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絶縁から一転、固い握手で関係改善 トルコ・ロシア関係の裏事情

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トルコ軍機がロシア軍機を撃墜したことで、断絶状態となっていた両国の関係が劇的に改善している。欧米との対立を辞さない2人の強権的な指導者の固い握手は、一体、世界情勢をどのような局面に誘うというのか。

トルコとロシアの関係が改善 重要なのはトルコのクーデター未遂事件

2016年8月初旬から、トルコとロシアの関係が劇的に改善している。その象徴となるのがトルコ・ロシア首脳会談だ。

トルコのエルドアン大統領が8月9日、ロシアを訪問してプーチン大統領と会談し、昨年11月にトルコ軍機がロシア軍機を撃墜したことで断絶状態となっていた両国関係を全面的に回復させることで合意した。欧米との対立を辞さない2人の強権的な指導者の固い握手は、関係改善への強い意欲を内外に印象づけた。  会談は、プーチン氏の故郷のサンクトペテルブルクで行われた。撃墜事件後初めて顔を合わせた両氏は、握った手を大きく上下させ、少しほほ笑んだ。

トルコで7月中旬に起きたクーデター未遂事件後、エルドアン氏が国外に出るのは今回が初めて。会談後の記者会見でエルドアン氏は、プーチン氏のことを「私の親愛なる友人」と呼んだ。  エルドアン氏が6月末、撃墜で死亡した乗員の遺族に謝罪して以降、両国は急接近している。共に欧米との関係悪化が背景にある。  会談では、ロシア製「アックユ原発」の建設再開や、トルコを経由して南欧にロシア産天然ガスを輸出するパイプライン「トルコ・ストリーム」計画を実現させる方針を確認した。プーチン氏は、トルコ側の要望が強かったロシア人観光客向けチャーター航空便の再開を約束した。

一方、内戦が続くシリアを巡っては、立場の隔たりは大きい。テロ対策など、可能な分野から協力を進める方針だ。(サンクトペテルブルク=春日芳晃、駒木明義)

トルコ・ロシア関係が改善した構造的要因として、「朝日新聞」は、トルコとロシアの欧米との関係悪化をあげている。確かにその通りであるが、そもそもロシアと欧米の関係は2012年のウクライナ紛争以後、ずっと関係が悪い。重要なのは、7月15日に発生したトルコのクーデター未遂事件だ。

この事件を鎮圧したエルドアン大統領は、「自分が間一髪で死を免れたのはアッラー(神)のおぼしめしだ」と言い、そうとしか思えないような神憑り状態になっている。そして、”推定有罪”の原則に立って、逮捕、拷問、殺害などを行っている。このようなエルドアン大統領の行状に欧米は愛想を尽かしている。このままの状態が続くと、欧米からトルコへ制裁が加えられる可能性は排除されない。

クーデター鎮圧を最大限利用するプーチン大統領の思惑

このような状況を、エルドアン大統領がクーデター鎮圧に成功した直後から最大限に利用しているのがプーチン大統領である。

ロシアのプーチン大統領は(7月)17日、トルコのエルドアン大統領に電話し、民主的に選ばれた政権を不法に転覆させる試みは断じて容認できないというロシアの立場を伝えた。市民を含む多くの犠牲者が出たことには哀悼の意を表明した。ロシア大統領府が発表した。両大統領はまた、近く直接会談するという合意を再確認した。プーチン氏は、ロシア人観光客の安全確保を要請した。

プーチン氏は6月末、昨年のロシア軍機撃墜事件を機に悪化していたトルコとの関係回復に乗り出していた。今回の電話は、路線に変更がないことを確認する意味がある。(7月17日「朝日新聞デジタル」)

プーチン大統領は、2015年11月24日、シリアとトルコの国境地帯でトルコ軍機がロシア軍機を撃墜した事件とトルコ側の事件処理に強い不満を抱いている。確かに両国関係は正常化したが、プーチン大統領はエルドアン大統領を軽蔑している。

そのプーチン大統領が、このタイミングで明示的にエルドアン政権を支持し、故郷のサンクトペテルクに招待するという歓待をしたのは、中途半端なクーデターにより、トルコを実効支配できる政府がなくなり、その隙間に「イスラム国」(IS)やアルカイダなどのイスラム原理主義者、世俗主義的な軍国主義者、クルド人の民族主義者などによる内乱が生じ、中東地域が著しく不安定になることを懸念したからである。

ロシアは、シリアを安定させるためにアサド政権を支持しているが、それと同じ論理をエルドアン政権に対して適用しているに過ぎない。エルドアン大統領が今後、どれだけ粛軍を進めても、世俗主義的なトルコ軍が、本質においてはイスラム原理主義者であるエルドアン大統領を心の底から支持することはない。エルドアン大統領は、今後、常にクーデターの恐怖に怯えながら、政権を運営していくことになろう。

国同士のエゴのぶつかり合いが外交だ

戦闘機まで撃ち落とされたロシアがトルコに接近するのは、欧米との関係が冷え切って、経済的にもかなり窮地に陥っていることが主因だと思っていた。同じ反欧米になったトルコを味方に引き入れ、欧米を牽制するということもあるのだろうが、やはり外交というのは奥が深い。

しかし、心からの友好というわけでもないから、利害関係が一致しなくなったら、一気に関係は冷えたものに変わることになろう。というか、外交に友情など有り得ない。いつでも、それぞれの国益と為政者たちの権力基盤強化しかなく、国同士のエゴのぶつかり合いだ。よく外交は喧嘩だというが、本当にそうだ。だからといって、軍拡をして、武装していくという議論にならないでほしいと夙に願っている。