セクショナリズムからの脱却~第4期ネクストワールド・サミット最優秀賞受賞 スギヤマ・コーポレーションの軌跡
2016.1.12
0コメント2015年11月末に行われた第4期「ネクサミ勉強会」の成果発表会では、スギヤマ・コーポレーションが最優秀賞に輝いた。参加メンバーは平均年齢52歳、異なる部署の本部長5人。半年で彼らは何を成し遂げたのか? その軌跡を追う。
異例の本部長5人を送り込んだワケ
株式会社スギヤマ・コーポレーションの杉山社長は、60年の節目に向けて組織改革の必要性を感じていた。まず各部門を率いるリーダーたちがひとつにならなければならないと考えた社長は、本部長5人を異業種合同勉強会「ネクサミ」に送り込む。だが、5人は自分の部門以外に興味がなかった。月数回の会議で顔を合わせるくらいで、それぞれコミュニケーションを深くとったことがない。社長の狙いはまさに、そういった”セクショナリズム”を壊すことにあった。
株式会社スギヤマ・コーポレーション
杉山静岡県静岡市に互助会、ブライダル、セレモニーの3つの事業本部があり、さらに藤枝、三重の伊勢・松阪にも事業所を持つ従業員718名の中小企業。2015年で創業55周年を迎える老舗。
ネクサミへの参加によって無理やり”横串”を差された彼らは、さっそく目標を設定する。「婚礼誘致」――。しかし、一カ月が経過しても、社員からの情報は20件にも満たない。会社全体ではいろいろな仕事をしているため、目標を追いかける意味が浸透しなかったのだ。
目標を追いかける意味
ネクサミにおいて一番大事なのは、目標の意味を理解すること。”高い高い目標”といわれると、多くの会社がなんとなく「倍」といった設定をするという。でも、そんな適当な理由で社員が動かされたらたまったものではない。勉強会を通して改めて目標の意味を考えていくと、「これでいいのだろうか?」と悩みはじめる。スギヤマ・コーポレーションも例外ではなかった。
部門の壁をぶっ壊せ!
案の定、本部長5人は勉強会で目標の意味を問われても、明確に答えられない。見かねた社長は、ターゲットを「なし婚」誘致に絞ることを提案。目標は、”社員一丸となって取り組む”という思いを込め、社員数と同じ718件に設定された。
「なし婚層」
「なし婚層」とは、入籍はしたが挙式はしていないカップルのこと。営業しても成果が上がりづらく、多くが少人数のため単価も低い「なし婚層」は、これまで積極的に追う対象ではなかった。改めて調査すると、「なし婚層」は結婚した夫婦の実に50%に及び、8割近くが挙式しなかったことを後悔しているという。
「なし婚層」は、挙式をしたかったけど何らかの理由でできなかった人たち――。その考えが経営理念にある”人と人とのつながりの創造”とリンクした。さっそく「なし婚層」向けのキャンペーンを実施すると、予想をはるかに超える反響が。同時に、結婚式への憧れや夢など、今まで触れることのなかったお客さんの思いを知ることもできた。
この体験で自分たちの目標に確信を持った5人は、それを社員にも積極的に発信。すると、5人と同じように社員も共感し出し、ついに各部門が目標に向かって動きはじめたのだ。互助会、ブライダル、葬儀の3部門が連携したチームが編成され、本部長は5人揃って各事業所を巡り、進捗を逐一報告。そうして社員から集まった情報は、665件に及び、内141件が成約。2億4千万円の売り上げをたたき出したのだ。
各部門が目標に向かって動きはじめた
本部長5人でやる意味。それは、全社員を動かさなければいけないということ。「社員が頑張ることと5人が一つになることはイコールです」(ネクサミのコンサル森憲一氏)というように、5人が方向性を決めたと同時に、会社は一気に動き出した。「思いがあって、目標があって、アクションしたらお客さんが価値を教えてくれて、自分たちもそこからホントに『動くぞ!』という気持ちになった。自分たちの体験があるので、かつて動かなかった社員への伝え方も以前とは違います。そうすると従業員も動きはじめます。期限まで残り1カ月で本格的に動き出しましたが、追い込みがすごかった」(森氏)。
目標は未達だったが、ネクサミを通して「目標の先にある価値を伝えることの重要性」を知った同社。効率を追い求め、分業が進んだ組織はセクショナリズムに陥りがち。それを打破するには、社員が目標の先にある価値に共感・共鳴することが必要なのだ。そうすれば、それまでになかった成果を生み出すこともできる。
まるでドラマのような展開で組織改革を果たしたスギヤマ・コーポレーション。「なし婚層」誘致のパイオニアとしての道は険しいが、部門の壁を超えた体験が道を切り拓いていくことだろう。
パイオニアとしての道
「『なし婚』を拡大することで、”結婚式は後で挙げてもいい”という人が増え、レギュラー結婚式がますます減るかもしれないリスクがありました。そうなるのはだいぶ先の話ですが、手を付けるからにはそこまで考えなければなりません。売上達成のためにはいずれ静岡の市場だけでは足りなくなってくる。他県、ひいては全国展開する覚悟がないと、自分の首を絞めることになる。でも杉山社長はそこまで覚悟していました。社長とコンセンサスが取れていたので、僕らも思い切って彼らの士気を高めるアドバイスをすることができました」(森氏)
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