改憲勢力3分の2が焦点 参院選2019、注目は4つの数字

2019.7.5

政治

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改憲勢力3分の2が焦点 参院選2019、注目は4つの数字

令和になって初めての国政選挙である参議院通常選挙が7月4日から始まった。主な争点は年金制度を中心とする社会保障、10月に予定される消費税率の引き上げ、憲法改正など。特に憲法改正に前向きな「改憲勢力」が改憲の発議に必要な3分の2議席を維持できるかどうかが注目される。21日に投開票され、22日未明に大勢が判明する。勝敗ラインのポイントになるのは、【与党で53議席】【与党で63議席】【改憲勢力で85議席】に加えて野党の比例に関する数字の4つだ。

「安倍政治」か、「非安倍政治」か

今回の参院選では、政策面で与野党の主張がはっきりわかれるような、明確な争点は無い。最大野党だった民主党が分裂し、政党ごとに主張が異なるからだ。立憲民主、国民民主、共産、社民の4党は参院選の勝敗を分けるといわれる32の「一人区」 (改選定数が1の選挙区)すべてで統一候補を擁立したが、候補者の所属政党は立憲や国民民主、共産、無所属などバラバラ。有権者は政策で選ぶというよりは、「安倍政治」か「非安倍政治」で選ぶ以外にない。

政策面の争点をあえて挙げれば、金融庁の報告書で浮上した「老後資金2000万円不足問題」に端を発する社会保障制度への不安や、10月に予定される消費税率の10%への引き上げ、憲法改正など。報告書の受け取りを拒否してこの問題をうやむやにした安倍政権の姿勢や、消費税率を引き上げることで景気が腰折れしないのかどうか、安倍政権下で憲法改正を実現すべきかどうかなどが問われる。

「改憲勢力」の3分の2維持はさすがに無理?

参院選は政権選択選挙ではないが、時に政権運営に大きな影響を与える。安倍晋三首相が初めて首相の座についた2006年。就任から1年にも満たない翌年夏の参院選で、自民党は「消えた年金問題」などが批判されて惨敗。参院で第1党の座を民主党に奪われて“ねじれ国会”となり、国会運営が停滞した結果、体調不良も重なり辞任に追い込まれた。

今回の参院選で同じ轍を踏みたくない首相は、「与党で非改選を含めた過半数」という目標 を掲げた。全体の過半数が123議席、与党の非改選が70議席なので、今回改選となる124議席のうち自公で53議席を取ればクリアするという、低い設定だ。それとは別に自民党の二階俊博幹事長は、与党で改選数の過半数(63議席)という目標を掲げる。首相の目標があまりに低いため、自民党内の緩みを警戒して引き締めにかかった格好。改選過半数を取れれば参院で与党が主要ポストを抑え、国会運営が安定するというメリットもある。

しかし、与党の設定する勝敗ラインよりも注目なのは、与党に日本維新の会や無所属議員の一部を合わせた「改憲勢力」が選挙後も参院の3分の2議席(164議席)を維持できるかどうか。改憲勢力の非改選議席は79 。改選後も3分の2を維持するには今回の選挙で85議席を取らなければならない。国会での憲法改正の発議には衆参両院で3分の2が必要なため、参院で3分の2を割り込めば首相の悲願である憲法改正が大きく遠のく。ただ、85議席の獲得には自民党内からも「無理だと言わざるを得ない」との声が漏れる。

野党を憲法改正議論に巻き込みたい安倍首相

首相は4日のNHK番組で「与党で3分の2はとても難しい」と認めた上で、「国民民主党の中にもちゃんと議論しようという人がたくさんいる」と改憲議論に応じるよう呼びかけた。これまでも衆参両院で3分の2議席を押さえていたものの、世論の中で改憲機運は盛り上がらず、具体的な審議はほとんどできなかった。首相は与党で過半数をきっちり抑えて衆参で国会運営の主導権を握った上で、野党を憲法改正議論に巻き込みたい考え。

実際、日本維新の会を除く野党各党は与党に対抗するため、表向き、憲法改正に否定的な考えを示しているが、所属議員の考えはさまざま。中には9条改正に前向きな議員もおり、実際に改憲機運が盛り上がれば「野党の再編につながる」(永田町筋)との見方がある。そうなれば今回の参院選で3分の2を割り込んでも憲法改正の火は消えない、というわけだ。

今回の参院選で野党各党がどれだけ議席を得られるか、特に比例代表でどんな数字が出るのかは今後の野党再編の行方を占う上で重要な要素となる。多くの票を得た政党が主導権を握り、票の少なかった政党は埋没する可能性が高い。【与党で53議席】【与党で63議席】【改憲勢力で85議席】。これらの3つの数字に加え、【比例代表で各政党がどれだけ票を集められるか】が注目となりそうだ。

»「安倍政治」か「非安倍政治」か【参議院選挙2019:政策比較】

※2019年7月8日、改憲勢力の議席に関して一部更新しました。

今回から「特定枠」が。参院選の仕組みを確認!

全議員が一斉に改選となる衆議院と異なり、任期が6年の参議院は3年ごとに半数ずつ改選する。今回の参院選から定数が6(改選ごとに3ずつ)増え、選挙区74と比例代表50の計124議席が争われる。

 

4日午後5時の締め切りまでに選挙区に215人、比例代表に155の計370人が立候補を届け出た。競争率は約2.98倍。女性候補の割合は過去最高の28.1%。

 

参院選で投票する際、有権者は選挙区と比例代表の2票を投じる。選挙区は原則として都道府県ごととなっており、複数の候補の中から一人選んで候補者名を書く。改選定数は1~6で、票数の多かった順に当選が決まる。人口の少ない鳥取と島根、徳島と高知は2つの県で一つの選挙区「合区」という扱いだ。

 

比例代表は全国一つで、届け出をした13の政党・団体の政党名か、各政党・団体が提出した名簿の中から個人名を選んで書く。政党・団体名と個人名の書かれた政党・団体を合算してまず政党・団体ごとの票数を集計し、多かった順に当選枠を割り振る。次に政党・団体内の候補者の中から、個人名での投票が多かった順に当選者を決める。今回から比例代表に「特定枠」という制度が設けられ、政党・団体が優先的に当選させたい候補を名簿の「上位」に記載し、個人名での投票数にかかわらず当選させられるようになった。