「情報銀行」はまだ仮免許 認知・浸透には医療データの利活用が欠かせない

2019.08.06

経済

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情報銀行

個人情報を預け、企業がその活動に利用するための要、「情報銀行」が具体化に向けて動き出している。しかし、2013年に構想されたにもかかわらず社会への認知はなかなか進まず、広く浸透していくためにはいくつかの壁が立ちはだかっている。一つは実証実験を抑制する法規制、さらに最大の難関といわれているのが医師会の反対にほかならない。

「情報銀行」を認定したIT連盟とは?

「情報銀行」が具体的に動き出した。日本IT団体連盟(IT連盟)は7月8日、三井住友信託銀行とフェリカポケットマーケティングの2社に「情報銀行」の認定書を授与した。授与に当たりIT連盟の川邊健太郎会長(ヤフー社長)は、「日本初のパーソナルデータ利活用モデルとして情報銀行の国際的な関心が高まるなか、今回の認定により世界に先駆けて社会実装が開始される」と期待を寄せた。

「情報銀行」の構想は、2013年に東京大学の柴崎亮介教授と慶應大学の砂原秀樹教授が「インフォメーションバンクコンソーシアム」を設立したのは始まりで、2016年に「世界最先端IT国家創造宣言」に盛り込まれることで国策化した。その後、2017年にイオン・富士通等が「情報銀行」の実証実験を実施。

所管する総務省および経済産業省は昨年6月に「情報銀行」の認定に係る指針を公表し、同12月から認定申請の受付が開始された。IT連盟は、総務省および経済産業省が定める「情報信託機能の認定に係る指針Ver1.0」に基づく情報銀行の認定団体で、今回の2社への認定はその第1号となる。

しかし、今回の認定は「P認定」と呼ばれる仮免許にすぎない。

「P認定」は急場の御朱印状

そもそも「情報銀行」とは、個人が信頼できる事業者に自らの意思で預けたデータを、その事業者を通じて企業などの第三者に提供し、その報酬が金銭やサービスのかたちで個人に還元される仕組みだ。

今回2社に与えられた「P認定」は、「情報銀行」の運営計画がサービス開始可能な状態にあることを認定したに過ぎず、具体的な中身はまさにこれから。ビジネスプランが詳細に詰め切られているわけではない。ではなぜ「P認定」が急がれたのか。

「そもそも『情報銀行』のサービスは、『情報銀行』の認定を受けなくても提供することができる。IT連盟はそのお墨付き機関にすぎない」(メガバンク幹部)というのだ。

「P認定」はIT連盟が存在感を示すために、とりあえず導入した急場の御朱印状というわけだ。かつ、IT連盟が急いだ背景には、華々しく「情報銀行」の構想はぶち上げられたものの、実際の実証実験が追いついていないお寒い実態がある。

医療データの利活用が進めば「情報銀行」は一気に進む

実証実験が盛り上がらない最大の壁は、「情報銀行」の活用で期待値の高い[1]クレジットカード番号、[2]銀行口座番号、[3]要配慮個人情報が当初、「情報銀行」の対象範囲から除かれていたためである。

企業が金銭を払っても得たいコア情報が除かれているのでは魅力に乏しかったわけだ。しかも、最も「情報銀行」の担い手として有力視される銀行は、銀行法の縛りから現状では本体で手掛けることはできず、「銀行業高度化等会社」という子会社を通じて行うしかない。

その後、総務省および経済産業省の指針見直しの検討会で「情報銀行」の対象範囲の見直しが行われ、[1]のクレジットカード番号や[1]の銀行口座番号は認められたが、[3]要配慮個人情報は除かれたまま。そして最後まで聖域として残ったのが、要配慮個人情報のうち最もニーズの高い「医療データ」の利活用で、日本医師会の反対で実現の目途が立っていない。

医療データの利活用が進めば、患者の情報を医療機関間で一元化でき、医療の効率性は格段に高まることは確実。にもかかわらず医師会の反対は根強い。「健康・医療データは情報銀行より医療業界の中で扱うほうが安全だ」というのが理由だが、そこには既得権益を守りたいとする医師会の思惑が見え隠れする。

だが、すでに「健康・医療データの利活用」に関する先駆的な実証実験も進められている。三井住友銀行が総務省の委託事業として、日本総合研究所、大阪大学医学部付属病院とともに実施した「医療データの利活用」がそれだ。同実験は、総務省の委託事業が終了した今も続けられている。

「情報銀行」が広く社会に浸透するかどうかは、医師会の壁を超えられるかにかかっていると言っても過言ではない。