経済の改革を進める中国で、2014年の大幅な規制緩和で一度引き上げた預金金利を再び引き下げる銀行が相次いでいます。中国当局によって「高金利が金融システムの安定や、景気を刺激する金融緩和の浸透を阻害する可能性がある」という指導が行われたようです。
預金金利を引き下げているのは、4大国有銀行(中国農業銀行、中国建設銀行、中国銀行、中国工商銀行)と比べて店舗網や信用力で劣る比較的規模の大きい地方銀行。高金利で預金を獲得するために、規制緩和で想定以上の水準に金利を引き上げていました。
中国は2015年内の預金金利の完全自由化を目指していますが、市場の動きを読み切りきれていなかったようです。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Qなぜ中国は預金金利の完全自由化を狙っているのですか?
A国際的な信用を得るため。
中国の企業は日本とは比べものにならないくらい政府の干渉を受けるけど、形の上では民間企業なのだから、自由競争が基本原則。それに、国が恣意的に金利を決めるようでは、国際社会で信用されない。進出しようとする国際企業も カントリーリスクが高くてためらうよ。
物の値段だって、需要と供給のバランスで決まるでしょ? 金利を自由化できずに横並びにしていては、経営努力の足りない銀行も生き残り、全体としてコスト増につながる。だた、銀行は金融のインフラ(資金の供給)を担っているので、通常の民間企業のように簡単には潰せない。中国はその狭間で揺れてるんでしょう。
Q中国経済の構造改革は、ほかには具体的にどういったものがあるのでしょうか?
A具体的には挙げられないけど、一番の問題は腐敗役人がたくさんいて、賄賂が横行していること。
中国は中央政府、地方政府の権限が非常に強いし、一党独裁で野党がいないから政治への監視が非常に緩い。すると賄賂が横行して、ちゃんとした自由競争にならずに悪徳業者がのさばることになる。だから、習近平政権では腐敗に対して厳しい処置をしている。まずは、自由で「公平な」競争ができる条件下にするべきだね。
ほかには、通貨である人民元の国際取引に制限が掛かっているので、このままでは中国での商売に支障をきたすことも考えられる。ドルもポンドも、円も基本的に自由な取り引きができるからね。
(佐藤尊徳)
[参考:「中国、預金金利下げ相次ぐ 当局、地銀を指導か」(日経新聞朝刊7面 2015年4月6日)]
[わかるニュース]
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