実際どうなの? 地方創生と 観光のマッチング

2015.9.10

社会

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地方創生戦略が本格始動、柱のひとつに「観光」を据え、各市町村とも「特産品」や「伝統」、「自然」を売りモノにインバウンド招致に必死だが、死角はないのだろうか。

ノウハウのない自治体の頼みの綱は…

1兆円規模の予算が注入される地方創生戦略の根幹のひとつは「観光」で、全国の市町村は、国内観光客はもちろん、インバウンドの招致目指して”おらが町の観光資源興し”に血道を上げる。だが、単なる予算のバラマキで、大手旅行会社を主軸とした公共事業化、ゼネコン化、と憂慮する向きも。

地方の自治体には観光誘致やPRのノウハウなどない。すると大手旅行会社や広告代理店、総合研究所などに丸投げせざるを得ず、そこで彼らは、効率よく国から予算を獲得できる企画書を作成。官公庁側へのウケをよくするため、現場を知らない著名な大学教授や経済評論家を起用し委員会を設立。ここが主導となって「●×町観光産業推進プログラム」などと銘打った企画書を立案、予算をゲット。あとは旅行会社や広告代理店、総合研究所が巨額なコンサルタント料を頂戴する。

もちろん、観光誘致に真摯に取り組むところが大半だろうが、中には「日本型DMO」(別項参照)と謳いつつ、実態は美辞麗句だけのプランで、実効性の薄いものも少なくないという。

横須賀写真/米海軍横須賀基地

「インバウンド2000万人」のキーワード「DMO」

DMOとは「Destination Management Organization」で、要するに「観光地をマネジメントする仕組み」のこと。

国家予算を背景にしたプロジェクトの場合、予算消化ありきが前面に立ち、あとは関係官庁や自治体、業界、地域住民などによるパイの奪い合いに陥り、結果的にほとんど地方の発展に寄与せず……という姿が日本の伝統芸能だった。DMOはこうした弊害を改め、前述した関係各位が有機的に連携、縦割りをなくして地域全体を網羅した着地型観光のマネジメントを主導するというもので、欧米では一般的なスキームだが、日本では地域創生を機に本格化し始めている。

注目!観光に軸足を置く自治体・横須賀市

米軍基地を”負のインフラ”として忌避する自治体も少なくないが、むしろ差別化を図る上での”奇貨”ととらえ、観光資源化しているのが神奈川県の横須賀市。いわゆるミリタリー・ツーリズムの筆頭で、「町おこし」に積極的な、あの小泉進次郎代議士のお膝元でもある。

同市観光企画課や市の商工会議所、京浜急行の3者は「横須賀集客促進実行委員会」を設立、前面に”ミリタリー”を打ち出し、自衛隊や米海軍のイベント情報を発信。ご当地グルメ、「ヨコスカネイビーバーガー」や、旧日本海軍直伝の「海軍カレー」も今や全国区だ。また、USドルで買い物や飲食ができる「ドル旅まつり」 の定期開催は、ほかでは見られない試みといえるだろう。

外国人観光客の増加は歴史問題すら変えるかも

 

ここ数年で、外国人の数が増えてきたのが如実に感じられる。スキー場でも地方の寺院でも、どこに行っても。国内の人口減が現実味を帯びて内需が期待できない以上、インバウンドで外貨を稼ぐというのは悪いことではない。

確かに、銀座に観光バスが並び、中国人が道に座りながら、たむろしているのを見ると個人的には景観を損なうし、銀座のイメージが悪くなるとは思うが、そんなことは言っていられない。銀座のあるお店は売上の80%が中国人によるものだそうだ。

これは日本にとってはチャンスだ。周りを海に囲まれてどの国とも国境を接していない日本は、ただでさえ遠い国だが、ホスピタリティの高さでリピーターを獲得し、文化を理解してもらえば歴史問題もそのうち風化するのではないか。

後々必ず外国人労働者を受け入れなければならない時期が来ると予想されるので、その前に慣れておくということもある。後は、民泊を受け入れやすくするなど、余計な規制を取り払うことも急務だ。