日本には数万社といわれる印刷会社が存在している。インターネットやデジタルサイネージ(電子看板)の普及により、印刷業界の出荷額は右肩下がりで、小規模印刷会社は価格競争に巻き込まれ、立ち行かなくなってきている。しかし、コアコンピタンスを持つ会社は持続的な成長が可能だ。
特殊印刷に強いシーレックス
東京都台東区に本社を構えるシーレックス(Sealex)という会社がある。シール(seal)の印刷加工技術に長けていて、実はほとんどの人が毎日目にしている製品の一部を作っている会社だ。例えば、最近のポンプ式シャンプーやリンスのボトルは、シールが剥がれない。容器の中にシールが埋め込まれているからだ。剥がれないから、詰め替えて長く使っても、見た目も綺麗で清潔に使えるというわけだ。このようなシール技術は特殊印刷と呼ばれ、一般の印刷会社では扱えない製品が多い。食品や化粧品、家電製品など、挙げたら切りがないほどの製品のシールは、シーレックスの技術が生かされたものが多い。
■インモールドラベル
プラスチック容器に埋め込み、一体化されるラベル。シャンプー・リンスなどのトイレタリー製品に採用
[特長]容器に直接印刷したかのような風合い
[メリット]ラベルが剥がれず、容器の長期使用にも耐えられる
■ソリッドメタリックラベル
特殊なメタリック箔を使用し、箔の上への印刷を実現。化粧品・トイレタリーなどの商品の顔となるブランドラベルやPOPラベルに採用
[特長]金・銀だけでなく、メタリック表現のカラーバリエーションが増加
[メリット]複数の印刷機で分けて行っていた加工を1台で完結させ、短納期対応を可能に
■ホロプリントラベル
特殊な加工技術によって、印刷でホログラムのきらめきを表現。おしゃれ感や清潔感を強調したいコスメやトイレタリー製品のPOPラベルに採用。
[特長]全面はもちろん、強調したいデザイン部分にだけホログラム効果を付与することも可能
[メリット]今までのホログラムシールと比べ、安価で使いやすい
さまざまな製品になくてはならない特殊印刷
例えば、某メーカーのスライスチーズは、シーレックスの技術で家庭での再封保存(リシール)が容易になった。繰り返し開け閉めを可能にする粘着性と未開封時の商品劣化防止を両立させたことで、メーカーが把握していた「再封」という消費者ニーズに対応できたのだ。このスライスチーズはパッケージリニューアル後、前年を大きく上回る売上を記録している。このような機能性シールの開発力と加工技術を併せ持つ優良企業の一つがシーレックスなのだ。
日本の代表的な電機メーカーが韓国、中国に押され、日本の技術力が衰えてきたかのように言われるが、中堅企業の技術力はまだまだ世界に出ても戦えるだけのものがあるのだ。日本がこれから再成長するためには、超巨大企業だけでなく、シーレックスのような優良な中堅企業が更に伸びていくような土壌も必要だと感じる。