ウクライナやイスラエル情勢で国連の機能不全が鮮明に

採決する国連安保理 写真:Loey Felipe/UN Photo/新華社/アフロ

社会

ウクライナやイスラエル情勢で国連の機能不全が鮮明に

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イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区への空爆が続く。イスラエル側の犠牲者数が1400人余りに留まる一方、パレスチナ側の犠牲者数は1万人を超え、増加の一途をたどっている。国際社会ではイスラエルに対する非難の声が広がるが、イスラエルはガザ地区への空爆や侵攻を止めようとしない。こういった危機が発生した際、本来であれば国際社会の平和と安全の維持を追求する国際連合が主要な役割を果たさなければならない。しかし、国連は十分に機能しているとは言い難い。その原因はどこにあるのだろうか。

常任理事国たちの拒否権発動で役割を全く果たせない国連の安保理

10月16日、国連の安全保障理事会において、ロシアがパレスチナ寄りの立場で、今回の原因をイスラエルによる長年の占領だと主張。ハマスを非難しない形で即時停戦を求める決議案を提出した。しかし、ハマスを非難する欧米諸国や日本がそれに反対し、決議は採択されなかった。

続いて、10月18日には、ブラジルがハマスを非難した形で停戦を求める決議案を提出し、フランスや日本が賛成に回ったものの、アメリカはイスラエルの自衛権への言及がないとして拒否権を行使した。

そして、10月26日にはアメリカがハマスを非難し、イスラエルの軍事作戦に極力支障が出ない範囲での一時停戦を求める決議案を提出したが、ロシアや中国は「イスラエルの行為を容認するようなものだ」として拒否権を行使し、廃案となった。

このように、本来世界の平和と安全で最前線に立って機能しなければならない安保理は、その役割を全く果たせない状況だ。

すぐできそうなことができない、国連で浮き彫りになる世界の分断

一方、全加盟国が参加する国連総会でも、世界の分断が顕著に見られる。イスラム教国は攻撃を続けるイスラエルを非難し、即時停戦を訴えているが、アメリカやイスラエルはそれに真っ向から反対。日本やイギリスなどは、どちらにもつかない中立的な立場を維持している。結局、国連総会ではハマスを非難しないで停戦を求めるヨルダンの決議が121カ国の賛成で採択されたが、アメリカやイスラエルなど14カ国が反対、欧州や日本など44カ国が棄権した。

自然に考えれば、今回の発端を作ったハマスも、過剰な攻撃を続けるイスラエルも双方が非難され、双方が即時停戦に応じるべきだが、各国によって考え方が全く異なるため、一般的にすぐできそうなことができない“世界”の難しさが浮き彫りとなった。

しかし、これは今回に限ったことではない。ロシアがウクライナへ侵攻した翌月、国連総会ではロシアの侵攻を非難する決議が141カ国の賛成で採択された。反対に回ったのは侵攻したロシアに加え、ベラルーシとエリトリア、北朝鮮とシリアの5カ国だったが、中国やインド、その他のグローバルサウスなど35カ国が棄権した。このときは、安保理では常任理事国ロシアがウクライナ侵攻に関する決議案で拒否権を行使することは議論の余地がなかったが、国家による侵略を非難する決議にも40カ国余りが賛成に回らなかった。

分断の原因は各国ごとに異なる「実利主義」

なぜ、国連における諸外国の立場はここまで異なるのか。一つに、イスラエル情勢における日本の立場を取り上げて説明しよう。

日本はイスラエル情勢において、イスラエルを支持するアメリカの立場でもなく、パレスチナ側を支持するアラブ諸国の立場でもない。日本はこれまでアラブ諸国と良好な関係を維持し、石油の9割を中東に依存してきた。そのため、今回のような事態にアメリカと足並みを揃えれば、日本としてはアラブ諸国との間に摩擦が生じる恐れがある。一方、日本は近年イスラエルとも経済的な協力関係を強化しており、同盟国アメリカの姿勢を考慮すれば、パレスチナ支持の立場を明確にすることもできない。

また、ロシアによるウクライナ侵攻では、欧米や日本など世界40カ国余りは、ロシアへ経済制裁を強化した。一方、インドなどのグローバルサウスの中にはロシア非難決議で賛成に回った国々もあるが、それ以上のことは何もしていない。国家による侵略が許されないものだと認識しつつも、アジアやアフリカ、中南米の途上国の中にはロシア産エネルギーに依存している国も多く、国益を第一に考え、実利的に行動している。

当然だが、日本もグローバルサウスの国々も、自国の利益を考えての判断だ。どこかで戦争が勃発し、それがエスカレートすれば、われわれはその惨劇を毎日のように見る。国連は一致団結しようとし、決議しようとするが、各国によって立場や考えは大きく異なり、各国とも実利的に行動した結果、世界の分断が浮き彫りとなる。世界の分断が進むなかでは、国連の機能はますます低下していくと言わざるを得ない。