LINEは11月27日、みずほフィナンシャルグループ(FG)と共同でネット銀行「LINE Bank」を設立すると発表した。LINEが51%、みずほ銀行が49%出資する。金融庁への認可申請を経て2020年の開業を目指す。
銀行は“LINE経済圏”の総仕上げ
LINEは、今年1月に金融子会社LINE Financialを設立し、既存の事業者と組むことで矢継ぎ早に金融事業を強化している。
主力のスマホ決済サービス「LINE Pay」を中核にして、損保ジャパン日本興亜と提携して「LINEほけん」、野村ホールディングスと組んで「LINE証券」、オリコとの信用スコアリング事業「LINEスコア」、FOLIOと組んでモバイル投資「LINEスマート投資」、そして、みずほ銀行、オリコとの個人ローン「LINE Pocket Money」などの金融関連事業を展開しており、「LINE Bank」は、“LINE経済圏”の総仕上げとの位置付けだ。
だが疑問として残るのは、なぜLINEがみずほFGをビジネスパートナーに選んだのかだが、この点についてみずほ関係者は、
「LINEのメインバンクがみずほ銀行で、個人ローンや信用スコアリング事業でグループとして協調関係にあるため」と説明する。
また、「LINE Bank」は銀行である以上、みずほ銀行と競合も懸念されるところだが、「LINE Bankとみずほ銀行はメインとなる顧客層やライフステージ、求めるニーズに応じて棲み分けができる」(みずほ関係者)とウィンウィンの関係を強調する。
LINE Bankの主なターゲットは学生などの若い世代で、生活に付随する小口の資金ニーズに応える。みずほ銀行は、それよりも若干、上の年齢層を対象により大口の資金ニーズに応えるという構図だ。
デジタルネイティブをとり込みたいみずほ、新たな収入源が欲しいLINE
両社が組むことは自然な流れとみられるが、舞台裏では双方とも歩みよらなければならない差し迫った動機があったようだ。
発表会見でみずほFGの岡部俊胤副社長は、「(当行は)旧来型の銀行と言うとあれだが……。われわれが苦手としている若い層と接点を持つことが第一の目標だ」と提携の狙いを吐露したように、みずほは、「デジタルネイティブな金融を早急に強化する必要に迫られていた」と関係者は明かす。
みずほはすでにソフトバンクと組んで顧客データとAIを駆使したスコアレンディング「J.Score」を提供しているが、これも同じ狙いと言っていい。いずれもスマホという新しいチャネルを介した若い世代の取り込みに狙いがある。
一方、LINEは、主力の対話アプリの成長が頭打ちとなり、新たな収益源の確保に迫られていた。
国内の月間アクティブユーザー数は今年9月末時点で約7800万人と前年に比べ1割増えたが、海外の主要国は1割減の約8700万人にとどまる。また、直近の2018年7~9月期の金融事業を含む戦略事業の営業損益は88億円の赤字で、前年同期から赤字幅が45億円も拡大した。金融事業のテコ入れは待ったなしとなっている。
さらに悩ましい課題は、金融庁による規制強化の流れだ。LINEは現在、資金決済法上の資金移動業者に位置付けられるが、LINEの利用者が拡大するなか、銀行口座やATMからアプリに入金したお金がそのままアプリ上に滞留するケースが多くなっている。本来、資金移動業者のお金はすぐに決済に回されるというのが法律のたてつけになっているが、滞留することで一種の“疑似預金”化しているわけだ。
このため、金融庁では実態に合わせた規制が必要ではないかとして、金融審議会で議論が進められている。つまり“疑似預金”であれば、銀行と同じように預金保険の負担やマネロン対策など厳しい規制が課されることになりかねない。であれば銀行に設立して本格的な金融サービスを提供するほうが近道というわけだ。
既存の銀行が、競争相手となりかねない新設銀行を黒子としてサポートする――。一見、矛盾する「LINE Bank」の舞台裏では、それぞれの思惑が働いている。