神奈川・あざみ野にある「四季芸術センター」。大学のような大規模な施設には、運営機能をはじめ、稽古場や衣裳部、図書室、食堂までが揃う。数々の名作を生み出してきた劇団四季の中枢を紹介しよう。
本館1F
四季を貫く創業者の言葉
「慣れだれ崩れ=去れ」
入口に近い場所に、連絡事項やスケジュールを貼り出すエリアがある。そこでひと際目を引くのが「慣れだれ崩れ=去れ」「一音落とす者は、去れ!」と劇団員の慢心を戒める訓示だ。この厳しさが、ロングラン公演の成功には不可欠なのだろう。
入り口付近のホール
良質な俳優を生み出す心臓部
充実した稽古場
センター内には、広さの異なる10個の稽古場がある。広いクラスの稽古場は2層吹き抜けの板張りで、音響・吸音効果に配慮した設計。劇場で使うのとほぼ同じサイズのセットを組めるので、本番と似た条件で練習できる。ほかに、反響調整機構付きの稽古場や、傾斜舞台での上演に備えるために床を傾斜させる機能を持った稽古場も。
取材中に、稽古場でレッスンが始まった。内容は、設定した拍数で息を吸ったり吐いたり母音の発声をしたり。私語はなく、表情は真剣そのもの。四季独自の呼吸法や発声法(「母音法」と呼ぶ)をここで身に着けるのだ。
ちなみに、レッスンの出席率は次年度の契約に影響するという。実力がなく努力も不十分な俳優は淘汰されていく。そう聞けば厳しいようだが、実績にかかわらず、努力そのものが一定程度、評価されるシステムでもある。
大稽古場
大稽古場の音響
60数年の歴史を刻む
ライブラリー&メモリアルルーム
ライブラリーには演劇関連の文献を約5,000冊所蔵。その一角には、創立メンバーらの遺影を飾るコーナーも。壁の一部には、65年に落成した代々木アトリエの床板を貼った。作品の理解やモチベーション向上を助ける施設だ。
メモリアルルーム
ちょっと寄り道
絶賛!全国巡演中
上演タイトルをアイコンにして全国の会場の位置に留めた日本地図。今どこで何の公演が行われているか、一目でわかるようになっている。四季は「文化の一極集中の是正」という浅利氏の理念の下、全国各地を巡演。これまでに訪れた街は500近くにもなる。専用劇場も東京だけでなく札幌、名古屋、大阪に設置。名古屋では劇場の移転拡大を計画していて、現施設より駅に近く、規模の大きな「名古屋四季劇場」を2016年秋にオープンする予定だ。
1,540枚のソーラーパネル
東日本大震災後は全国的に建物の省エネ化が進んだが、この芸術センターは2006年竣工ながら、設計段階から省エネ・創エネの工夫を取り入れている。例えば、トップライトや大きな窓など開口を多く取り、自然通風や採光の恩恵をたっぷり受けられるようにした。屋上には太陽光発電パネルを1,540枚設置。冬場晴天時は、発電分で館内の利用量を賄えるという。また、日中の照明利用を抑えるなど、運用面でも節電を意識している。
本館2F
有料マッサージ施設にも隣接
トレーニングジム
トレーナーが常駐し、最新鋭のマシンがそろうジム。中には劇団員の加藤敬二さんが自ら海外の展示会で買い付けてきたものも。テナントのスポーツマッサージ室にも隣接している。
トレーニングジム
華やかな舞台は一本の針から
床山室・衣裳室
かつらや衣装のプランニングから製作・加工・メンテナンスまでを一手に担う。配役が直前に決まるため、仕事は時間との勝負になることが多いそうだ。
マネキンの頭部が棚に並ぶ床山室には、人毛を使ったかつらを手入れするため、シャンプーのボトルもずらり。
衣装室は1階のトラックを横付けできる位置にもある。壁を開いて搬入出が可能だ。
床山室
衣裳室
パート練習・個人練習向けに
小稽古場・研究室
個人レッスン用にピアノや鏡、机を備えた個室が1・2階合わせて25室がある。また、10個の稽古場の中には、パート別の練習に使う小稽古場が2つある。窓が大きく外光がふんだんに入る山小屋風で、空調は気流を人に直接浴びせないよう、布製ダクトが天井付近にせり出した構造だ。
小稽古場・研究室
若手は格安料金!
メニュー豊富な食堂
食堂では日替わりで”家庭の味”を意識した料理を提供。代金は点数制で、購入代金が職位によって異なる。研究生や若い団員が安く食べられる仕組みだ。
食堂