若者消費が変わる バブル世代を親に持つ子どもたち

2017.12.20

経済

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アベノミクスによる景気回復は、「いざなぎ景気」を超えて戦後2番目の長さになるといわれ、日経平均はバブル崩壊後の高値を更新し高値圏で推移している。一方で、その影響が消費に及んでいないことは誰の目にも明らか。ところが、「嫌消費」といわれてきた若者世代に変化が起きているという。これを知らないと消費者意識を読み違えた企業などは、今後痛い目にあうかも?

現在の常識は“若者悪玉論”

政府によれば、日本経済は目下、戦後最長の好景気だと自画自賛。2012年12月から始まった現在の好景気は、2017年12月の段階ですでに5年1カ月にも及ぶという。これまで戦後最大の好況だった高度経済成長期、つまり「いざなぎ景気」(1965年11月~1970年7月)の4年9カ月を上回る快挙だ。

しかし、足元では「給与が増えた」と実感するサラリーマンは多くない。それもそのはずで、厚労省の毎月勤労統計調査を見ると、労働者全体の実質賃金アップ率は、前年の同じ月と比べても、この一年、ゼロ%ラインを上下するばかり。「10年後には所得は2倍」と時の政権が宣言した1960年代の高度経済成長とは、似て非なるものなのだ。

その原因として、「成熟社会となり、買いたい耐久消費財が無い」「少子高齢化で、そもそも消費を下支えする若者が減っている」「将来の不安からムダ遣いを慎み、貯蓄に勤しむ」などが指摘されて久しい。本来、旺盛な消費行動で経済の牽引役を果たすはずの「若者」に元気が無いのが、そもそも大問題、と指摘する向きも少なくないだろう。

要するに「最近の20代は、外にも出歩かず、飲みにも行かず、異性にも興味を持たず、ただただスマホにご執心」という、“若者悪玉論”だ。

若者を「嫌消費」とするのはステレオタイプ?

これはある意味で的を射ており、現にこれを裏付けるデータが、これまでにも政府機関や各組織、各メディアなどによって提示され警鐘を鳴らし続けているのは、先般ご承知のとおり。

しかし、先ごろ三菱総合研究所(三菱総研)が提供する「生活者市場予測システム (MIF)」から出された報告書によれば、こうした若者に対する見方は、ややもするとステレオタイプになりかねない。実は20代の消費行動は、ここ1、2年の間に、限定的ながらも劇的に改善しているという。

ちなみにMIFは、三菱総研が2011年から毎年行なっている独自アンケート(20~69歳の日本人3万人を対象、価値観や生活意識、消費行動に関し計2000設問)と、同じくMROC(マーケティング・リサーチ・オンライン・コミュニティーズ。女性とシニアを対象に衣食住をテーマにしたディスカッションでデータ収集。2012年開始ですでに女性約51万件、シニア約72万件のデータ量を誇る)の、2つのデータベースが基になっている。

そして今回は、ここから20代約5000人を抽出、その意識の変化を調べた結果、最近の若者像は、これまで当然のように思われていたものとはかなり異なっていることがわかったのだ。

不安はあっても意欲が回復

それでは具体的に見ていこう。まず、「若者の将来への不安意識」に関して。2011年と2017年の20代の意識を比較すると、「高齢化によって医療・福祉・年金などの面で財政が悪化」に不安を抱く率は、それぞれ50%と46%。また「少子高齢化によって経済成長が止まる」と考える者が、同じく42%と41%。

2項目とも両者にはそれほど数値的に変化は見られない。ところが、「景気低迷が続き高い失業率や就職難が恒常化」という項目については、前者の55%に対し後者は何と24%と大幅に減っている。

また、若者の消費行動や交際を見ても、「クルマに興味がある」と答えた割合は、2011年の20代は37%なのに対し、2017年の20代は45%。「クラフトビールに興味がある」と答えた割合も、同39%に対し42%とわずかだが上昇している。

同様に、「海外旅行頻度(年に1回以上渡航)」は、前者の10%に対し14%、「国内旅行(宿泊)」は前者の50%に対し後者は56%を弾き出した。分母は小さいものの、海外旅行に関しては単純計算で4割アップに相当する。

一方、「5年以内の結婚予想」という項目では、前者が35%であるのに対し後者は36%。一見それほど違いが無いが、実は、2015年まで右肩下がりで29%にまで落ちていた。ところがその後2年で36%まで回復したのだ。
同様に、「交際している異性の有無」を聞くと、前者30%に対し後者は31%。こちらも前述と同様、2015年が23%と最低で、その後2年で急上昇を果たしている。

バブル世代を親に持つ子どもたち

ではなぜ、ここ1、2年で20代の消費行動は好転し始めているのだろうか。ひとつには、東日本大震災に対する自粛ムードが薄れてきた点が挙げられる。

しかし、それ以上に注目なのが、バブル世代の両親を持つ子どもたちが、いよいよ20代の仲間入りを果たしたという点だ。

1986年 ~1991年 のバブル景気時代に大学を卒業し社会人となった世代は、現在の40代後半~50代前半に相当する。ちなみに、1986年当時の大学新卒者は「新人類」と呼ばれ、それ以前の世代と比べて消費行動は旺盛、「海外旅行、クルマは当たり前」の若者だった。

20代前半でバブルを経験した彼らは、その後日本経済が低迷するなかでも、消費を牽引する中核としてマーケティングの注目を集めていた。彼らは30歳前後で結婚、1990年代半ば頃に子どもを持つ、というのが一般的で、その子どもがいよいよ成人式を迎える年代になったのだ。

「親の背中を見て子は育つ」の格言ではないが、こうした子どもたちは、当然ながらバブル時代を謳歌した親の生活パターンをかなり受け継いでいる。となれば、消費に関してもポジティブであっても不思議ではないだろう。

マーケティングの際はご注意を

一方、彼らよりも少し前に生まれた世代、現在20代後半~30代の“若者”となると、少々趣が異なる。バブル崩壊間もない1993~2005年は有効求人倍率が常に「1」を下回るという異常事態で、「就職氷河期」と呼ばれた時代だ。

1997年のアジア通貨危機や、不良債権問題による金融機関の破綻など、日本経済を取り巻く環境は、まさに“最悪”。その後、2000年代半ばに景気は多少持ち直すものの、2009年のリーマン・ショック、そして2011年の「3・11」で再び暗澹とした経済状況に陥ってしまう。日本にとっての“失われた20年”だ。

この世代は、まさに、物心がついた頃から不景気で、就職活動も厳しい時代。「とにかく節約、貯蓄」が当然の姿だったはずだ。そして、これに輪を掛けるようにケータイ、そしてスマホが普及。昼飯を削っても電話料は死守する光景はむしろ普通であり、これでは「旅行」「クルマ」「居酒屋」に関心が及ぶはずがなかったのである。

三菱総研による“驚き”の研究報告でわかってきた若者の消費意識の変化。「消費に無関心」というステレオタイプを前提にマーケティングや商品開発などを行なっている企業は、もしかしたらミスマッチに陥るかもしれない。

ただ、マーケティングを若者にシフトする際に念頭に置いておきたいのが、こうした新しい世代はスマホを使いこなす達人であり、関心のある商品やサービスに対する情報収集に秀でていること。選択に関してはある意味、前の世代よりもシビアなのでご注意を。