東芝の「不適切会計」が「粉飾決算」とは違う理由

2015.7.21

企業

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 歴代3社長が現場に圧力をかけるなどして、“経営判断としての”不適切な会計があったとされる東芝

 第三者委員会のまとめた調査報告書によると、不適切会計は第三者委員会認定の1,518億円に加え、東芝の自主チェック分が44億円。長期プロジェクトの採算を管理する工事進行基準と呼ぶ会計処理で、損失計上を先送りするなどしていました。この1,562億円は、税引前当期純利益の3割近くに及びます。

 この件で、東芝の田中社長や前社長の佐々木則夫副会長ら取締役16人が辞任し、社長職は室町正志会長が会長と兼務します

ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説

Qなぜ利益の3割もごまかしていた人間が辞任だけで逮捕されないんですか?

A“利益の操作”で”粉飾”ではないから。

 架空売上や循環取引など、もともとなかったものを利益につけるように”指示”をしていたら刑事事件に発展するけど、そこまでではないのでしょう。

 利益の付け替えで、来期以降に出るであろう利益や、損失計上を来期に遅らせたりして、利益をかさ上げしたのであって、粉飾(売上にないものをつける)ではないし、上司は部下に相当なプレッシャーをかけていたとは思われるけど、「そうしろ」と指示したわけじゃないようだから。

 でも、上場企業としてこんなこと言語道断だよね。


Q東芝は今後どうなるのですか? 企業イメージの低下は避けられないですよね……。

Aどうにもならないよ。一時的にはいろいろと凹むだろうけど、屋台骨を揺るがすような話じゃないんじゃない?

 本当は、こういう企業には市場から退出してほししいけど、消費者はこういう事件で「商品を買わない」ということにはあまりならないよ。それに東芝はB to CよりもB to Bの商売が基本で、重電(発電設備や工場などの設備)が稼ぎ頭だからね。

 オンリーワンの商品も多いから、取引停止にはならないと思う。市場からの信用はしばらく失うだろうけど、(2011年に粉飾決算した)オリンパスも今では見事に立ち直っているから、東芝も経営陣が変わって立ち直ると思うよ。

[参考:「東芝、組織的に利益操作 1562億円、トップ関与」(日経新聞朝刊1面 2015年7月21日)]

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