2016年1月からのマイナンバー制度の運用開始に伴い、さっそく企業は従業員の番号を集めはじめている。だが、国家の情報社会の基盤に関わる大事な制度にもかかわらず、国の周知が甘く、否定的なメディアもあるなか、いまだ国民の理解は十分ではない。「マイナンバー」迷子になっている人のために、5つのポイントに絞って基本を解説しよう。
個人情報を管理される社会から自分で管理する社会へ
「マイナンバー」とは、税や社会保障、災害対応に使用することを目的に、国が国民一人ひとりに交付する12ケタの番号。実際に社会生活を便利にするのは、番号自体ではなく、「個人番号カード」のICチップに搭載される「電子鍵」による「公的個人認証」の活用だ。
「公的個人認証」は、要するに官民のオンライン手続きにおいて本人であることを公的に証明するもので、コンビニでの住民票の写しや印鑑登録証の取得、税の電子申告、金融機関での口座開設や金融取引時の本人確認にも利用でき、キャッシュカードやクレジットカード機能を個人番号カードへ一体化することも検討されている。このように、マイナンバー制度の最大の目的は情報社会の基盤整備であって、メディアがあおるような脱税防止効果は二の次だ。
また、マイナンバーは法律上、一般の個人情報よりも厳格な取扱いが求められているが、実質的には人に見られても何も起きないし、自分で覚えておく必要もない。意図的な漏えいや、不正取得などには当然重い罰則はあるものの、この辺がセキュリティーに関して誤解を生んでいる部分なので、ここでしっかり解消しておこう。
マイナンバーで恥をかかないための基本情報5
◇通知カード
氏名、住所、生年月日、性別(基本4情報)、マイナンバーが記載されたカード。住民票を有するすべての人に配布。
◇個人番号カード
申請すると、2016年1月以降に交付されるカード。ICチップが内蔵されているが、カードの券面にある基本4情報と顔写真以外の個人情報は登録されていない。
◇電子鍵
個人番号カードのICチップに搭載される機能。ICカードリーダーでの読み取りとパスワードを併用することで、本人確認が可能。パスワードは、個人番号カードを受け取る際に自分で設定。
◇公的個人認証
電子鍵によって行う本人確認の方法。利用者証明のほか、住基カードと同様に送付文書に電子署名を添付可能だ。「マイナポータル」へのログインや、国税電子申告・納税システム(e-Tax)など一部の行政手続きで使用することが考えられるが、署名検証権限が民間企業へも開放されることから、広く利用されることが期待されている。
◇マイナポータル
個人番号カードでネット上に開設可能な、自分しかアクセスできないホームページのようなもの。行政機関間での自分の情報のやり取りの履歴を閲覧できるほか、自分に必要な社会保障制度について行政機関からお知らせが届く機能を搭載。また、今後は引越時や相続時のワンストップサービスや、税や年金などの公金を電子決済できるようにする構想も。2017年1月から運用開始予定。