 衆⑩・広島1 岸田派会長
- 総務大臣 鈴木淳司(65) 衆⑥・愛知7 安倍派 初
- 法務大臣 小泉龍司(70) 衆⑦・埼玉11 二階派 初
- 外務大臣 上川陽子(70) 衆⑦・静岡1 岸田派
- 財務大臣 鈴木俊一(70) 衆⑩・岩手2 麻生派 留
- 文部科学大臣 盛山正仁(69) 衆⑤・比例近畿 岸田派 初
- 厚生労働大臣 武見敬三(71) 参⑤・東京 麻生派 初
- 農林水産大臣 宮下一郎(65) 衆⑥・長野5 安倍派 初
- 経済産業大臣 西村康稔(60) 衆⑦・兵庫9 安倍派 留
- 国土交通大臣 斉藤鉄夫(71) 衆⑩・広島3 公明党 留
- 環境大臣 伊藤信太郎(70) 衆⑦・宮城4 麻生派 初
- 防衛大臣 木原稔(54) 衆⑤・熊本1 茂木派 初
- 官房長官 松野博一(60) 衆⑧・千葉3 安倍派 留
- デジタル担当 河野太郎(60) 衆⑨・神奈川15 麻生派 留
- 復興大臣 土屋品子(71) 衆⑧・埼玉13 無派 初
- 国家公安委員長 松村祥史(59) 参④・熊本 茂木派 初
- こども政策担当 加藤鮎子(44) 衆③・山形3 谷垣G 初
- 経済再生担当 新藤義孝(65) 衆議⑧・埼玉2 茂木派
- 経済安全保障担当 高市早苗(62) 衆⑨・奈良2 無派 留
- 地方創生担当 自見英子(47) 参②・比例 二階派 初
自民党役員
- 総裁 岸田文雄(66) 衆⑩・広島1 岸田派
- 副総裁 麻生太郎(82) 衆⑭・福岡8 麻生派 留
- 幹事長 茂木敏充(67) 衆⑫・神奈川13 茂木派 留
- 総務会長 森山裕(78) 衆⑦・鹿児島4 森山派
- 政務調査会長 萩生田光一(60) 衆⑥・東京24 安倍派 留
- 選挙対策委員長 小渕優子(49) 衆⑧・群馬5 茂木派
- 組織運動本部長 金子恭之(62) 衆⑧・熊本4 岸田派
- 広報本部長 平井卓也(63) 衆⑧・香川1 岸田派
- 国会対策委員長 髙木毅(67) 衆⑧・福井2 安倍派 留
来年秋の総裁選を見据えた人事だが不安要素もあり
岸田首相にとって内閣改造と党役員人事の最大の狙いは、2024年秋の総裁選で再選することだ。第4派閥を率いる首相と第2派閥麻生派の麻生氏、第3派閥茂木派の茂木氏の3氏で相談して政権の方向性を決める「三頭政治」は維持。最大派閥の安倍派にも配慮し、派内の実力者である松野官房長官と西村経産相、萩生田政調会長を留任させた。
一方で茂木派の小渕氏を選対委員長に起用したのは、ポスト岸田に意欲を示す茂木氏をけん制する意味合いがある。かつて同派を率いた小渕恵三元首相の娘であり「将来の首相候補」と目される小渕氏を政権に取り込めば、茂木派が一致団結して岸田首相に対抗するのは難しいからだ。茂木氏は竹下亘前会長の死去を受けて2021年に同派会長に就任したが「派内で影響力の強い参院をまとめきれていない」との指摘もある。
ただ、かつて政治とカネの問題を受けて経産相を辞任した小渕氏の起用は、諸刃の剣でもある。当時、指摘されたのは自身の政治団体の収支の食い違いだったが、その内容よりも説明責任を果たさない小渕氏の姿勢が批判を招いた。党四役の一員となり、再び注目を集めれば改めて当時のことを掘り起こされる可能性があるが、マスコミにしっかり向き合うことができなければ、任命した首相に批判の矛先が向くだろう。
前回は3人が辞任、期待に乏しい初入閣組
初入閣組にも注意が必要だ。11人の顔ぶれを見ると年齢は60代半ばから70代が多く、フレッシュさには乏しい。各派閥がこれまで組閣のたびに推薦したものの、選考に漏れてきた「入閣待機組」も目立つ。閣僚は注目度が格段に高まるため、副大臣や政務官などの経験があったとしても、初入閣組は答弁能力やスキャンダルなどを追及されやすい。2022年8月の前回改造では8人が初入閣したが、失言や政治とカネの問題で3人が年内に辞任に追い込まれた。
今回、初入閣となった自見地方創生担当相は、厚生労働政務官だった2020年に当時、厚労副大臣だった橋本岳氏と不倫関係に陥っていると週刊誌に報じられ、コロナ流行中の不祥事だけに批判を招いた(その後、2人は再婚)。他にも、旧統一教会との接点を認めた議員が4人いる。今後、国会では野党から、世間では週刊誌から追及される可能性がある。
支持率回復を狙うも政権浮揚効果は限定的か
日本経済新聞によると、小泉政権以降、内閣改造後1カ月以内に世論調査を実施した17回のうち、8割にあたる13回で内閣支持率が高まり、横ばいは1回、下回ったのは3回だった。ただ、2009年に民主党に政権交代した以降、計11回の変化は1ポイントのプラスにとどまり、政権浮揚効果は限定的だという。岸田首相による前回の改造も1ポイントの低下となった。
NHKが9月11日に行った調査によると、岸田内閣の支持率は36%で、不支持率の43%を7ポイント下回った。支持する理由で最も多かったのは「他の内閣よりよさそうだから」で、不支持の理由の最多は「政策に期待が持てないから」。前回調査より支持率はやや改善したものの、国民の積極的な支持を得ているとは言い難い状況だ。
さて、内閣改造後だが、日経新聞が9/13・14に行った世論調査によると、内閣支持率は42%で前回調査と変化なし。女性閣僚の登用などは評価ポイントとして受け取られているようだが、全体とした横ばいとなった。
仮に今後、多少支持率が上がったとしても、初入閣組などにスキャンダルが発覚すれば一瞬で改造効果は吹き飛びかねない。そして国民は閣僚の“顔”よりも政府が実施する政策にこそ注目している。いくら小手先の人事をこねくり回しても、肝心の政策に期待が持てなければ本格的な支持回復は見込めない。