2016年6月には1万5000円を割り込んでいた日経平均株価が、気がつけば2万3000円を大きく超える水準になりました。それに伴って多くの銘柄が値上がりし、まとまった資金が無いと買えなくなっています。しかし、その一方で、依然として安値に放置されている銘柄も少なくありません。予算的には手頃ですが、果たしてそれらを買っても大丈夫なのでしょうか。少額から買える銘柄に注目する際に、最低限チェックしておくべきポイントをまとめました。
「安かろう、悪かろう」の早合点に注意
2017年は日経平均株価の上昇が目立った一年となりました。そして、全体的に株価が右肩上がりを描いた結果、主要な銘柄の中には予算的に簡単には手を出せないものが増えてきました。
通常、それぞれの銘柄には1単元と呼ばれる購入単位が定められています。1株当たりの株価が上昇したことで、100万円単位の資金を用意しなければ買えないケースも出てきているのです。
例えば、ユニクロを展開するファーストリテイリングの株価は2017年12月中旬の時点で約4万5000円で、同社の1単元は100株。最低でも「4万5000円×100株=450万円」の資金が必要となってきます。
もっとも、こうして文字通りの“高嶺の花”と化す銘柄が増える一方で、1株当たりの株価が500円以下になっているものも少なくありません。1単元が100株なら、5万円以下の資金で購入できるわけです。
もしかしたら、普段から投資に慎重な人は「それって、いわゆる安かろう、悪かろうでは?」と思ったかもしれません。確かに、安値に放置されている銘柄の多くは業績不振に陥っていたり、不祥事を起こしていたりと、それなりの理由があるケースが多いのが実情です。
また、極端に株価が安くなっている銘柄には、“仕手株”と化しているものもあります。うかつにそういったものに手を出すと、株価の急激な変化に翻弄されかねません。
仕手株
一部の投資家によって、意図的に株価を操作される銘柄のこと。彼らは仕手筋と呼ばれ、ウワサを流しつつ、資金を投じて株価を急上昇させて一般の投資家を追随させ、一足先に利益を確定して逃げ去る。市場に出回っている株券の数が少なくて株価が極端に安い銘柄が標的になりやすい。仕手筋が売り抜けた後は、株価が急落する傾向になりがち。
とはいえ、5万円以下の資金で購入できる銘柄のすべてが危ういわけではありません。知名度があまり高くない企業など、市場の中では地味な存在で投資家の注目が集まりにくく、結果的に安い株価のまま見過ごされているというケースも少なくないのです。
5万円以下で買える株は業績と出来高のチェックが必須
では、そういったお買い得な銘柄はどうやって見つけ出せばいいのでしょうか? まず、業績面の裏づけがあることが大前提となってきます。具体的に言えば、連続増益を遂げていることが理想です。
連続増益
その企業が本業で稼いだ営業利益や、別の稼ぎも含めた経常利益が、前々期、前期と連続して前期比増を達成している状態。株価は将来を先通りして動くので、前期の実績と今期見通しが連続増益となるパターンが望ましい。もちろん、前々期から3期連続の増益ならもっといい。営業利益、経常利益とも増益であるのが望ましく、売上高も拡大しているのが理想的。
さらに、仕手株のように普段はあまり活発に取引されていない銘柄は、株価が急激に変化しやすいので注意が必要。チャートを見れば出来高がすぐにわかるので、常にそれなりの出来高 がある銘柄を選ぶのが無難です。
出来高
その銘柄において、市場で売買が成立となった株数。出来高が少ないということは、売買が活発に行われていない状態を意味する。株価が動く前に出来高が急増しやすい点にも注目したい。出来高の変化が、株価上昇・下落のエネルギーを計る上でのバロメータだと言われている。
無配が続く企業には要注意! 優待があれば少しは安心だが…
言うまでもなく、企業は利潤を追求することが一番の目的。特に市場で株式を公開して広く一般の投資家から出資を募っている上場企業は、株主の期待に応えるために業績を伸ばさなければなりません。
きちんと儲けている企業なら、今は株価が安かったとしても、先々で改めて評価される(株価が上昇する)可能性を秘めていると言えるでしょう。利益の一部を配当として株主に還元していたら、それを受け取りながら気長に評価が高まるのを待つのも一考です。
これに対し、同じく株価が低水準に位置していても、ずっと業績がパッとせず、無配が続いている企業は避けたほうが賢明でしょう。攻めの経営(設備などへの積極投資)が不可欠な新興企業ならまだしも、それなりの社歴があるなら、配当を支払うのが上場企業としての使命とも言えそうです。
無配
業績不振で赤字に陥るなどの理由から、配当を支払えない状態のこと。通常、企業は法人税を差し引いて残った純利益(税引き後利益)の一部を株主に配当として還元する。ベンチャー企業の場合は、まずは利益を成長のための投資に充てることを優先し、事業が軌道に乗ってから配当を支払い始めるというパターンが多い。
ただ、化粧品・健康食品通販のフォーシーズホールディングスのように、無配ではあっても株主優待は実施しているという「5万円以下銘柄」も存在しています。同社の場合、ここ数年の業績は悪くないので、配当よりも優待に力を入れているのかもしれません。
また、紳士用シャツの大手メーカーである山喜や、外食チェーン運営のアスラポート・ダイニングなど、配当と優待の両方をできる「5万円以下銘柄」もあります。インカムゲイン(配当と優待)とキャピタルゲイン(値上がり益)を目当てに、中長期的なスパンで保有するのもひとつの手でしょう。
余裕資金が乏しいなら端株サービスを利用する手も!
投資に充てられるまとまった資金が無いと、株価が安い銘柄しか選択肢がなくなるわけではありません。証券会社によっては、端株でも買い付けられるサービスを提供しているところがあります。
端株
1単元未満の株のことで、100株単位の銘柄なら100株未満を意味する。本来、1単元に達しない株数での取引は不可だが、端株でも購入できるサービスを導入している証券会社もある。ただし、そういった金融機関でも、すべての銘柄を端株から購入できるわけではなく、対象が絞られているので要確認。
大和証券の「株式ミニ投資」、SBI証券の「S株」、カブドットコム証券の「プチ株®」、マネックス証券の「ワン株」といったように、サービス名は各社で異なるものの、自分の予算に応じて少額から株式を購入できる点は同じです。さらに、SMBC日興証券の「キンカブ(金額・株数指定取引)」のように希望の株数だけにとどまらず、金額を指定して株式を購入できるサービスもあります。
いずれのサービスも継続的に同じ銘柄を端株で買って1単元以上に達すれば、株主優待などの権利を獲得できます(全株主に優待を実施している会社もある)。配当については、端株の段階から保有株数に応じた金額を受け取ることが可能です。
とにかく思い立ったら吉日で、投資は少しでも早いうちからアクションを起こしたほうが有利になってくるもの。そうやって時間を味方につければ、たとえ少額ずつの投資であっても、長い年月を通じて結構な資金を投入できますし、相応の運用成果も期待できます。