経済

ブレグジットで今後何が起こる? 株価・為替と時事の関係

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2016年6月23日にブレグジット(イギリスのEU離脱)が可決されたことで、翌24日は金融市場がえらいことになった。ポンドが急落し、円が急騰。日経平均は一気に1286円下落し、まるで冷静さを失った。でも、ちょっと落ち着こう。投資を語る連載の端くれとして、(分析力は無いが)今後何が起こるのか一つひとつ見ていくことにする。

まさか!イギリスのEU離脱に金融市場は大混乱

歴史的転換となった国民投票から明けた6月24日、為替市場は急激にポンドの売りが進み、ポンド/米ドルは一気に9%も下落(1.45→1.32米ドル)、1985年以来の安値を記録した。さらに米ドル/円高も一時99円台に。

これは、残留派筆頭のキャメロン英首相も予想しなかったネガティブ・サプライズによって起きた瞬間的な反応で、今後、広範囲に影響が出てくるはず。金融市場ではリーマン・ショックに匹敵する金融危機が訪れるのではないかという声もささやかれているが、実際どうなのだろうか。

確かに世界的な影響はあるに違いないが、少なくとも脱退までに2年はかかる。起こり得ることを見ていこう。

ブレグジット翌日に起きた異常事態

素人目にも24日のポンドの急落はすごかった。投票時間締め切りの日本時間6時時点に160円だったポンド/円は、拮抗しつつも大勢が判明する昼過ぎまでのたった6時間で133円まで急落。リスク回避から米ドル/円が買われ(円は避難によく使われる)、一時100円台を突破。日経新聞による各証券会社ストラテジストの分析では、円高傾向はしばらく続くとみられている。

24日は先物市場も過熱。大阪取引所は、日経平均先物が下がり続けたことを受けて、売買を一時停止するサーキットブレーカーを発動。これまで日経平均先物においてサーキットブレーカーが発動されたのは、「アメリカ同時多発テロ(2001年9月)」「リーマン・ショック(2008年9月)」「東日本大震災(2011年3月)」など、社会的な惨事が起こったときばかり。今回のブレグジットもそれだけ大きな出来事だといえる。

さらに、24日にストップ安を記録した普通株は74銘柄もあり、日経平均は前日比1286円安、過去8番目の下落幅を記録した。その後の反発も勢いがなく、いつまた株安の傾向に向かうかは油断できない。

キーワード24日のGoogleトレンドは、「EUとは」「為替」「株価」「円高」と経済キーワードが上位にランクイン。異質な並びが、ブレグジットの異常さを物語る。

今後の情勢が金融市場に与える影響

ざっくりとだが、ブレグジット決定直後に金融市場に起きたことはこんなところだ。まだまだ影響は限定的で、今後じわじわと広がってくることが予想される。社会的な変化に連動するはずだが、各メディアを参照すると、いくつか道が見えてくる。

まず挙げられるのが、イギリスに追随する国が出てくる懸念。すでにフランスやオランダ、イタリアなどの極右政党からは離脱を問う投票を求める声が挙がっているという。一方、EUに残りたいスコットランドは、さっそくイギリスからの独立を画策しているし、残留を支持していた北アイルランドもイギリス自体からの独立へ向けて動く可能性もある。

そんななか、ドイツやフランスなどEUを牽引する国々は、報復的にブレグジットの成功を拒むことも考えられ、ヨーロッパだけを見ても、簡単に情勢が安定するとは思えない。

政治的な不安感によってリスク資産への投資は抑えられ、浮いた資金は、イギリスでの事業比率が低く、安定した収入が見込める建設や不動産、小売など内需関連銘柄に流れる可能性がある。円高による利益増もそれに拍車をかけることになるだろう。

さらに、7月にあるのではないかと噂されていたアメリカの利上げは、さらに先送りされることが予想されている。要するに、アメリカの景気がしばらくは安定しないということだ。利上げがないとなると、このまま円高が定着。

円高は輸出が多い日本の大手企業にとって非常に重い足かせだ。業績は上がらず、日本全体の上値も重くなるだろう。輸出企業への投資がしづらい状況が続くことは、一定期間覚悟しなければならないかもしれない。

ただ、金融政策でいえば、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は各国の中央銀行と連携して市場の混乱を回避する旨を強調しているし、日本も急激な為替変動に対する準備は国民投票以前からしていて、財務相・麻生大臣、日銀・黒田総裁は、「流動性供給の手段を用いる用意がある」と即日声明を発表。積極的な為替介入の意思も示した。市場の安定に向けた動きがしっかりとられている点は少し安心できる。

イギリスは一刻も早く貿易協定を

移民の問題やテロの脅威など、EU離脱を選択する理由は理解できても、金融市場的にはマイナスが多いブレグジット。いずれにしても、”安心できない”ことが経済不安をあおっている状況に変わりはないので、イギリスは一刻も早くEUをはじめとする他国との貿易協定を確立して、経済に安心感をもたらすべき。そのためにもEU各国はイギリスを拒絶せず、協力的な体制を作ってほしい。

今回のような歴史的な出来事をイチ投資家が心配し過ぎても始まらないとはいえ、金融を通して世界の流れを学ぶチャンスはそうそうあるわけではない。運用に結びつけるのは難しいかもしれないが、ニュースを見ながら変化を感じ取るくらいはしたいものだ。