国際交流会議「アジアの未来」の晩さん会で安倍首相が演説し、アジアのインフラ整備に今後5年間で約1100億ドル(約13兆2000億円)を投じると表明。首相はアジアのインフラ需要が年間で100兆円に上る規模ということを指摘し、「日本はファイナンスの面でも大きな役割を果たしていく決意だ」と述べました。
アジア開発銀行(ADB)に協力し、出資能力を3倍にする考えを示したほか、政府と民間が組むことで各国へのインフラ整備支援を拡大する方針も表明。一連の支援は現在より3割増の総額約1100億ドル規模としました。また、日本らしい”質の高さ”を理念とし、技術協力や人材育成を重視する考えを強く示しました。
「アジアの未来」は日経新聞社と日本経済研究センターの共催。モンゴルやシンガポール、カンボジアなど各国からそれぞれ大統領や前首相、商業相らが参加しています。5月21日には企業経営者や学者も交え、2015年末にも発足するASEAN経済共同体(AEC)などをテーマに熱い議論が行われました。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Q演説では日本の”質”が強調されるなど、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への対抗がみられます。これまで6月下旬とされていたAIIBへの参加不参加の判断をさらに引き延ばす方針であることもわかりましたが、中国側からの反応はありそうでしょうか?
Aこの問題で直接にはないと思う。
ADBを主導している日本が、中国主導のAIIBに簡単には参加できないんだろうね。
もともと中国との関係が良好な、二階総務会長が習近平氏と会談して、安倍総理の親書を渡すなど、お互いに関係改善も図っているけど、国のメンツもあるから、そうそう簡単にはいかないだろうなぁ。
Q日本は後進国の発展にどれぐらいの額をどのような経路で支援しているのですか? 従来の3割増という総額は規格外なのでしょうか?
A最近は後進国とは言わず「新興国」などと呼ぶ。一般的には政府開発援助(ODA)を使って、外務省のルートで拠出するけど、援助の方法はさまざまだ。
ただ、ここでいう援助とは無償という意味ではないよ。民間の投資も含めて1100億ドルの投資をする、と考えた方がいいんじゃないかな。アジアの発展が後に日本に還元されると考えると、必要な投資といえるね。
ODAは毎年1兆円程度じゃないか? 数年前までは世界一の額を出していたけど、最近はその座も他の国に明け渡してしまった。アフリカなどには中国がどんどんと出してるしね。
(佐藤尊徳)
[参考:「首相『アジアに13兆円』 インフラ整備、5年で」(日経新聞1面 2015年5月22日)「成長マネー官民で連携 アジア投資銀を意識」(日経新聞3面 2015年5月22日)]
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