これからの社会に求められるメタ知識を身に着ける【社会情報大学院大学:実務教育研究科】

2020.12.9

社会

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これからの社会に求められるメタ知識を身に着ける【社会情報大学院大学:実務教育研究科】

先端教育研究所 研究所長・川山竜二氏

少子高齢化による生産人口の減少や人材の流動性が高まる昨今、企業・組織の中では人材育成の重要性が高まっている。しかし、職場において徒弟制度的な「暗黙知」による教育が根強く残る日本では、言語化などによる“ナレッジ化”が遅れ、AIやRPA導入の障壁にも。そんな社会のニーズを受けて、高田馬場にある社会情報大学院大学(学校法人先端教育機構)では、2021年4月から、社会において実務経験を積んだ“組織内人材育成のプロフェッショナル”を社会に送り出すための新たな研究科「実務教育研究科」を開設する。

学位の取得が可能、文科省の認可を受けた「実務教育研究科」

社会情報大学院大学(東京都新宿区、学長:吉國浩二)は、2021年4月に「実務教育研究科」を開設する。企業などでの実務から得られる現場の「実践知」を体系化すること、それを基に新たな教育を生み出すことを目的としている。文部科学省の設置認可を受けたこの研究科では、2年間の課程を修了すると「実務教育学修士」(専門職)の学位を取得できる。

社会情報大学院大学は、2017年4月に創立。広報・コミュニケーション戦略を立案・実行する人材を育成する専門職大学院だ。設立当初は広報・情報研究科のみを設けていたが、2018年には短期プログラムの「実務家教員養成課程」を用意した。この養成課程は現在7期目を数え、これまでに300名以上が受講。修了者のうちおよそ2割が、大学などで実務家教員として教壇に立っている。今回の新研究科は、学位が取れる正式課程であり、同学2つ目の研究科となる。

「実務家教員養成課程」授業風景

Society 5.0時代は知識のフォロワーではなく知識のリーダーに

実務教育研究科(実務教育専攻)を新設する背景は、日本政府が提唱する未来社会のコンセプト「Society 5.0」にあるという。

人類誕生から今日に至るまで、社会は技術革新によってバージョンアップしてきたといえる。灌漑技術や定住生活が根付いて、狩猟社会(Society 1.0)から農耕社会(2.0)へ。18世紀末には蒸気機関車の発明などがあって大量生産の工業社会(3.0)へ、20世紀後半にはコンピュータが発明されて情報社会(4.0)へ。そして政府は、次に目指すべき社会像として「経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」を提唱した。これが「5.0」にあたる。

研究科長に就任予定の川山竜二氏は「ここで注目すべきは、4.0から5.0への転換においては、めざましい技術革新があるわけではない点です」と指摘する。内閣府の説明によれば、Society 5.0では、情報社会の延長線上にあるIoTやAI、ビッグデータ解析、ロボットといった技術を用いて、これまでうまく活用できていなかった知識や情報を掘り起こし、分野横断的に連携させるなどして生かす。そうすることによって「新たな価値や産業を社会にもたらす」という。

川山氏は「知識や情報の生産、流通には、5GやGIGAスクールといったインフラの整備(ハードウエア的アプローチ)と、異なる分野の知識と知識を結び付けられるような俯瞰の視点を持つ人材の育成(ソフトウエア的アプローチ)が欠かせない」と話す。後者に寄与するのが、新しい研究科だ。

「Society 5.0で目指す超スマート社会では、知識が最大の資源になります。知識を創造し、他者に共有して普及を図り、活用してまた新たな知識の創造につなげる。このトライアングルを加速させることが重要です。知識が陳腐化するスピードが速まる一方、人生100年時代に突入することから、『生涯学び続けるべき』との言説も聞かれますが、それ以上に大切なことは、知識を消費する側から知識を生み出す側へ、立ち位置を変えること。実務経験を言語化し、知識として体系化できるようになれば、それが可能になります」(川山氏)

知識を持つ者(知識労働者)と持たざる者(サービス労働者)で格差が広がることが予想されるSociety 5.0の時代。実務教育研究科では、知識そのものではなく、知識を活用するための“メタ”的な能力の獲得を目指す。知見を整理して知識を創造する力や、新たな知識を社会に実装させる力を身に着けるための科目を用意したという。

研究能力を持った実務家教員のニーズが拡大中

実務教育研究科への入学者として想定するのは、自分の頭の中にある「暗黙知」を体系化したい人や、企業や組織にある知識を体系化して組織の人材育成や成長に還元したい人、教育プログラムを開発して教育事業を興したい人、教職課程とは異なる新たな研究・学びを目指したい人などだ。

社会人が入学することを想定し、平日夜間と土曜日に授業を行う。修了要件は32単位の取得と、専門職学位論文の作成である。例えば、大学のゼミに相当する「探究基礎演習」(1年目)、「探究演習」(2年目)は通年で4単位。教育実習に代わる演習ができる「実践教育プロジェクト演習」も通年で4単位だ。

専門職学位論文のテーマは例えば、各種学校の設置計画構想や、自らの「経験知」の「実践知」化とそれを教える授業の設計などである。同学が2018年から提供している実務家教員養成講座と新設する研究科の一番の違いは、研究科では論文を執筆して学位が取れる点だ。

政府は高等教育における実務家教員の登用を促進している。実務家教員になるには、実務経験・実務能力に加えて[1]大学での教員経験、[2]専門職学位、[3]企業での実務に係る研究実績のいずれかが必要と定義されている(専門職大学設置基準第三十六条) 。新研究科を修了すれば2つ目の項目が満たせる。川山氏によれば「研究能力を有する実務家教員が不足しており、社会に求められている」という。

吉國学長は、新しい研究科を設置するにあたり、以下のように抱負を述べた。

「複雑化する現代社会において、教育の重要性は誰もが認めるところだ。今後は学校教育や企業内教育に加え、リカレント教育(社会人の学び直し)もより多くの役割を果たすだろう。変化の激しい時代に未来の担い手となるのは、物事を深く洞察し、共通の俯瞰的要素を導き出し、新たな知を形成する人材である。新たな研究科では、実務上の実践知識を形式知化、高度化、理論化し、教育へと昇華させることを目指す。アカデミアと産業界をつなぎ、新たな知を社会へ還元する人材を育成していく」

社会情報大学院大学 実務教育学修士(専門職)

修業年限:2年間

授業日:平日夜間・土曜日

入学時期:毎年4月

入学定員:30人

入学試験:書類選考、筆記試験、面接試験

学費:入学金10万円、授業料110万円(単年)

 

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社会情報大学院大学は高田馬場駅から徒歩5分のロケーションに校舎があるが、2021年度からオンライン入学にも対応。全国から入学・科目履修が可能で、移動中や出張時にも授業を受けられる。また、授業の様子は動画収録し、欠席した場合や復習したい場合に後から視聴できるようにする。

 

社会情報大学院大学(高田馬場)