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【尊徳編集長 談話】言葉は潔白でなければならないのか 言葉狩りについてそろそろ本質的な議論を始めよう

電子雑誌「政経電論」第20号掲載
2017年01月10日
読了時間: 04分30秒

文字面を変更、使用不可にすることで問題を処理しようとする「言葉狩り」は、物事に対して本来の意味とはズレた認識を生み、思考停止に陥らせ、日本語の表現力を減退させる可能性も含んでいる。窮屈な状況をわざわざ作りだす日本人は、大事な何かを忘れている......?

佐藤尊徳プロフィール佐藤尊德(さとうそんとく) 1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の"信念の貫き方"』(双葉社)。

電通の「鬼十則」削除は典型的な言葉狩り

電通の新入社員が過重労働によって自殺した問題は、ついに石井直社長の引責辞任にまで及んだ。過労死は通常、労災が認定されるかどうかといった問題にとどまるが、ここまで発展することは、今回の件が異質であることに加え、労働に関する国民意識が相当高まっていることを証明しているといえる。

電通は問題解決に際し、すぐに労働時間の上限を引き下げ、午後10時には本社ビルを全館消灯することを決めた。加えて、電通社員の心得として有名な「鬼十規」を社員手帳から削除することを決定。

「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは」といった内容が過重労働を助長しかねないという、自殺した社員の遺族からの指摘を受けた対応だが、言葉を削除することで解決されることがどれだけあるだろうか。

キツイ文言が書かれていても、「鬼十則」自体は法律に違反するものではない。それが与える影響は、セクハラやパワハラと一緒で、そこに書かれた言葉によって、当事者が精神的圧迫を感じるかどうかが問題だ。

これだけ有名な言葉だし、感じる人も中にはいるのかもしれない。ただ、仕事をする上では、営業ノルマや"上司の喝"も似たようなもので、それをすべて廃止するようなことになったら、企業経営は成り立たなくなってしまう。

確かに電通に関しては、いきすぎたために自殺者が出たのかもしれないが、労働法が順守されず、過重労働を生み出すような環境を放っておいた電通の企業体質に問題があるのであり、強い言葉を使った「鬼十則」にその要因を見出すのは少し乱暴ではないだろうか。

目に見えるものは批判の対象になりやすい

電通から「鬼十則」を奪ったのは、世間の声だ。そこには、自殺した社員に対する憐みや、原因を作った企業に対する憎しみがある。大組織に搾取される個人の構図ができあがってしまっている。そんな"悪者"電通が、自分たちが正しいといくら言っても、批判は止まらない。収めるには、身を削って是正をアピールするしかないのだ。

過熱した世間というものは"行き過ぎるもの"だが、結果的には、今にそぐわなくなっていたのだと思う。1951年から電通社員の行動規範になってきた「鬼十則」には、それだけ続く精神があったはずだ。しかし、言葉の裏にある精神が理解されず、言葉だけが独り歩きしてしまうのなら、削除、廃止は仕方ないのかもしれない。残念ながら、今回の言葉の削除とともにその精神も廃れていくことになるだろう。

流行語はキレイな言葉でなければならないのか

世間を騒がせたブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」が流行語大賞トップ10になったことで、各方面で批判が挙がったこともあった。そこに「日本死ね」という言葉が入っていたことで、賞を取るのにふさわしくないという。これも解釈の仕方が原因だ。受け手がどうやってとるか。

そもそも批判する人たちは、例のブログを読んだことがあったのか、甚だ疑問。文脈で解釈すれば、「日本死ね」の意味が、文字通りではないことはすぐにわかる。それに、このブログタイトルが表彰されたのは、流行ったからだ。別に賞賛しているわけでもなく、内容がそれだけ世間の注目を浴びたということ。かつては政治家の野中広務氏が発言した「毒まんじゅう」が流行語になったこともあったし、キレイな言葉である必要がどこにあるのだろうか。

選考委員の俵万智氏も、Twitterで「『死ね』が、いい言葉だなんて私も思わない。でも、その毒が、ハチの一刺しのように効いて、待機児童問題の深刻さを投げかけた。世の中を動かした。そこには言葉の力がありました」と発言しているし、その通りだと思う。

それを、「『○○死ね』は汚い言葉だからふさわしくない」と目くじら立てるのは、あまりにも浅はかで、ばかばかしいと言わざるを得ない。

言葉を論う前に本質的な議論を

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