経済的価値はキレイなものでなくてもいい―仮想通貨は安定するか

2018.04.03

経済

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ニコ生「俺にも言わせろ!」(3月1日配信)より

元通産相で一橋大学客員教授の安延申さんをゲストに招いた対談[2]。昨年は仮想通貨のボラティリティの高さに衝撃が走りました。相変わらず投機対象の印象は拭えませんが、“通貨”と名の付くものだけに、安定した法定通貨への可能性も知っておきたい。

 一橋大学大学院商学研究科客員教授

安延 申 やすのべ しん

1956年生まれ。東京大学経済学部卒。元通産省。電子部品商社・黒田電気社外取締役。一橋大学大学院商学研究科客員教授。フューチャーアーキテクト社長や、佐川急便を擁するSGグループの情報処理子会社SGシステム社長を務めた。

株式会社損得舎 代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳 さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。

Twitter:@SonsonSugar

ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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 「政経電論」編集

鈴木 すずき

1980年生まれ、東北の田舎出身。尊徳編集長の下、若い世代向けに政治・経済・社会問題を発信中。編集長からは「君は極小派だから」とよく意見を軽視される。

Twitter:@seikeidenron

経済的価値とは何か

尊徳 仮想通貨は安定しますか?

安延 安定しないですね、結論を言うと。

尊徳 安定はしないよね、僕もそう思う。というか、間違いなくしない。

安延 今の仮想通貨って何の経済的価値も裏に無いんですよ。経済的価値っていうのは、合法的とかキレイなものとか、価値がありそうなものでなくてもいいわけです。例えば極端に言うなら、世界を駆け巡るものとしての麻薬取引。その取引単位としてビッドコインを使いますということでも、ある種、経済的価値になります。

あるいは、インターネットゲーム。日本では、DeNAやGREEなどがコインを出していますが、GREEのコインでDeNAのゲームはプレーできない。ならば、DeNAでプレーしたいときにビットコインを仲介にしてGREEコインに交換できますといったことも、経済的価値じゃないですか。

そのように、価値が付いた途端、通貨って安定し始めるんですね。なぜなら、その価値はどの程度のものかと、みんなが考え始めるから。株式がそうですよね。NTTならNTT、三菱商事なら三菱商事っていう企業の売上や利益を見て、この株ならこのぐらいの価値があるに違いないと価値をつけるわけです。

ところが、今の仮想通貨には何ひとつ価値が付いていないから、純粋な投機というより、バクチの札みたいなものです。そうである限り、安定はしません。今までに価値づけしようとした人がいたかも知れませんが、こんなに値が上がったり下がったりしたら、価値も付けられないですよ。

以前は秋葉原のヨドバシカメラでは、ビットコインで買い物ができました。だけど今は、もうやっていないんじゃないかな。というのも、ビットコインの価格がずっと上がり続けたから。確か、昨年の春頃は20万 くらい? 30万?

尊徳 うん。

安延 それが、昨年の秋には200万円程度まで上がった。

尊徳 10何倍ぐらいだよね。

安延 ヨドバシカメラが「スマホ1台、0.1ビットコイン」と定価を付けたところで、それが換金される頃には10万円だと思っていたものが20万円になるかもしれなかった。ところが、その後ドーンと暴落した。そうなるとビットコインで値段をつけて販売することで、大損する可能性が出てきたわけです。

つまり、あまりに値段がどんどん変動するようになってしまうと、価値を付けようにも付けられなくなる。そうした意味で、安定はもう難しいでしょうね。

円やドルに成り代わったら国家が黙っていない

尊徳 仮想通貨か銀行が発行するトークン、どっちが国内だと定着しますか。

安延 「うちで出すトークンは、ボトムラインこれだけは円で保証します」というのが価値。銀行がそうしたことを行わず、まったく仮想通貨と同じ原理でトークンを出したら、何も変わらないですよね。

尊徳 それがまったくダメだとは言わないし、それこそ、ブロックチェーンとかの価値はあるわけで。でも、仮想通貨自体がどうなるかを考えると、何らかの価値をつけなければ無くなるしかないよね。そもそも、仮想通貨って名前がおかしい。

安延 仮想通貨というわけのわからない“財”と、ブロックチェーンの技術が混同されがちですが、実はブロックチェーンの技術って、とても優れているんです。例えば、「今からホンジュラスに1万円送金します」とメガバンクに言ったら、たぶん、1万円と同じくらいの手数料が必要だと思うんですよ。しかも、相手に着金するまで2週間くらいかかるわけで。

ブロックチェーンの技術を使えば、何も仮想通貨である必要はなくて、円の情報をブロックチェーンの技術の上に乗せれば良いだけですから、それで送れば瞬時に相手のところに着くことが可能になる。

技術として、非常に優れている訳です。ただ、それを今はビットコインやネムといった仮想通貨の情報とセットにしているがために、混同されている。仮想通貨が安定しないことと、ブロックチェーンという技術がダメだということは、全く異なるものだと思っています。

尊徳 今後、仮想通貨が無くなるとは思わないけれど、今のボラティリティといったことは無くなり、安定的に使える交換の手段として残るかな……程度に思っています。仮想通貨が円や元やドルに成り代わるかと言ったら、そうした可能性が出た途端、国家も黙っていないでしょう。

安延 どうかな、僕はまだわからないと思うけどね。

尊徳 規制によって、そうさせないとは思うけど。

安延 国家が嫌がることは間違いないですが、排除しきれるかどうかはちょっと微妙な気もしていて。

尊徳 だから、価値をつけてしまう。もう排除できないぐらいの。

安延 ITの怖いところは、瞬時に実現できること。例えば、Amazonやアリババといった世界的なネット通販企業すべてが談合し、「僕らが共同で発行する仮想通貨、仮に『X』というのを出して、定価を全部これでつけよう!」と動いたとしたら。為替リスクも負わなくて済むということで合意したら、『X』はたった1週間で流通するでしょうね。それを国が1週間で排除できるかと言ったら、たぶんできません。

尊徳 中国だったらできるけどね。

安延 そのときは、中国が世界から遅れるだけだから。そんなふうに、経済が成熟してデジタルマネーみたいなものを扱えるようになるか、そうではなくずっと投機の対象でいるかというのは、僕は今の時点ではわからないですね。

尊徳 別に投機をしたい人はすればいい話です。最終的に僕は下落するとは思うけれど、跳ね上がるかもしれないし、それは全くわからない。

ボラティリティを小さくするためのペッグはアングラでも非合法でもいい

安延 皆さん覚えておられるかどうかわかりませんが、天皇陛下即位記念に、榊原(英資)さんが財務省の理財局の国庫課長だったときに、10万円金貨だっけ?

尊徳 ハイハイ、やったねぇ。

安延 ……を発行したんです。中でも表面をピカピカに仕上げたものがあって、それにものすごい高値がついた。

尊徳 ハイ、ハイ、ハイ。

安延 最高で100万円くらいの値がついたのか、よく覚えていませんが。冷静に考えれば、国が出している通貨ですから、どんなものであってもその価値は10万円でしかなくて。それを財務省の榊原さん(当時)が発行しすぎたために、今ではプレミアムがついてないかもしれません。

尊徳 そりゃそうでしょう。

安延 古銭や記念金貨の買取専門店に持っていっても、プレミアムゼロかも。仮想通貨は、それと似たようなものです。

尊徳 価値があると思えば、価値がある。

安延 そう。

尊徳 株式や為替だったら、いろんな裏付けのもとに予想はできる。でも、仮想通貨は予想さえできないということ、このボラティリティは。明日どうなりますかと聞かれたところで、わからない。だって、経済的とか利便性とか、何も無いから。

安延 結局、ボラティリティを小さくするためのペッグ(固定為替レート)はアングラでも非合法でもいいんです。当局に目をつけられ、やり取りができないという裏社会の人が、「大麻を買ってくれる人が欲しいから、明日値段が10分の1になっても俺はビットコインで売る」とやっているうちに、気がつけば大麻マーケットの共通通貨がビットコインになるというのは、ボラティリティを減らすわけです。

そういう人がどんどん出てくれば、通貨化していく可能性はあると思います。逆に全くそれが出てこないと、最後は「10年前、ビットコインってブームがあったけど知ってる?」となるでしょう。

規制が無いICOは詐欺で有罪になったら一発で消える

鈴木 ICOはどうなんですか。仮想通貨は、そっちの使い道の方があるんじゃないですか? それは価値じゃないんですか、企業としての。

尊徳 では、ICOって何?っていう話。別に、日本円でやればいいだけの話で。IPOすればいいだけ。

安延 佐藤さん言った通りだよね。日本の会社がなぜ円でやらないの?という話ではある。

鈴木 為替のリスクがあるから?

尊徳 そうじゃなくて。何でブームかと言ったら、IPOはさすがに公的な審査機関があって、まあ私募債でもできるんだけど。ICOはまだ規制もかかっていないところで売買できますというものだからやりやすいだけで。
安延 ICOも真っ当な大企業が行えば誰もが信用するでしょうけど、広くマーケットからお金が集められませんといった企業ばかりがやってると何が起きるか。必ず、不届き者が出てきて、スキャンダルが起きる。

尊徳 詐欺をやるようなヤツばっかりだよ、今だって。

安延 一発飛んで詐欺で訴えられ、有罪になりましたってなった途端に、あっという間に消えるマーケット。円で真っ当にお金を集め、それでリターンすればいいものを、なぜわざわざこうしたものに変換する必要があるの?ということに対する答えが、彼ら自身、明確にできていないような気がします。

尊徳 (ニコ生を)見ている人から「楽天・三木谷社長がやる、楽天コイン構想について解説お願いします」って質問が来てます。

安延 楽天コイン構想については、ちょっと理解できる気がしていて。DeNAだってGREEだって、それぞれのコインは彼らが提供している全部のゲームで使えますよね。たぶんショッピングでも使えるでしょうし、LINEポイントもそうじゃないかな。

いずれも、彼らが提供するITプラットホームの上では使用可能じゃないですか。ユーザー側も、楽天ポイントをうまく使って安く旅行しようとかやるわけです。極端に言うと、それは「楽天ポイントを有料で発行します」と言っているのと同じことなんです。

例えば、今までの使用実績で楽天ポイントが1800ポイント貯まりました。だけど、欲しいこの服を買おうと思ったら200ポイント分、足りません。ならば、1800ポイントを円に換算してもいいし、逆に円を200円分出して、楽天ポイントを買ってもいいわけです。要するに、顧客囲い込みでしょう。

例えば、今までの使用実績で楽天ポイントが1800ポイント貯まりました。だけど、欲しいこの服を買おうと思ったら200ポイント分、足りません。ならば、1800ポイントを円に換算してもいいし、逆に円を200円分出して、楽天ポイントを買ってもいいわけです。要するに、顧客囲い込みでしょう。

尊徳 そうだよね。200ポイントを195円で買えますよというふうにしておいて。

安延 そう、そう。

尊徳 その代わり、ここでしか使えませんよと。

安延 だから、「円なら10%割引だけど、楽天コインでは15%割引です」と言えば、何か得したような気になるじゃないですか。そうやってすべての顧客が楽天市場の上だけでショッピングをする、あるいはサービスを利用するようになれば、結果として楽天のトータルなプロフィットとなり、レベニューは増えますよということです。それは合理的だと思います。

尊徳 ポイントはほかでもいっぱい行われていますよね。

安延 Amazonでもやっています。お金を出してそれを買う仕組みを入れるかどうかということです。

»Q.日本の起業家を育てる方法は?「素地が実はでき始めている」ニコ生「俺にも言わせろ!」(3月1日配信)より

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