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価格競争が逆効果…小資本では生き残れない航空業界

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1990年代後半、大手の寡占状態だった航空業界に風穴を開けるべく、国交省は航空運賃の一部を自由化するなど規制緩和を実行。スカイマークや北海道国際航空(現AIRDO)などの新興航空会社が相次ぎ就航しました。
しかし、大手(JAL、ANA)も運賃を下げる激しい競争のなかで、新興航空会社は単独で生き残るのが困難になり、いまは大手との出資を受けている会社がほとんど。国内3位の独立系航空会社スカイマークも国際線の事業計画がうまくいかず、苦境に立たされています。
1990年代後半以降の航空行政は運賃の引き下げなどのメリットももたらしましたが、かつての大手の寡占状態に戻りつつあります。

ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説

Q.どのような規制緩和が設けられたのですか?

A.簡単に言えば、日本人であれば日本の航空会社に参入してもいいよ、発着枠もあげるよ、とハードルが低くなりました。

 航空会社は装置産業(生産、サービスに大型の設備やシステムが必要な産業)なので莫大な投資が必要になります。飛行機は高いから。規制緩和で価格競争が起きれば、小資本の会社は生き残れません。

Q.規制緩和されていても、新興航空会社が生き残れないのは、なぜですか?

A.タクシー業界などもそうだけど、規制緩和し過ぎて価格競争になると、”安全”を売るものには問題もつきまといます。

 飛行機は墜落すれば大惨事ですから、整備には一番力を入れます。そのノウハウや人員は大手でないとなかなか確保できません。だから、新規参入組も大手に外注して整備をしなければならない。自前では飛行機が少なくて、コストが高くなってしまうから。
 それに、大手が価格を落としてきたら、競争は辛いでしょ。ということで、世界を見渡しても、そんなに航空会社は多くないのです。最近でこそ、LCC(格安航空会社)が出てきましたけどね。

 アメリカでは以前、競争が激化してパンアメリカン航空など、大手の破綻が相次ぎました。日本でも東急グループが日本エアシステムという会社を持っていましたが、日本航空と合併せざるを得なくなってしまいましたからね。
 規制緩和したからといって、経済合理性が働くわけではないし、業種によっては規制緩和が行き過ぎると、粗悪なものになってしまう場合もあります。
 それから、航空法という法律があって、外国人は3分の1以上の株式を持つことができません。電波などもそうですが、安全保障と深くかかわっています。(佐藤尊徳)
[参考:「航空行政 手詰まり 競争促す政策、思惑外れ」(日経新聞3面 2014年7月30日)]

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