“維新”が再び分裂する。維新の党幹事長の選挙応援問題をきっかけに、創業者である橋下徹大阪市長、松井一郎大阪府知事が離党。大阪系議員らを引き連れ、新たな国政政党を立ち上げる意向を表明した。当初はボタンの掛け違いのように見えた今回の騒動だが、真相はそんな単純なものではなかった。分裂劇の舞台裏をリポートする。
引かれた最後の引き金…所属議員の対立が表面化
「大阪維新の会を国政政党化したい。年内に道筋を付けたい」。2015年8月28日、橋下は自ら代表を務める地域政党「大阪維新の会」の会合で、唐突に年内の新党結成を宣言した。
前日、松井とともに国政政党「維新の党」に離党届を提出したばかり。「党は割らない、大阪政治に専念する」という離党の際に交わした約束を、たった一日でひっくり返した。
分裂のきっかけとなったのは山形市長選の応援騒動だ。9月13日投開票の山形市長選には民主、共産両党などが推薦する元防衛省職員梅津庸成と、自民、公明両党が推薦する元経済産業省職員の佐藤孝弘が立候補。与野党一騎打ちの構図で、安保関連法案をめぐる与野党の代理戦争の様相を呈している。
梅津は当初、維新の党にも推薦を要請したが、共産党が推薦に名を連ねて”安保反対”を打ち出していることなどに地元組織が反発。一部の国会議員が佐藤を推したこともあり、維新の党は自主投票に決めた。
ところが、野党連携を重視する柿沢未途が党の決定を無視して山形入りし、梅津の応援演説に参加。橋下に近い大阪系議員らが問題視して柿沢の辞任を求めたが、柿沢が拒否したことで泥沼の騒動に発展した。この騒ぎの最中に橋下と松井は離党、そして新党旗揚げを表明した。
しかし、この騒動は分裂の最後の引き金に過ぎず、真の対立点は別にある。政界再編をめぐる前代表の江田憲司や現代表の松野頼久と、橋下や大阪系議員の対立である。
民主と合流なら出ていきます
維新の党が結成されたのは1年前。橋下が主導して2012年に立ち上げた日本維新の会が分裂し、平沼赳夫らが次世代の党を結成。残った議員とみんなの党から分裂した結いの党が合流し、維新の党を作った。
現在の所属議員を大まかに分類すると大阪選出の「大阪系」が4分の1、結いの党から合流した「結い系」が4分の1、民主党出身の「民主系」が4分の1。残りが特定の色のない中間派。このうち江田や柿沢が主導する結い系、松野や今井雅人が主導する民主系は民主党との合流を模索。維新関係者は「最近も江田氏が陰で民主党幹部と接触を繰り返していた」と明かす。
労働組合とたびたび対立してきた橋下や大阪系議員は、労組の支える民主との丸ごと合流には否定的。江田や松野らによる裏交渉を耳にしていた大阪系議員は秋の代表選で松井を擁立し、民主との合流に前向きな執行部を一新しようともくろんだ。
10月1日に始まる維新の代表選は「史上初、1人1票の代表選」。党所属の国会議員と地方議員、そして一般の党員までもが同等の一票を持つ。
この投票法を主張したのは厚い地盤を抱える大阪系議員だったが、大阪系と対立する国会議員が資金力を背景になりふり構わぬ党員拡張運動を展開。代表就任の可能性が急激にしぼんだと見た松井や大阪系は劣勢となり、事態の打開に向け分党を決めたというのが真相だ。
政治家による政治家のための党再編
大阪系の呪縛から解かれた松野は8月31日、さっそく大手を振って民主党代表の岡田克也と会談。野党再編をめぐって意見交換し、通常国会終了後に政策や選挙に関する協議機関を設置することで合意した。
松野は年内の合流を主張しているが、これは2016年夏の参院選に間に合わせるため。永田町では「来夏の衆参同日選が濃厚」との見方が広がっていることもあり、合流を急ぐ理由となっている。
しかし、民主党の最大支持勢力は全国の労働組合を束ねる連合。連合内には労組と敵対してきた維新への警戒感があり、ある幹部は民主と維新の合流構想は支持しないと公言した。松野も本来は「官公労系議員を除いた民主党との合流」を謳ってきたが、今さら民主の分裂は望めそうもないため、丸ごと合流に傾いたという事情がある。
もう一つの阻害要因は個別の選挙区事情だ。2014年末の衆院選では共倒れを防ごうと民主と維新で候補者のすみ分けが行われたが、調整で合意したのは一部。多くは選挙で対決し、与党候補とともに激しい戦いを繰り広げた。禍根のある選挙区の議員や候補者たちは党の合流に反対論を唱える可能性が高い。
維新の党内では10月の分裂を見据え、残留組と分裂組との間で激しい綱引きが行われている。国会議員、地方議員を問わず頭の中を占めるのは「どちらに行けば自分にとって有利か」という計算だけ。残留組と付くかどうか検討している民主党の議員も含め、「有権者のために」という声は聞こえない。(敬称略)
この人たちが国政政党をつくって何をしたいのかさっぱりとわからない
橋下氏には多少の期待をしていたから、本当に残念。この人、「舌の根も乾かないうちに」という言葉がピッタリだ。コロコロと嘘をつくことがハッキリした。引退するとか言って、そのうち国政に出てきそうな気もする。
大体、地方の首長(橋下、松井両氏)が国政政党をつくるというのがあり得ない。これが野党だから、まだ問題視されていないが、自民党総裁が民間人だったらどうだ? 総理と総裁が別でなければならないし(総理は国会議員)、意思決定が別人ということになる。それに、この人たちが国政政党をつくって何をしたいのかさっぱりとわからない。賞味期限切れだな。
ただ、民主党との合流を画策する松野代表も、もともとは民主党に居て選挙のためだけに維新に移ったのだろうから、こちらも褒められたものではない。”昔の名前で出ています”の烏合の野党連合では、しばらく自民党の天下が続きそうだ。