「美容外科治療を皆のものに!」という相川 佳之代表の想いからスタートしたSBCメディカルグループは、今や日本でその名を知らない人はいないほどの存在となった。しかし、相川代表のゴールは、まだもっと遠い先にある。
「SBCメディカルグループ 代表・相川 佳之流 美容医療を変える情熱経営」の連載最終回となる本稿では、相川代表が“世界一”にこだわる理由と、世界一の医療グループを目指すリーダーとしての自負を語る。
※本企画は2018年にSBCメディカルグループ内で行われた講演を基にしています。
美容外科業界のタブーに挑み、風穴を開けたSBC
相川代表の開業医としてのスタートは2000年、神奈川県藤沢市で湘南美容外科クリニックを開いたことに始まる。相川代表によると、当時、美容外科業界には多くのタブーが存在したという。
例えば、料金表を明示するクリニックは皆無に等しかった。また、治療後のキレイな写真だけをホームページに掲載し、治療による一時的な腫れが起きている写真などは公開しないのが普通だった。
こうした業界の常識を打ち破り、お客様本位の治療・サービスを提供したいというのが、開業の大きな動機でした」と相川代表は振り返る。
相川代表は自院のチラシやホームページに、治療メニューと料金をわかりやすく明記。また、治療前後の比較写真だけでなく、施術直後から完了までの経過写真も積極的に公開した。
「業界のタブーに挑むと、どうしても業界内での風当たりは強くなるものですが、それを上回る患者さんからの支持がありました。“あらかじめ料金や治療の経過がわかるので安心”と喜んでもらえました。自分のやっていることは間違っていないと勇気が出ましたね」(相川代表、以下同)
治療費の面でも、当時は両脇の脱毛が100万円、シワ取りのボトックス注射は1回10万円が相場だったというが、相川代表は企業努力を重ね、現在では両脇脱毛5回1000円、ボトックス注射1回8800円を実現している。
「ユニクロを創業した柳井 正氏の言葉で、感銘を受けた言葉があります。“世の中に既にある商品でも、値段が高くて買えない人にとっては、その商品は存在しないに等しい。価格が下がることによって買えるようになれば、全く新しい商品が出来たのと同じことだ” というものです。私も美容外科治療を、誰でも受けられる価格にしたかったのです」
2050年迄に10000院で世界一になる!
タブーの多かった美容外科業界のイメージを身近なものに変え、新たなスタンダードを生み出したことで、SBCは多くの患者の信頼を勝ち取ってきた。その結果、2019年8月時点で、SBCは全国93院を展開するに至り、2018年度の年間来院者数 は186万4585人を達成した。
低価格が強みのSBCだが、2018年11月に個室を完備した銀座院を開業している。
「“料金は高くてもいいから、個室でゆっくり施術を受けたい”という患者もいます。誰もが気軽に受けられる低価格を追求する一方で、今後はプラスαの価値を求める声にも応えていきたいです」
また、2016年からは、美容外科以外の医療分野にも進出を始めた。両国の湘南メディカル記念病院では、人工透析、消化器外科、長期療養が提供され、チャンスがあれば、救急病院も経営したいと考えているそうだ。
海外進出については、既にベトナムのホーチミン院、アメリカのサウザンドオークス院があり、更にアジアを中心に開院していく計画がある。
「2019年度中に全国100院を予定しています。2035年には、1000院で日本赤十字社 を抜き、日本一患者数の多い病院になります。また、2050年には、海外を含めて10000院で、世界一になります!」
世界中の人々に、SBCが誇る“安心価格で質の高い医療・サービス”を届けるのが相川代表の悲願だ。
“ナンバーワン”へのこだわり 2番は100番と同じ
相川代表が世界一にこだわるのには理由がある。
「私は、1番と2番には大きな差があると思っています。日本一の山は富士山とみんな答えられますが、“日本で2番目に高い山は?”と聞かれたら、大多数の人が“わからない”と答えるでしょう。日本で100番目に高い山も、知らない人がほとんどのはずです。つまり、1番と2番の間にある差は、2番と100番の差よりもはるかに大きいのです」
人類で最初に月に行ったのは、宇宙飛行士のニール・アームストロング。世界一長大な遺跡は、万里の長城。世界一は必ず人々の記憶に残り、歴史にも名が残る。そういう意味で、世界一であることは、何にも代えがたい価値があると、相川代表は考えている。
それを踏まえて、セミナー参加者にこうメッセージを送った。
「自分が置かれた場所で1番を目指してほしい。掃除の丁寧さで1番でもいいし、誰より早く出社する1番でも良い。500人中5番になるより10人中1番の方が、自信がつきます。“自分はこれで1番になる!”と決めて、達成出来たら、人生が激変します!」
“看護師・医師の育成”“貧困の子どもたちの支援”で未来を創る
SBCを世界一の医療グループにする上で、相川代表が欠かせないと考えているのが、“医師・看護師の育成”と“貧困の子どもたちの支援”だ。
「SBCのマインドを持った医師・看護師を育成し、世界に送り出したいと考えています。看護師育成については、近い将来、看護学部を開設すべく関係各所と準備を進めているところです。医学部の開設は大掛かりな計画になる為、2035年を目標にしています」
貧困の子どもたちの支援をする理由は、未来を担う子どもたちの健やかな成長を願ってのことだ。
「世帯年収120万円以下、月収10万円以下の貧困家庭 では、片親が多く、子どもの教育と食事に十分な手を掛けられないケースが多く存在します。さまざまな団体がそうした子どもたちに手を差し伸べていますが、SBCでも2018年9月から、渋谷にあるSBCの看護師寮の一室で、週1回、英語の先生を招いて子どもたちに授業を行い、食事を提供する取り組みを始めました」
こうした“未来をつくる”活動は、今後も継続して行っていくという。
自分を高めて、ナンバーワンに相応しいリーダーへ
SBCの組織としての規模は、2016年~2018年の2年間で約1000人から約3000人へと3倍に拡大した。2020年には5000人になる予測だ。成長の加速度が増したことで、相川代表が気をつけなければならないと考えているのは、結束力の弱化だ。組織が大きくなればなるほど、全員で心を合わせて、同じ方向に走るのは難しくなる。
「実際この数年で、急成長にカラダが追いついていないと感じる場面も出てきています。社員全員で一枚岩になれるかどうか、今が踏ん張りどころですね。成長には苦しさが伴いますが、“苦しい時ほど成長出来るチャンス”だと思っているので、ここを乗り越えて、みんなで成長していきたい」
相川代表は、これまで以上に社員教育に力を入れるとともに、自身のリーダーとしての在り方にも厳しい目を向けている。
「これまでの私は、自分の中にある情熱の力でひた走ってきました。しかし、多くの社員を抱える今、私がひとりで情熱をたぎらせているだけは不十分だと気づいています。社員に変化や成長を求めるなら、リーダーである私こそ変化し、成長しなくてはなりません」
相川代表は「正直、今の私では素養が足りません」と告白する。ここまでの経営者が、これ以上にどうやって素養を身につけるのか――。
「手本となるリーダーに学び、自問自答を繰り返しながら、逃げずに自分を磨いていきたい。厳しい道と楽な道があったら、私は厳しい道を選びます。そして、必ず世界一の医療グループを引っ張っていける人間になります!」