本当だったカルロス・ゴーン氏と仏マクロン大統領の密約

2018.11.21

経済

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写真/Chesnot

日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏が報酬過少記載による金融商品取引法違反容疑で逮捕された事件は、ゴーン氏が逮捕直前に日産とルノーの経営統合を検討し、数カ月以内に実行しようとしていたことに危機感を抱いた西川広人社長をはじめとする日産経営陣による事実上のクーデターであった可能性が高まっている。

 

そのことを知るルノーは、11月21日開催(日本時間)の取締役会でゴーン氏の会長兼CEO職を解かず、ナンバー2のティエリー・ボロレCOOを副CEOに就け、暫定的に経営を執らせる一方、日産に対しゴーン氏に係る内部調査の全資料の提出を求めた。この背景にあるのは、今春に囁かれていたゴーン氏と仏マクロン大統領の密約。その舞台裏がいま明かされようとしている。

日産・ルノー連合への仏政府の経営介入

時計の針を戻さなければならないだろう。事の始まりは今春、日産自動車と仏ルノーの経営統合がにわかに浮上したことにある。6月中旬に開催予定のルノー株主総会に向けての情報戦との見方もあったが、市場では、両社が統合新会社を作り上場させる案や両社が合併する案も取り沙汰されていた。

背景には仏マクロン政権による経営への介入圧力はあった。日産は提携強化には前向きに検討する構えだったが、日産の独立性が失われかねない統合には、「到底受け入れられない」と強く反発していた。

日産・ルノー連合への仏政府の経営介入は根が深い。2015年にも仏政府による資本介入が問題視された。ルノーは日産の43.4%の株式を持ち、日産はルノーの株式15%を保有する持ち合い関係にある。

事実上、ルノーが親会社、日産が子会社の関係だが、子会社である日産の収益や配当が親会社ルノーの経営を支えているのが実態だ。しかし、日産が保有するルノー株には議決権が付いていない。このため資本関係を見直し、ルノーの日産株の保有割合を40%未満に引き下げる一方、日産が持つルノー株に議決権を付けることで日産の発言権を高めることが検討された経緯がある。

ゴーン氏がルノー・日産の統合を約束か

この資本関係の見直しは、一言でいえば仏政府によるルノーへの経営権拡大に対する対抗策にほかならなかった。きっかけは2014年3月にフランスで成立した「フロランジュ法」にある。

同法では従業員1000人以上のフランス企業が工場の閉鎖を計画した場合、売却先を探すように義務付けるなどリストラ策に対し政府がモノ申す権限が拡大された。かつ、その一環として2年以上の長期にわたり株式を保有している株主について2倍の議決権を付与する。つまり仏政府が持つ大手企業の株式の議決権を2倍にして、経営に介入するという意思表示にほかならなかった。ルノーはその最右翼というわけだ。

「フランスは第2次世界大戦後、有力企業が軒並み国有化された経緯があり、現在もなお政府が企業の経営に口を出す国家資本主義的な色彩の強い国だ。とくに欧州経済危機で経済が停滞するなか、企業のレイオフなどリストラ策については神経をとがらせていた。フロランジュ法も鉄鋼大手アルセロール・ミッタルのフロランジュ工場の労働争議(解雇問題)に端を発している」(自動車アナリスト)という。

同法により、仏政府が保有するルノー株の議決権は約28%まで高まり、ルノーを通じた日産吸収が現実味を帯びた。2015年当時、この仏政府の意向をはねつけたのはルノー、日産両社のCEOを兼務していたゴーン氏にほかねらなかった。

だが今春、そのゴーン氏は、ルノーCEO再任をめぐり仏マクロン大統領と密約を交わしたとの情報が流布された。当時、密約の中身は藪の中だったが、一説にはゴーン氏はルノー・日産の統合を約束したといわれていた。期せずして、ゴーン氏の逮捕を契機に、今この密約が真実であったことが明かされようとしている。