知ってるようで知らない政府のこと 10分でわかる安倍内閣

2016.5.10

政治

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外交、記者会見、災害対策など、日々のニュースに多数登場する安倍内閣の面々。国のトップとして顔は知っていても、彼らがどういった経歴の持ち主なのか知らない人も多いのではないだろうか。これまでの安倍政権の歴史を振り返りながら、各閣僚の政治家としての特徴、内閣でのポジション、安倍総理との関係まで、安倍内閣をざっとおさらい!

第3次安倍改造内閣

発足:2015年10月7日/平均年齢:59.7歳/人数:20人

安倍晋三プロフィール

内閣総理大臣 安倍晋三(あべ しんぞう)

 

祖父の意志を継ぐ政界のサラブレッド

 

祖父は元首相、実父は元外相という毛並みの良さは折り紙つき。2006年、52歳のときに戦後最年少で首相に就任。その後、母体の自民党は民主党に敗れ政権を失うが、2012年12月に奪還、自らを首班とした第2次安倍内閣を発足、現在に至る。国家像に「美しい国、日本」を掲げ、アベノミクスを武器にデフレ脱却と持続的な経済成長に挑む。「戦後レジームからの脱却」が持論だが、これは祖父・岸信介元首相譲りで、”改憲”と”自衛隊の軍隊化”が悲願。

 

ここへ来て株安・円高が進行、消費・雇用拡大も足踏み状態など、3本の矢を軸とする経済政策の効力が薄れつつある。このため、「希望を生み出す強い経済」「夢を紡ぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」という新3本の矢を放ち、目下”1億総活躍”を推進中。

景気回復から改憲を経て真の独立国に!

安倍晋三氏が内閣総理大臣として目指すものを簡単に説明するなら、ズバリ「歴史と伝統を重んじる豊かな独立国の再構築」だろう。

この政治理念は、政権に返り咲く直前の2006年7月に、自らが著した新書『美しい国へ』(文藝春秋刊)でも詳しくつづっている。また、憲法改正を悲願とする本人が陣頭指揮し、2012年にまとめた自民党の「憲法改正草案」の前文にも、「国民は国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り」「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成」「良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承する」といった文言で色濃く反映。

ただし達成するには、アメリカからのお仕着せでない自主憲法の制定、つまり「改憲」が必須。加えて親米を基軸にしながらも”ホワイトハウスに盲従”を改め、全方位的な独自外交の展開と、独立を担保する国防軍の正式創設も不可欠だとも唱える。これが安倍氏の持論、「戦後レジーム(体制)からの脱却」の本懐だ。

これは国家に活力、つまり”勢い”がなければ画餅に終わる。しかし足元を見渡せば、長期化する景気低迷と閉塞感、少子高齢化と膨らむ社会福祉費、税収伸び悩みと1000兆円超という天文学的数字に達した国の借金(国債)など、”先進国病”ともいうべきマイナス要因がゴロゴロ。これらを一挙に解決・是正し、負のスパイラルを好循環へと転換して原動力にしつつ、同時に改憲を果たす――。これが安倍氏の描く壮大な国家再建計画だ。

麻生太郎プロフィール

副総理/財務大臣 麻生太郎(あそう たろう)

 

パナマハットを身につけた首相経験者の副首相

 

“第1次”では外相を務める。同内閣時代、党内で”安倍降ろし”を強める福田康夫(後首相に就任)の陣営と対立するが、安倍を全面的に支持。この間、麻生も反主流派による包囲網攻撃を受けるが、安倍は麻生を支援するなど、両者は盟友中の盟友。また、両者は祖父の代が閨閥(けいばつ)関係にあり、いわば遠い親戚同士でもある。祖父は戦後、日米安保条約を結んだ吉田茂元首相。

 

福岡の拠点に先祖が築いた年商1500億円の企業集団・麻生グループ(旧麻生セメント)の、事実上の総帥(実弟が会長)で、いわゆる”お坊ちゃま”。
第1次安倍内閣の次の次に、首相に就任。首相経験者の副首相就任は珍しい。かつてクレー射撃のオリンピック日本代表だった。マフィアスタイルを好むことで知られ、飾らない性格や無類のマンガ好きから国民に人気があるものの、しばしば口が災いとなることも。

高市早苗プロフィール

総務大臣 高市早苗(たかいち さなえ)

 

“女性の活躍”のシンボル担う安倍政権きってのタカ派

 

“第1次”で特命担当大臣として初入閣。”女性の活躍”を信条とする安倍政権のシンボル的存在。党初の女性政調会長に就任後、第2次安倍政権で現ポストに。安倍からケータイの料金引き下げの命を受け、直ちに実現、その手腕が買われている。靖国神社公式参拝の実践や国防軍創設など、政権内きってのタカ派。政府批判を強める一部テレビ局に対し「電波停止もあり得る」なる趣旨の発言を行ない、「報道の自由の保障を無視した憲法違反だ」とマスコミから批判受ける。

岩城光英プロフィール

法務大臣 岩城光英(いわき みつひで)

 

震災復興をアピールする福島出身の新入閣組

 

“第3次”で初入閣。”第1次”では官房副長官を務める。元いわき市市長で、1998年の参院選で国政入りを果たす。細田派の意向が働き入閣。福島出身であることから、東日本大震災の復旧・復興をアピールする狙いも。トライアスロンが趣味。

岸田文雄プロフィール

外務大臣 岸田文雄(きしだ ふみお)

 

“保守本流”を自負するハト派外交のバランサー

 

心情的に安倍とは多少距離があるが、同じ1993年当選組であることから同期生として信頼熱く、腹を割って話せる間柄。自民党内の”保守本流”を自負、歴代首相を多数輩出したハト派の宏池会を束ねる。第2次安倍内閣から外相を務めるが、その理由を、宏池会が歴史的に中国首脳と太い人脈を維持する点を買われての起用とも、タカ派と見られがちな安倍政権の中でバランスを考えて外交面ではハト派を前面に出すためとも目される。下馬評では”ポスト安倍”の有力候補とも。

馳 浩プロフィール

文部科学大臣 馳 浩(はせ ひろし)

 

東京五輪に向けて森元首相とタッグを組む“北斗の流星”

 

ロサンゼルス五輪のレスリング代表で、プロレスラーを経て1995年、衆院議員に当選。党内の東京五輪実施本部本部長を務めることから、”第3次改造”の文科大臣に抜擢。同じ石川県出身の森喜朗元首相と極めて近い。森が五輪組織委員会委員長を務めることを考慮した抜擢か。

不発の第1次から一転、政権奪還で再発進

実現できれば、間違いなく歴史にその名を刻むことになる。政治家としてこれほど名誉なことはないはずだ。

安倍氏は、この理念を実行に移すべく、2006年に初めて首相に就任。当初70%という国民からの熱い支持を背景に、小泉純一郎前政権が進めた構造改革を踏襲した。加えて北朝鮮拉致問題や日本NSC(国家安全保障会議)を念頭に置いた官邸主導型の危機管理強化、教育基本法改正、防衛庁の省昇格、国民投票法(18歳から投票権)制定などに注力。まさに「美しい国」再建のための地ならしだ。

ところが、年金記録問題や閣僚の相次ぐ失言などで人気は急降下。2007年7月の参院選挙では議席過半数割れし、民主党に第1党の座を奪われる大敗を喫する。そんななかで安倍総理は体調不良も相まって同年9月に突如辞職、「第1次安倍内閣」は終焉する。

その後も自公連立政権は延命を模索するものの、国民の評判はいま一歩。2009年7月の衆院選では対抗勢力として台頭する民主党に歴史的な地滑り的惨敗の苦杯をなめる結果に。こうして、自民党は野党に転落し、3年余にわたる辛抱の日々が続く。

だが民主党政権の稚拙な政策がたたってか、2012年9月の衆院選挙で、今度は自民党が歴史的な大勝を果たし、安倍氏は首相へと復帰、「第2次安倍政権」がスタートとする。

公明党と連携を組み、衆院で3分の2の議席を確保、絶対安定多数を固め、いよいよ「美しい国」を目指した施策を次々に打ち出していく。

塩崎恭久プロフィール

厚生労働大臣 塩崎恭久(しおざき やすひさ)

 

成功&失敗で株が乱高下 党内屈指の金融・政策通

 

東大卒・日銀入行の肩書を持つエリートで党内きっての金融・政策通。”第1次”で官房長官として初入閣した盟友で、”第2次”で現ポストに就任。改正労働者派遣法を成立、野党からの突き上げで2度も廃案になりながらの成就で株を上げるが、日本年金機構における個人情報流出事件で謝罪、黒星が付く。

森山 裕プロフィール

農林水産大臣 森山 裕(もりやま ひろし)

 

鹿児島市議から内閣へ ふるさとを愛する苦労人

 

“第3次改造”で初入閣。1988年の参院選で国政入りを果たすが、それ以前は、夜間高校を卒業して鹿児島市議を7期務めた苦労人。農水畑が長く、党のTPP対策委員長も歴任。本人は当初、TPPに反対の意向を示していたが、その後、党内の反対派説得でらつ腕を振るい、安倍の評価は高い。

林 幹雄プロフィール

経済産業大臣 林 幹雄(はやし もとお)

 

航空政策に明るい二階総務会長のオキニ

 

林大幹元環境庁長官を父に持ち、”第1次”の福田政権で国家公安委員長として初入閣、その後の麻生内閣でも同ポストに横すべり。運輸の領域、特に、地盤の千葉に成田空港を抱えることから航空政策に明るく、運輸政務次官や国交副大臣を歴任。二階派に属し、領袖である二階敏博の信任が厚い。

石井啓一プロフィール

国道交通大臣 石井啓一(いしい けいいち)

 

東大工学部から旧建設省へ 安倍内閣唯一の公明党議員

 

公明党出身で、”第3次改造”で初入閣。東大工学部卒で旧建設省入省のエリート。

丸川珠代プロフィール

環境大臣 丸川珠代(まるかわ たまよ)


議会で毒舌ふるう元テレ朝アナの”女ヤジ将軍”

 

元テレビ朝日アナウンサーで、その知名度も踏まえ”女性が輝く社会”を標榜する安倍政権のシンボル的存在。”第3次改造”で初入閣。東大卒の才女だが、自民党の野党時代、民主党政権が強行採決した際に「愚か者」と放ったり、入閣後には福島第一原発の放射線量をめぐり、ICPR(国際放射線防護委員会)が勧告した年間被曝線量「1mmシーベルト」を「何の根拠もない」と講演会で切り捨てたりと、暴言・失言が目立つ。このため”女ヤジ将軍”と揶揄される。

中谷 元プロフィール

防衛大臣 中谷 元(なかたに げん)

 

国防のトップを張るレンジャー出身のタフガイ

 

防衛大出身で陸上自衛隊のエリート、レンジャーの出身。1990年、衆院議員に当選、2001年の第1次小泉内閣で防衛庁長官として初入閣。防大・陸自出身での防衛庁長官就任も中谷が初。その後、2014年12月に発足した”第3次”で同ポストに返り咲く。集団的自衛権の一部容認を骨子とした安保法案の国会でのせめぎ合いでは、野党の追及に言葉が詰まり、安倍や麻生の援護射撃で乗り切るという一幕もあったが、レンジャー時代に鍛えた体力と精神力は屈強で、さらに性格は温厚・実直。今でも自衛隊員に声をかける気さくさから「この微妙なときに、渦中の防衛相を務められる人物はほかにいない」と評価される。

菅 義偉プロフィール

内閣官房長官 菅 義偉(すが よしひで)

 

総理就任を内に秘めたネット人気も高いらつ腕補佐

 

安倍の盟友で女房役。2006年の自民党総裁選(ポスト小泉内閣)で、第1次安倍政権誕生の推進役を果たす。選挙対策で見せたらつ腕ぶりと災害時の危機管理能力に定評。朴訥とした性格だが、内閣総理大臣就任に対する”内に秘めた野望”は相当なものともいわれている。ただし、安倍がお気に入りだった稲田朋美の入閣を阻止したことから、近年不仲説も飛び交っている。無類の渓流釣り好き。

 

強大になった安倍政権が目指すのは「改憲」

まずは「三本の矢」、つまりアベノミクスを放って経済再生に挑み、円安と株価上昇を実現。手応えを感じた機をとらえ、公約の「消費税8%」も実施する。2014年12月~2015年10月の第3次安倍内閣では、集団的自衛権の一部容認を骨子とする安全保障関連法の成立に心血を注ぐ一方、アベノミクスの第2ステージとして「新三本の矢」を表明。

さらに、2015年10月からスタートした第3次安倍改造内閣では、懸案だったTPPの大筋合意にこぎ着ける。そして目下、安倍氏の脳裏は「2016年7月参院選挙での勝利」一色のはず。これで3分の2の議席の獲得に道筋をつけ、念願の「改憲」へと王手をかけられる……!と期待する最中で、あるいは政権基盤をより盤石にするため、「衆参ダブル選挙」の裏ワザも思案中といわれている。

祖父である故・岸信介元首相は、3つの自主(憲法、軍備、外交)を唱え、自民党の前身「日本民主党」を旗揚げした。安倍氏はそのDNAを引き継ぎ、果たせなかった祖父の夢を叶えようとしているのかもしれない。

髙木 毅プロフィール

復興大臣/福島原発事故再生総括担当 髙木 毅(たかぎ つよし)

 

原発再稼働に燃える福井の星

 

“第3次改造”で初入閣。原発が集中する福井選出でもあることから同ポストに起用か。184cmの偉丈夫、酒豪を誇る。小泉政権時代は防衛庁長官政務次官を務め、また、国会対策の経験も長い。原発再稼働に意欲を燃やす。

河野太郎プロフィール

行政改革担当大臣 河野太郎(こうの たろう)

 

原発を推し進める政治家家系の異端児

 

“第3次改造”で初入閣。元建設大臣の祖父・一郎、元衆院議長の実父・洋平を戴くサラブレッドで、党内では改革派の筆頭。歯に衣着せぬ口ぶりは、ときにお茶の間を痛快にさせ国民の人気も高い。「小さな政府」や税金の無駄遣い撲滅、脱原発の急先鋒でもあり、”異端児”として政府・与党内に一石を投じる場面も。


原発を推し進める政治家家系の異端児

“第3次改造”で初入閣。元建設大臣の祖父・一郎、元衆院議長の実父・洋平を戴くサラブレッドで、党内では改革派の筆頭。歯に衣着せぬ口ぶりは、ときにお茶の間を痛快にさせ国民の人気も高い。「小さな政府」や税金の無駄遣い撲滅、脱原発の急先鋒でもあり、”異端児”として政府・与党内に一石を投じる場面も。

島尻安伊子プロフィール

沖縄・北方担当大臣 島尻安伊子(しまじり あいこ)

 

政党も政策も変幻自在 経歴華やかな庶民派閣

 

“第3次改造”で初入閣。「台所から政治を変える」を信条に政治活動を続ける。もともと仙台出身で、地元の進学校・聖ウルスラ学院高校から上智大に進学、アメリカ留学を経た後、旧シアーソン・リーマン証券日本法人(元リーマン・ブラザース)に入社といった華やかな経歴。結婚後沖縄に移り、2004年に那覇市議会議員補欠選挙で当選、政治家の道を歩む。この際、民主党系からの出馬だったが、2007年の沖縄県参院補欠選で当選後、自民に鞍替え。2010年の参院選ではアメリカ海兵隊基地の県内移設容認を表明していたものの、やがて県外移設へと豹変、さらにこれを撤回するなど、信念がブレがちな一面も。2016年2月の会見の際には、担当大臣でありながら「歯舞(はぼまい)」が読めないという痛恨のミスを犯す。

石原伸晃プロフィール

経済財政・経済再生担当大臣 石原伸晃(いしはら のぶてる)

 

バックはスター軍団”石原家” 甘利元大臣のピンチヒッター

 

前任の甘利明が不明瞭な金銭授受疑惑の発覚で辞任したのを受け、2016年1月に急遽登板。父はご存じ前東京都知事の慎太郎、叔父は大スターの裕次郎、弟はタレントの良純と、知名度は抜群。小泉政権時代に行革相、国交相を歴任。金融再生法の成立や特殊法人改革などを手掛けるなど実力も備える。安倍とはかつて若手の政策グループ「NAISの会」メンバーの間柄で信頼熱い。反面”平成の明智光秀”とも揶揄され、2012年の党総裁選では彼を幹事長に抜擢した恩人の谷垣禎一総裁を差し置いて出馬したことから、党内での調整能力に疑問を投げかける声も。

 

加藤勝信プロフィール

1億総活躍・女性活躍・拉致担当大臣 加藤勝信(かとう かつのぶ)

 

注目度高めの政策を一手に 定評ある実務能力に期待

 

“第3次改造”で初入閣。東大卒の大蔵官僚出身で、党内の大物政治家、故・加藤六月に事実上の婿養子入りし、政界デビュー。実務能力には定評があり、官房副長官や初代の内閣人事局初代局長を歴任。額賀派。

石破 茂プロフィール

地方創生国家戦略特区担当大臣 石破 茂(いしば しげる)

 

農水・軍事・鉄道・アイドル…etc. レンジ広い”ポスト安倍”最右翼

 

小泉政権時代に防衛庁長官として初入閣。麻生政権時は農水相、”第2次”で現ポストに就任。”ポスト安倍”の最右翼との下馬評が高く、実際に党総裁を視野に置いた派閥「水月会」を結成。このため安倍との不仲説もしばしばマスコミをにぎわす。安全保障では党内きっての事情通で、農水政策にも明るい。安全保障に関する考え方では親米派という点で安倍とは共通だが、「戦後レジームからの脱却」を唱える安倍とは異なり、これを事実上容認、プラグマティシズムを重んじる。国民からの知名度が高く、軍事・鉄道・昭和アイドルのオタクでもある。

遠藤利明プロフィール

五輪担当大臣 遠藤利明(えんどう としあき)

 

頑張れエンドー! 幾多の苦難を舵取る五輪のリーダー

 

“第3次”で初入閣するが、直後に新国立競技場の建設費が巨額になることを受けて白紙撤回されたり、五輪の公式エンブレムのパクリ疑惑でこれも使用中止になったり、さらには仕切り直しした新国立競技場の青写真に、肝心の聖火台が盛り込まれていなかったりなど苦難が続く。