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経済誌(紙)に見る世界企業の評価と日本の凋落

2016.11.10

企業

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毎年1回発表される世界的経済誌(紙)のフィナンシャル・タイムズ、フォーチュン、フォーブスの企業ランキング。企業の並びは各誌異なるが、それは「指標」が違うからだ。それぞれ何を意味しているのだろうか? 最近のランキングを見る限り、どうやら日本企業に危機が迫っているようで……。

指標で変わる「世界一の企業」

「フィナンシャル・タイムズグローバル500」とか「フォーチュン・グローバル500」、「フォーブス500」といったランキングがある。これらは、いずれも世界中の企業をランキングしたもので、毎年1回発表される。

言ってみれば”世界を牛耳る企業のランキング”であり、どこが世界で一番強大な、あるいは、高く評価されている企業なのかを並べたものだ。いかにも数字と順位付けが好きそうなアメリカやイギリスらしい。

これらのランキングは、取得できるデータの関係からか、いずれも基本的に株式公開企業を対象にしたものだが、それぞれのトップ企業は雑誌によって異なっている。例えば2016年版で見ると、このようになっている。

■ フィナンシャル・タイムズ・ランキングのトップ企業:アップル(米)

■フォーチュン・ランキングのトップ企業:ウォルマート(米)

■フォーブス・ランキングのトップ企業:中国工商銀行(中)

世界一の企業が、雑誌によって異なるというのも妙な話だが、これは、それぞれの雑誌が採用している「指標」が違うからである。

■フィナンシャル・タイムズ:株式の時価総額

■フォーチュン:企業収益(売上高+受取利息+受取配当金)

■フォーブス:売上高と利益、資産、時価総額に基づいて独自に計算

このため、フォーチュンのランキングでは、売上高も大きいが、仕入れも大きい(利益はそれほど大きいとは限らない)小売業や製造業が上位にランクされてくるし、フォーブスのランキングでは、資産や受取配当、利息が大きい金融系の企業の数が増えてくる。そしてフィナンシャル・タイムズでは株価が大きな要素を占めるだけに、利益やその成長性が大きいと考えられるITやバイオ・医療系の会社の評価が高い。

2000年以降の時価総額トップ52000年以降の時価総額トップ5(フィナンシャル・タイムズ、各年3月末日の時価総額に基づく順位)

バブリーな国の企業は要注意

ただ、世界的に見て誰もが知っている企業、皆がグローバルトップだと認めるような企業は、どの統計でも上位にランキングされている。

(以下、フィナンシャル・タイムズ=FT、フォーチュン=FO、フォーブス=FB)

■アップル(米) FT:1位、FO:9位、FB:8位

■エクソンモービル(米) FT:2位、FO:6位、FB:9位

すべてのランキングでひと桁に入っているのはこの2社だけで、ほかはこんな感じだ。

■バークシャー・ハサウェイ(米)※1 FT:3位、FO:11位、FB:4位

■ウォルマート(米) FT:12位、FO:1位、FB:15位

■中国工商銀行(中) FT:9位、FC:15位、FB:1位

■中国石油天然気集団(中) FT:6位、FC:3位、FB:17位(ペトロチャイナ)

■ウェルズ・ファーゴ(米)※2 FT:7位、FO:67位、FB:7位

■ゼネラル・エレクトリック(米) FT:13位、FO:26位、FB:68位

■マイクロソフト(米) FT:5位、FO:63位、FB:23位

■サムスン電子(韓) FT:19位、FO:13位、FB:18位

■中国移動通信(中) FT:11位、FO:45位、FB:18位

■ネスレ(スイス) FT:14位、FO:66位、FB:33位

■VWグループ(独) FT:49位、FC:7位、FB:22位

■ロイヤルダッチシェル(蘭&英) FT:26位、FC:5位、FB:50位

※1 バークシャー・ハサウェイ

著名投資家のウォーレン・バフェット氏が会長兼CEOを務める投資会社であり持株会社。主たるビジネスの一つは証券化財産の保険、損害保険、再保険、特殊保険などの保険業務であり、保険業務によって得られた掛金や利益、投資によるリターンという流動的な資産を計画的に運用してきたが、近年では投資先が広範かつ多岐にわたり、株式会社の形態をとった投資ファンドともいわれている。コカ・コーラの株式の9.16%、アメリカン・エキスプレスの株式の16.22%、ウェルズ・ファーゴの株式の9.01%を保有するなど、多くの大企業の大株主である。

※2 ウェルズ・ファーゴ

カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置き、西部を地盤とするアメリカの金融機関。アメリカン・エキスプレスの創設者でもあるヘンリー・ウェルズとウィリアム・ファーゴによって1852年に創立された。現在はアメリカだけでなく、カナダ、北マリアナ諸島、西インド諸島においても現地法人を持ち、個人向けの業務を営む。2005年時点で、営業網は6250店舗、顧客は2300万人を数える。2015年時点の資産価値では全米第3位であり、市場価値では世界最大の銀行。ほかの欧米金融機関が投資銀行の色彩を強めるなか、伝統的な銀行業務に軸足を置く金融機関としても知られる。

中国企業のランキングが多いのは、中国がある種のバブル状態が続いているためであり、割り引いて考える必要があろう。

たとえば日本のバブル最盛期であった1989年のフィナンシャル・タイムズのランキングでは、トップ5の全社(NTT、住友銀行、日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行)、トップ10のうち8社、トップ30のうち21社が日本企業だったが、どう考えてもこれは過大評価であった。

このときから20年もしないうちに、合併したり経営不振で消えてしまった三和銀行や日本長期信用銀行、東海銀行もすべてトップ30にランクインしていたのである。今の中国も、ややこれに近い状態ではないか。ただ、総じていえば、これらの企業は、まさに世界のリーディングカンパニーと呼んでふさわしい顔ぶれである。

“将来性””成長可能性”の評価が低い日本企業

しかし、問題なのは、この3つのランキング(トップ100社)に共通して登場する日本企業が、たった1社、トヨタだけ(FT:15位、FO8位、FB:10位)という事実だろう。特に今後の成長性、期待収益力などに大きく左右されるフィナンシャル・タイムズのランキングでは、たった2社(トヨタ:15位、MUFG:93位)がトップ100に名を連ねるのみである。

企業収益でランキングが決まるフォーチュンや資産も考慮されるフォーブスのランキングでは、NTTやホンダ、日産自動車やソフトバンクグループなど、もっと多くの日本企業の名前が挙がっているのだが、これらの企業は株価的にはそれほど評価されてないということになる。これは日本企業の”将来性””成長可能性”についての世界的評価が非常に低いということになるのではないだろうか。

なぜ日本企業の評価が株式市場で低いのかを考えるために、フィナンシャル・タイムズのランキングをもう少し詳しく見ると、いくつかのことに気づく。ほかの2つのランキングと比べてフィナンシャル・タイムズのランキングの大きな特徴は、いわゆる先端技術分野の企業が高く評価されているということだろう。

世界のトップ50を見ると、ITと製薬・医療・バイオ分野において2015年末で23社、2010年でも19社が名を連ねており、半分近くが、いわゆる”先端分野”の企業で、特にIT分野ではほとんどが創業後30年前後かそれ未満の若い企業群である。

成長性が重視される評価であるから、当然と言えば当然の結果であろう。しかし、残念ながら、この2分野で日本企業の評価が圧倒的に低い。それぞれの産業で、2016年の日本企業の状況を見てみよう。

■IT:NTT DoCoMo(118位)、NTT(125位)、ソフトバンクグループ(128位)、KDDI(151位)、キーエンス(340位)、日立製作所(ITと呼べるかどうか微妙だが341位)、パナソニック(これも同様に微妙だが359位)、ソニー(371位)、村田製作所(372位)、三菱電機(482位)

■医療・製薬・バイオ:武田薬品工業(272位)

ITは、数だけは多い。しかし、これらが伸び盛りの企業かというと微妙だろう。どちらかというと「昔の名前で出ています」といった会社が多い。

そもそも、売上高約4500億円、営業利益約1000億円のオリエンタルランドが436位にランキングされているのである。連結売上高で数兆円、営業利益で何千億円を記録している企業群が、この程度の評価ということは、いかに成長性の評価が低いかということを物語っているのではないだろうか。

時代に取り残された日本経済は凋落まっしぐら?

もうひとつ心配なことがある。”日本代表企業”といえるトヨタの評価が、2016年上半期終了時点で、25位とランクダウンしているのである。そして、トップ10の新顔としてAmazonとFacebookが登場している。

このあたりは昨今、人工知能やIoTなど、再びIT産業が活性化していることと、電気自動車や自動運転が輸送分野の新しい技術として登場し、注目を集めていることと無縁ではないだろう。

日本企業はこうした変化に十分対応できているのだろうか。さまざまな産業が国際市場での競争力を失いつつある今日、自動車産業は、まさに日本経済の屋台骨を支えていると言っても過言ではない。株価維持対策もよいが、個々の産業、個々の企業の底力をつけるような政策を真剣に考えないと、日本経済は土台から崩れていくかもしれない。

スピード感と決断力さえ身に付けば…

 

数年前まで、日本の弱電を支えた三洋電機は同根のパナソニックに吸収され、家電部門は中国企業の海爾(ハイアール)に買収された。最近だと、シャープが台湾の鴻海(ホンハイ)に買われた。戦前日本をけん引した海運会社も大手三社に集約され、世界に取り残され、ようやくコンテナ部門で三社協業が実現する。

ITに限らず、各業界、生き残りを懸けて待ったなしの状態なのだが、日本企業はまだ世界のスピード感に付いていっていない。技術力はまだまだ長けていると思われるので、スピード感と決断力さえ身に付ければ、世界に伍していけると信じているのだが……。

 

政経電論せいけいでんろん

「政経電論」の編集部です。佐藤尊徳(そんとく)編集長の下、若い世代に向けて政治・経済・社会問題を発信しています。イノベーションや働き方改革、北欧型の社会保障、国防、原発、クジラ等に注目中。

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