社会

日本はテロと戦えるのか~積極的平和主義の名の下に

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情報の監視・共有を深めていくことが必要

テロとは要するに一般社会に不安や恐怖を与えることが第1目標だ。彼らが自爆テロや誘拐、暗殺という非情な手段を好むのは、国家が有する軍隊や警察と正面向かって戦うほどの力を持っていないからで、ゲリラ戦の論理と同じ発想である。専門用語で「非対称戦」とも言い、強力な軍事力を持つ国家と、非力な武器で不意打ちを好む集団との戦いということ。

そしてテロ組織は、民族・宗教間の確執や貧富の差といった矛盾など、社会の歪みを巧みに突いて、社会の憎悪をさらに煽ろうとする。相対する両者の関係をテロという起爆材で悪化させ、報復の応酬と憎悪の連鎖に持ち込めば、テロ組織の目論見の半分は達成されたも同じ。われわれは何としてもこの術中にはまってはならない。

ではどうすれば阻止できるのか。国際テロ組織と対決するのだから、日本単独による諜報活動では限界があり、やはり同盟国アメリカをはじめとした海外との連携・情報交換が欠かせない。

アメリカの場合、CIAが全世界で諜報活動を展開、加えてイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドとは「アングロサクソン連合」を組み、地球規模の軍事用ネット・通信傍受システム「エシュロン」を構築する。さらにNSA(国家安全保障局)が中心となり、「プリズム」「シン・スレッド」「トレイル・ブレイザー」といったネットや電話を傍受するシステム、プログラムを次々に構築。

日本の現行法では、凶悪犯罪が実行された後でなければ通信傍受はご法度。米国内でもプライバシーを侵害しかねないとして物議を醸しているが、凶暴化する国際テロ組織の跳梁を考えた場合、国民のプライバシーが犯されるという危険性をはらんでいるものの、やはり一定の通信傍受は避けられないのかもしれない。

日本がテロと戦う日

集団的自衛権の行使容認という”ルビコン川”をついに越えた日本だが、今後これを盾に、アメリカが国際テロ組織への攻撃を求めてくる可能性は少なくない。

9・11でアメリカは自衛戦争という名目でアフガニスタンを攻撃、このときNATOも集団的自衛権を発動し、アメリカを支援するために参戦している。仮に「イスラム国」が第2の9・11を米国内で起こした場合、日本に参戦を求めてくる、と考えるのが自然だろう。

以前ならば「集団的自衛権は行使できない」と突っぱねることもできたが、今後はこの手は使えない。それどころか、再三にわたる要請にもかかわらず固辞した場合、逆に日米同盟にヒビが入り、かえって安全保障上の危機に陥ることにもなりかねない。

現在のところ、安倍政権は機雷の掃海や後方支援程度に留める、という立場を強調するが、果たして近い将来それだけで済むのか、予断を許さない状況だ。

ジェット

ITに強いテロリストから情報を守れ

2014年12月に施行された「特定秘密保護法」、実はこれもテロ対策にとって重要な鍵を握っている。同法では特定秘密として安全保障にかかわる情報のうち、防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止にまつわる情報で、しかも特段に秘匿すべきものと定め、加えてこの特定秘密の取扱者も厳格に選抜。故意に漏洩した場合に処罰されるとする。
だが、情報漏洩で一番怖いのが、実は政治家の脇の甘さだ。国会中継を見ればわかるが、安全保障にかかわる国会議員が一心不乱にスマホをにらみLINEやTwitterに書き込んでいる姿が見受けられる。彼らは意識していないようだが、実はスマホやネットを使った何気ないやり取りのなかに、テロ組織にとって極めて重要な情報が隠されていることも少なくない。
「イスラム国」の高度なネット戦略を見ても察しがつくように、彼らのITリテラシーは極めて高く、プロのハッカーも多数リクルートしているはず。その気になれば日本の政治家や官僚のスマホやPCに侵入して、情報を吐き出すアプリを密かに埋め込んだり、GPS機能やカメラ機能を逆手にとって位置情報を把握したりすることも難しくはないだろう。どうせなら、これらの対策も特定秘密保護法でカバーしてはどうだろうか。

ソフトパワーこそテロを根絶できる唯一の道

古今東西、人間の争いごとは絶えない。それは、嫉妬や物欲など、ほかの動物にはない感情があるからだ。皆が同じ価値観になりえないなら、少しでもわかり合う努力が必要。武力で人を押さえ込もうとしても、第2、第3のテロリストは生まれ続ける。

日本人として対テロリストを考えたとき、相手を理解することも必要だが、日本の良さをわかってもらうことこそ、身を守る一番の手ではないかと思う。ホスピタリティの高さ、”おもてなし”の精神、無形文化遺産になった「和食」、「アニメ」など、日本には世界に誇れる文化がたくさんある。

最近はクールジャパンや円安のおかげもあり、インバウンドが増え、日本の良さを海外に知ってもらえる機会は増えてきた。地道な努力になるかもしれないが、それらをもって”ソフトパワー”の道を探るのが唯一の道だと思う。

即効性のある対処としては、各国と連携してアンテナを張り巡らせるしかないが、通信傍受の機能を高めることはプライバシーも狭まるし、生活に制限もかかってくる。軍拡にもつながるし、そのようなことがなくてもいい世界であってほしい。

日本も安全保障についての議論が盛んになり、集団的自衛権の行使容認が現実的になっているが、テロリストたちとの戦闘で武力行使になるようなことだけは避けてもらいたいと切に願う。