2014年秋からの臨時国会での成立を目指す大型法案が「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(IR推進法案)」で、いわるゆカジノ法案だ。2013年12月に自民党などの国会議員による超党派組織「国際観光産業振興議員連盟(カジノ議連)」が国会に法案を提出、これまで審議が進められてきた。
正式名は一見難解だが、要は”カジノがウリの大型リゾートを造るために、地ならしするための法律案”で、これが成立しても、すぐさま賭博場は開けない。そもそもカジノは日本ではご法度。だから合法化しなければならず、ほかにも関連する法律の見直しや新設、規制緩和などクリアすべき事柄がテンコ盛りなのだ。
同法案のポイントは下記の5つ
- 政府が「カジノ管理委員会」を設置し、一元的に監督
- 管理委は内閣府の外局が統括
- カジノ施設の運営は民間(公営ギャンブルではない)
- 「IR特区」を設定しこのなかでだけ賭博を認める
- IRは「国際競争力の高い滞在型観光」「地域経済振興」「カジノ収益の社会への還元」の3つを目指す
特に注目は[2]の外局をめぐる綱引きで、数兆円にも上る利権を実際問題どこの省庁が握るかだ。現在、競馬=農水省、競艇=国交省、競輪・オートレース=経産省、スポーツ振興くじ(totoなど)=文科省、宝くじ=総務省、パチンコ=警察庁が監督。カジノができると、彼らの権益が荒らされかねず、この辺りの攻防戦も激しくなりそう。また”金のなる木”がなかった厚労省がギャンブル依存症をキーワードに触手を伸ばしているという。ただ、与党の公明党が難色を示している上に、カジノ推進派であった女性閣僚が次々と退任に追い込まれているだけに、スムーズに法案が成立するか予断を許さない状況だ。
獄中より申し上げます――大王製紙元社長、あの井川意高氏がカジノ法案を語る
ファミリーが経営する会社から借入れた60億円弱(公判中に全額返金済)をギャンブルにつぎ込み、特別背任の罪で実刑4年の刑が確定、収監された井川氏が、獄中からカジノ法案に対してコメント。本誌だけの独占掲載だ。
井川意高 いかわ もとたか
続きを見る「ギャンブル中毒で身を持ち崩すのは自己責任」
「(IR推進法案について)反対する理由はありません。すべては自己責任です。日本はあらゆることを国の権力で規制しようとする。その上に国民自らが、国家に個人の行動の自由を縛ってもらうよう働きかけるというのは、とても不思議なこと(反対論者)。
私は自分が愚かだっただけ。ギャンブル中毒で身を持ち崩すのも自己責任。他人や国家が心配してくれる必要はありません。『ギャンブル資金に困って犯罪を犯す』危険性を言うなら、株もFXも、その他の投資や、起業だって失敗すれば金に困るのは同じ。『資金繰りに困った経営者が強盗をするかもしれない』からと起業を禁止しますか?
国家の介入は、あらゆる分野において最小限であるべきだし、個人や企業の活動の自由は最大限尊重されるべきだと思います」(井川意高)
「政経電論」的 カジノ法案考察
カジノ法案には、諸手を挙げて賛成とは言わないが、反対する理由もない。本稿で述べている通り、治安の悪化に関しての議論はナンセンス。一大観光地という位置づけで、逆に治安が良くなることはあっても(警備が行き届くはずなので)、治安が悪くなることはなかろう。
また、依存症の議論は、もっとナンセンス。現在も高い依存性率を抱える日本。これは、ギャンブル大国であるからで、特に国民性から来るものではなかろう。パチンコや競馬などは認めておいて、カジノはダメなどという理屈は通らない。アルコール依存症になるから酒を禁じる、というのと同義。まさに過剰なパターナリズム(父権主義)である。
カジノがダメなら、公営ギャンブルや宝くじなど特例的に認めているものも全面禁止しなければ整合性が取れない。それ以外は井川意高氏の意見とまったく同じだ。
少子高齢化が進む日本で、ほかに劇的な経済波及効果のあるものが提案できないのであれば、ただ反対をする人間は無責任と言わざるを得ない。もう少し建設的な議論ができないか。
ただ最近、与党の幹部に聞いたら、大臣の辞任などで審議が遅れているので、今国会でIR法案が通ることはないのではないか、とのこと。
私自身もまずは国会議員の1票の格差について真っ先に議論しろと言いたい。