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今世紀最悪のテロリスト 「イスラム国」はなぜ台頭したのか

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首謀者はアルカイダと入魂のテロリスト

シリアとイラクを股にかけ、独立宣言を謳ったイスラム教スンニ派系の国際テロ組織「イスラム国」。超大国のアメリカを筆頭に世界中が目の敵にしている。そのリーダーはアブー・バクル・アル・バグダディで、自らカリフ(最高指導者)を名乗る。2004年頃からアルカイダと連帯するテロ組織に加わるが、アルカイダの直系ではない。

なお「イスラム国」の兵力は1~3万人と目されるが、定かではない。イスラム原理主義系テロ組織のメンバーやイラク反体制派、さらには「イスラム国」に共感して世界中から集まった若者など、戦士の顔ぶれは雑多だ。

バグダディ
アブー・バクル・アル・バグダディ

急に勢力を伸ばしたナゾ

「イスラム国」の歴史は、1999年頃にイラクやヨルダンで結成されたスンニ派系テロ集団「タウヒードとジハード団」までさかのぼる。2000年代半ばに、国際テロ集団として名を馳せていたアルカイダと合流し、「イラクの聖戦アルカイダ組織」と名乗るが、人的・資金的な提携はなく、単なる”看板借り”だった。

当初の目標は、米英連合軍が統治する新生イラク政府の打倒や宿敵のイスラム教シーア派打破、イラクでのイスラム原理主義国家樹立。その後、アメリカ軍の執拗な攻撃で指導者が次々に殺害されるが、2013年に前述のバグダディがリーダーとして台頭、ほかの過激派組織と合体する形で「イラクとアル・シャム(レバント)のイスラム国」(ISISまたはISIL)と改名する。

その頃、内戦により混乱の渦にあったシリアに拠点を構え、混乱に乗じて勢力を拡大。加えて隣国のイラクでは、実権を握ったシーア派のマリキ首相がスンニ派を弾圧しており、フセイン政権時代のバース党幹部や役人、軍人など反マリキ勢力がISISと合流、一挙に実力をアップさせていく。

特に大きかったのが、反マリキ派が有する官僚機構や軍隊統率のノウハウだ。これを武器に支配地域で国家体制を模した統治機構を確立。加えて支配下に置いた油田や住民からの徴税で得られる豊富な資金力を背景に、戦士への給与支払いや武器調達を実施する。こうして2014年6月、「イスラム国」を宣言、欧州や中国までも版図に加えたイスラム原理主義帝国建設という野望を唱えていく。

ちなみに日本では「イスラム国」の表記が使われることが多く、政府が呼称するISILやISの表記はなかなか浸透していない。国連やアメリカ政府はISILを使用。

国際社会と「イスラム国」の戦い

周囲を取り込み急速に成長してきた「イスラム国」だが、その勢いに陰りが見えはじめているという。資金源の要である原油の密輸による収益が昨今の原油安で大幅下落、戦士への給与支払いが滞っていること。有志連合の空爆作戦が功を奏し、「イスラム国」の戦力が大打撃を受けていること。欧米各国が国内での監視を厳しくした結果、同調者の参戦が先細りになってきた、などが理由に挙げられる。だが2015年に入り、混乱が続くリビアで「イスラム国」の分派が勢力を拡大するなど、彼らのアメーバ的な”生命力”は侮れない。

なぜイスラム教に関わるテロリストが多いのか

実は、イスラム教系のテロ集団は以前から存在する。有名どころとしては、パレスチナの解放をめぐりイスラエルと対決する「ハマス」やイランが支援する「ヒズボラ(神の党)」、アルジェリアの「武装イスラム集団(GIA)」などがある。

一方最近ではナイジェリアの「ボコ・ハラム」やイエメンの「アラビア半島のアルカイダ」など中東やアフリカを中心に続出している。
原因としては、

●2010年から始まった体制への抗議運動「アラブの春」で独裁政権が次々に崩壊、これまで抑圧されてきたイスラム原理主義の反体制派らが混乱に乗じて勢力を拡大させた。

●ネットやケータイ、SNSの普及により情報のやり取りが地球規模かつ瞬時に行われるようになり、各地に散らばるテロ集団が連携しやすくなり、宣伝や同調者の勧誘なども手軽になった。

●経済のグローバル化が急伸したことで、新興国では伝統的なコミュニティが破壊され、地球規模での富の格差が加速した結果、欧米式の概念や文化を敵視する階層が急増。

といった点が挙げられるだろう。

ただ、不思議なことに、極悪非道と呼ばれるアルカイダですら「イスラム国」を敵視する。「敬虔なイスラム教徒すら攻撃し殺害している」というのが理由らしい。

イラクのモスルで、バビロニア時代の貴重な遺跡を壊す「イスラム国」兵士。偶像崇拝を否定するのだという。