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[東レ]身につけるだけで身体の状態がわかる 生体情報を読み取る機能素材「hitoe」が誕生

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「東レ」は着るだけで生体情報の連続計測を可能とする機能素材「hitoe」を実用化した。開発担当者に、背景にあるこだわりや開発の経緯を語ってもらった。

着るだけで生体情報を可視化できる

近年、日本でも自身の活動を記録する活動量計の存在がメジャーになってきた。以前は万歩計のように歩数を計るものが主流だったが、今では消費カロリーを表示するものやダイエットをサポートしてくれるもの、睡眠リズムをコントロールできる製品まで、目覚ましい進化を遂げている。そんななか、「東レ」から活動量計の枠を越えたまったく新しい素材が開発され、話題を集めている。それが、着るだけで生体情報の連続計測を可能とする機能素材「hitoe」だ。

[政経電論] 東レ 機能素材「hitoe」イメージ動画

生体情報を読み取るアイテムというと、腕に巻き付けるバンド型や衣服に装着する形が多かったが、このhitoeは約10cm四方の布。この名刺サイズほどの小さな布が、人の心拍数や心電波形を読み取るのだ。記者発表では、hitoeを使用した生体情報計測用ウェアが発表された。それによると、将来的にはhitoeから読み取った電子信号を瞬時にスマホやPCなどに転送し、管理できるようになるという。

「東レ」のナノファイバーと特殊コーティング技術がカギに

「hitoe」とは、human(人間)、intellegence(情報・知能)、to(~のほうへ)、expand(拡張する)の頭文字を合わせたもの。加えて、人のつながりが新たな命を運ぶという願いと、一枚の布、単衣(ひとえ)の無限の可能性という意味も込められている。今回はhitoe開発の経緯について、「東レ」の繊維加工技術部東京技術室長の小田直規さんに話を聞いた。

「もともとNTTグループの研究で、導電性高分子 PEDOT-PSSをベースとする『繊維導電化新技術』を商品化できないか?という流れがあり、繊維素材などを得意とする弊社が技術提供を行うことになりました。弊社が先端繊維材料『ナノファイバー』と、そこにPEDOT-PSSを含浸させる技術を提供した形になります」

ナノファイバーは繊維径700nm(ナノメートル)という超極細のため、肌に接する面が多く、より正確な電気信号を取ることができる。また、PEDOT-PSSを繊維に高濃度に含浸させる点にも非常に苦労したという。

「導電性のある物質はサラサラしているため、布に固着させるのが非常に難しいのです。弊社の技術を結集した特殊コーティング技術によって、PEDOT-PSSを高含浸し、樹脂の連続層を形成することによって、生体信号の高感度な検出を可能にしました」

東レhitoe2

スポーツをはじめさまざまな分野で応用の可能性

今回発表された生体情報計測用ウェアは生地にhitoeが3枚付けられており、右肩の部分にそれらの信号を読み取り、転送するコネクタが配されている。このインナーにも大変な工夫が見てとれる。

「生体信号を読み取るためには、常にhitoeが肌に接している必要があります。そのため、ストレッチ性と着心地を重視した着圧制御素材「プログレスキン」(※)を応用した生地を作り上げました。ゆるやかな力で一定の圧力をかけながら、パワーロスがないような素材なので、スポーツ時にも最適です。また、コネクタ部分も約25グラム程度と、付けていることを意識しないほどの軽さです」

※「プログレスキン」

小さな力でもよく伸び、伸びた後にしっかり縮んでたるまないことで、快適なフィット感を維持する「運動追随性」という新しい観点を導入したスポーツアンダーウエア用ストレッチ素材。

これまでもスポーツの分野で生体情報を計るツールは存在したが、パフォーマンスに影響を与えるような”付けてる感”を感じざるを得ないものや、そもそも生体信号の読み取りの精度に疑問が残るものが多かった。hitoeの革新性はそれらを同時に解消した点にあり、今後はまずスポーツの分野での応用を視野に入れているという。さらに、その先にもさまざまな分野に応用できる可能性を秘めている。

「スポーツで言えば、パフォーマンス中の心電波形を読み取ったり、筋電の動きを逐一チェックしたりと、スポーツ科学の面で多いに活用することができます。また今後、超高齢化社会を迎える日本ですから、医療や介護の観点から見てもさまざまな応用ができるようになるはずです」

hitoeの開発に際して、最も重要視したのが「一般の人の生活に”すっと”入っていける手軽さだった」と小田さん。今度、hitoeがどのように私たちの生活を豊かにしてくれるのか、その動向から目が離せない。