川淵三郎最高顧問に聞くプロ麻雀「Mリーグ」の未来予想図

写真/十河 英三郎

社会

川淵三郎最高顧問に聞くプロ麻雀「Mリーグ」の未来予想図

0コメント

2018年7月17日、プロ麻雀リーグ「Mリーグ」が発足した。10月1日から優勝賞金5000万円の獲得を目指し、7つのチームがリーグ戦を戦う。一般社団法人Mリーグ機構による運営だが、その仕掛け人はサイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏で、同リーグのチェアマンにも就任。最高顧問にはJリーグの初代チェアマンで、分裂していた国内男子バスケットボールをBリーグとして統一させた功績でも知られる川淵三郎氏が就任した。

 日本トップリーグ連携機構代表理事 会長/日本サッカー協会 相談役

川淵三郎 かわぶち さぶろう

1936年12月3日生まれ。大阪府出身。高校からサッカー選手として活躍し、日本代表としてオリンピックなどに出場。現役引退後は日本代表監督に就任。Jリーグ創立に尽力し、初代チェアマンを務めた。その後、日本サッカー協会会長や最高顧問などを務め、現在は相談役。また、公立大学法人首都大学東京理事長(2013年4月~2017年3月)を務めたほか、日本バスケットボール協会会長(2015年5月〜2016年6月)に就任しBリーグ創設を牽引した。2015年5月より、日本トップリーグ連携機構代表理事 会長。職歴としては、早稲田大学卒業後、古河電気工業株式会社入社、古河産業の取締役を務めた。

続きを見る

Mリーグで賭け事のイメージを払拭

「麻雀と聞いて、すぐに思い浮かべるのが賭け事。そういうイメージを払拭したいという思いがMリーグ発足の背景にあるので、就任を快諾しました。私自身はあまり出しゃばらないようにしていますが、リーグに出場しているプロ雀士がお金を賭けたら除名処分するという罰則については、それでは優しすぎるので、永久追放するという強い信念の下でやってほしいと忠言しました」(川淵氏)

麻雀は日本国内で広く親しまれ、プロ雀士の数も数千人に達するとされるが、その反面、ギャンブルのイメージが強烈で、あまり好印象を抱いていない人が多かったのも事実だろう。

だが、最近はオンライン上のゲームや対戦を実況するネット動画を通じて、若者の間でお金を賭けない“健全麻雀”が密かにブーム化している。また、2017年4月には麻雀が国際マインドスポーツに認定され、転換期を迎えている。

「あらぬ疑いを抱かれると迷惑をかけるので、Jリーグがスタートする前に僕は麻雀を一切止めました。しかし、数年前から住まいの近くで近隣住民が集う麻雀大会に毎週参加しています。もちろん、賭けは一切なしで、年間の累積点数を競い合っています。毎週水曜日が来るのが楽しみですし、藤田さんから最高顧問への就任を誘われて、僕はすごくうれしかったですね」(川淵氏)

オリンピック競技認定への要はスポーツ化

もう一つ、Mリーグ発足の狙いは麻雀のスポーツ化にもある。ビデオゲームの競技「eスポーツ」でもプロ化が進められているように、ここ数年で“スポーツ”というカテゴリーの範疇は多様化している。

「僕が就任したら、『スポーツの世界の川淵さんがなぜ?』と思ってもらえるでしょ」と当人が指摘するように、川淵氏がかかわることで麻雀のスポーツ化は一気に前進したといえそうだ。そのイメージを徹底させるために、Mリーグでは、Mリーガー(所属プロ雀士)はスーツではなく、動きやすいユニフォームを着用して競技に挑む。

参加7チーム

  • KONAMI麻雀格闘倶楽部(コナミアミューズメント)
  • 渋谷ABEMAS(サイバーエージェント)
  • セガサミーフェニックス(セガサミーホールディングス)
  • EX風林火山(テレビ朝日)
  • TEAMRAIDEN/雷電(電通)
  • 赤坂ドリブンズ(博報堂DYメディアパートナーズ)
  • U-NEXT Pirates(U-NEXT)

1チームにつき80試合のリーグ戦で4位までにランクインしたチームによってプレーオフであるクライマックスシリーズ(24試合)が開催され、その頂点を競い合う。各チーム3名のMリーガーが所属し、8月7日に実施されたドラフト会議でその人選が決定。俳優の萩原聖人氏がその一人に選ばれたことでも話題になった。

「とにかく麻雀は健全な知的ゲームで、面白くて飽きない。老若男女を問わず楽しめるし、認知症予防にも効果があるともいわれ、そういった意味でもMリーグの発足は高齢化が進む今の時代において非常に意義深いことです。オンラインゲームでも流行っているようですが、できれば4人そろって一つの卓を囲んでいただきたい。そうすることで、対人関係も変わってくるはずです」(川淵氏)

国際麻雀連盟は2022年開催の北京冬季オリンピックにおいて、麻雀を正式競技の一つとすることをIOC(国際オリンピック委員会)にオファーしている。今後数年間のうちに麻雀に対するイメージは一変し、競技人口が大幅に拡大することも起こりうるかもしれない。