一般的には名刺で知られる山櫻が、セカンドブランドとして立ち上げた「+lab(プラスラボ)」は、”良いものを求める”傾向にあるB to C向け。新たな領域に向けて展開するブランドの背景を、開発者に聞いた。
アイデアとジャパンクオリティーで海外進出も
4000種類を超える紙製品を販売する同社の売り上げシェアは、B to Bの封筒が半数以上、その他名刺、ハガキ、賞状や手提げ袋など。しかし昨今の価格競争のなか、安価な企業向け紙製品だけでは大幅な利益拡大は難しくなっている。
新ブランド「プラスラボ」は、こうした状況を受けて乗り出した同社初のB to C事業。企業向けの商材とは対極にある、高価で質重視のデザイン文房具だ。「これらの商品はアイデアの分だけ利幅も大きい。消費者も安くて簡素な文房具に飽きており、オシャレで高価な文房具を求める傾向が強まっているようです」(市瀬社長)。
こうした商品は、あらゆる紙製品を製造、カスタマイズしてきた同社の得意分野でもある。本格始動から2年弱が経過した現在、ラインナップは20種、取り扱い店舗は専門店を中心に500~600店舗まで拡大。ほかでは見られない個性的なアイテムと高い品質が話題を集め、海外から取り扱いたいという声もかかる期待の新事業だ。
使い方は自由自在!のロールメモ「memowrap™(メモラップ)」
こちらは多摩美術大学との「産学連携デザイン開発プロジェクト」で学生が発案し、見事商品化されたもの。食品包装用ラップのように、箱で紙を切って使うロールメモで、12メートルの紙を好きな長さに調整して使うことができる。
製造工程や微妙な箱のリサイズまで何度も微調整を重ねており、組み立ても手作りというこだわりよう。海外から声がかかるのも頷ける、クオリティーの高さだ。
職場の先輩・後輩にお願いをするときも、このメモでひと工夫すればただの付箋で伝えるより、気持ちが伝わるはず。成功率もアップするかも。
すべてのページを俯瞰できる 「accordion note(アコーディオンノート)」
名前の通り、長い紙を蛇腹状に折り畳んだノート。蛇腹を開けば、過去の記録をすべて俯瞰で見ることができる。ページはミシン目が引かれているので、切って使うことも可能だ。
写真を貼ってアルバムにしたり、アイデア帳として思考の流れを一覧したりするにも適している。シンプルで使い勝手が良いため、男性にも人気があるという。加工技術としては難しいものではないが、デザイン性の高さが商品としてのクオリティーを引き上げている。
こうした”ちょっとしたアイデア”によって、市場に価値あるアイテムが誕生するのだから驚く。これぞ、山櫻が考える「プラスラボ」の真骨頂だ。
企業理念を体現した”気持ちを伝える文房具”
プラスラボのコンセプトは、「日常に『うふっ』をプラスする」文房具。自分で持っていてうれしい、または人にメモや手紙として渡せば喜んでもらえるような文房具だ。
「基本は女性向けですが、作りやデザインが凝っている商品は男性にも購入いただいています。会社で男性が女性にメモとして渡すときに使っていただくケースも想定しています。弊社の企業ドメイン『出逢ふをカタチに』にもあるように、人に気持ちを伝える手助けになる商品を目指しています」(担当:大場さん)
プラスラボは、「封筒研究会」と称した社内のアフターサークルの活動がきっかけとなり、2011年に始まったブランド。さまざまな部署の社員が兼務で参加し、アイデアを出し合いながら商品を発案してきた。
昨今、紙離れしつつあるという声も聞くが、80年以上、紙と向き合ってきた同社の社員たちが、こうして愛情とアイデアを込め、”気持ちを伝える手段”として日夜、紙製品に新たな価値を創造している。