F-35A墜落事故が純国産戦闘機F-3開発の“対米カード”に

2019.04.22

政治

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八戸沖に墜落した空自のF-35Aの同型機(航空自衛隊)

訓練中に墜落したF-35A機の捜索が続くなか、原因が明らかにならないことでF-35Aというアメリカ製の戦闘機自体に疑問が出てきている。日本は現在、老朽化したF-2機の代わりに純国産機F-3の開発を目指しているが、日米共同での開発は、アメリカの言いなりになってしまったF-2の二の舞になってしまう可能性も高い。もしF-35Aの機体に問題があるとしたら、この交渉も絵が変わってくるのだが……。

アメリカはある程度の情報開示をせざるを得ない

2019年4月9日、航空自衛隊が配備を進める最新鋭ステルス戦闘機F-35A、1機が青森県八戸沖の太平洋に墜落。パイロットの消息は4月22日現在も不明だが、とにかく無事を祈りたい。

本機の墜落は世界初のケース。しかも事故現場は陸地から100㎞以上離れた太平洋の遥か沖合、かつ水深1500mの深海だけに機体の捜索・回収には困難が伴うだろう。

ただし、“最高軍事機密の塊”だけに日本はもちろん、開発を主導したアメリカからは焦りさえ感じる。とりわけアメリカ側の調査は異例なほど大掛かりで、三沢基地から米海軍第7艦隊所属のP-8Aポセイドン哨戒機、横須賀基地から「アーレイバーク」級ミサイル駆逐艦(イージス艦)「ステザム」を現場に急派、また、韓国の烏山(オサン)基地からU-2高高度偵察機も上空からの捜索任務に当てた。極めつきはB-52戦略爆撃機の投入で、機密奪取をうかがう中露の動きを牽制する意味合いがあるのだろう。

捜索任務から三沢基地に帰還した米海軍のP-8ポセイドン哨戒機(米第7艦隊)

墜落原因については機体が未回収のため不明だが、仮に本機の構造的・システム的な不都合が原因だとしても、それ自体が“国家安全保障上の機密”であるため、F-35Aのブラックボックスを管理するアメリカが真相を公にする可能性は低いだろう。しかし、日本を始めF-35シリーズの導入を決めた同盟国の政府には、守秘義務を条件に、ある程度の情報開示をせざるを得ないはずだ。

ちなみにF-35シリーズ(標準型の「A」、短距離離陸/垂直着陸=STOVLの「B」、空母艦上機の「C」の3タイプ)の開発には程度差はあるものの採用国の大半が経費を負担、多国籍による共同開発(国際協同)の機体であるため、いくらアメリカ主導といえども“完全黙秘”を貫くのは難しい。

これを強行すればアメリカに対する同盟国の信頼は地に堕ち、さらに「危ない戦闘機に自国の大事なパイロットを乗せられない」との理由で導入をキャンセルする国が続出しかねない。

F-3の独自開発は時間的にも予算的に無理がある

さて、こうしたなか、「今回の事故で日本が研究中の国産戦闘機F-3(将来戦闘機)をめぐるアメリカとの駆け引きで、日本が優位に立てるかもしれない」と、一部でささやかれ始めている。F-3とは、空自が運用する“準”国産戦闘機F-2の後釜となる“純”国産のステルス戦闘機のこと。詳しくは以下の記事に説明しているので参照してほしい。

»次期戦闘機F-3の日米共同開発案に“F-2のデジャブ”との恨み節

F-2は老朽化のため2030年代に退役予定で、これとバトンタッチするかたちでF-3を配備、というのが防衛省や空自の構想だが、独自開発は時間的にも予算的にも無理がある、との声が多い。

戦闘機開発は「最低でも10年の歳月と数兆円の費用が必要」が世界の常識。もちろん戦闘機の“命”であるエンジンの国産については目鼻を付けているものの、開発期間もさることながら、F-2との交代分だけでは100機にも満たず、また戦闘機の輸出実績も無い日本が海外に売り込みをかけても、まじめに耳を傾ける国はまず現れないだろう(国連制裁を受けている国などは別だが)。

となれば、価格はF-35Aの2倍以上の300億円規模になること必至との推測もされている。そこで、「日本側の本音は“日米共同開発”に持ち込むことだが、F-2と同じ轍を踏むことだけは回避したい」と指摘する向きも。

アメリカの技術とノウハウは欲しいがF-2の二の舞は嫌

共同開発は日米同盟を考えれば無難な発想で、開発コストやリスクを分散でき、しかも戦闘機開発と量産化で世界最高のノウハウを持つ天下のアメリカを味方につければ鬼に金棒、2030年代の完成も夢ではない。仮にアメリカもF-3の大量採用に傾けば量産効果で価格もぐんと下がる。事実、「F-3はアメリカの別の戦闘機F-22ラプターのステルス性能と、F-35のネットワーク性能(クラウド・シューティング)の融合を目指すようだ」との“アドバルーン”すら上がり始めている。

クラウド・シューティング

戦闘機は通常複数機編隊で作戦を担うが、個々の機体がセキュアな回線を通じて、燃料や爆弾、ミサイルの状況、位置、敵機の発見といった情報を共有し合い、編隊がまるで1つの機体のように有機的に作戦を展開すること。例えばA機が敵機を発見、有利な位置にあるB機の対空ミサイルを使って隊長のC機が撃墜……といった芸当が可能。将来的には有人機が母体となり複数のドローン戦闘機を従えて出撃、あるいはドローン戦闘機だけで編隊を組み、遠方の基地から指令、という戦い方への発展を見込んだ技術。

だが日本側としては先のF-2開発で苦杯をなめただけに、それを繰り返すことには神経を尖らせる。“苦杯”とはアメリカの横槍だ。

F-2開発は1980年代に本格化し、「次期支援戦闘機(FSX)」として独自開発を目指した。だが途中からアメリカの圧力が加わり、結局アメリカ製F-16戦闘機をベースにした日米共同開発の“国産機”となってしまったのである。アメリカが絶対的優位を誇る航空宇宙分野で日本の台頭など許さないこと、そして戦闘機を大量購入する日本市場の喪失を恐れたことが主な理由のようだ。

F-35Aの事故の原因次第では日本が有利に

つまり日本側は「アメリカの横槍」の再来を警戒しているわけで、さらに「アメリカ・ファースト」を叫ぶ米トランプ大統領の存在を考えれば、“デジャブ”となる可能性は極めて高い。となればF-2のときと同様、共同開発とはいうものの実際はアメリカの言いなりで「開発は俺に任せろ。日本は黙って必要な技術とカネさえ出せばいい」という格好となりかねない。コア技術は当然ブラックボックス化され、日本側は触れることすら難しいはず。

だが、今回のF-35Aの事故が“機体由来”だとすれば、日米共同開発の交渉の場で日本側はがぜん優位に立てるだろう。

例えば「欠陥機のF-35を147機も買わされたとなれば、日本国民の怒りは収まらず、世界最大の親米国・日本が嫌米に傾きかねず、アメリカの世界戦略上極めて由々しき事態ではないか」といった牽制や、「日本の産業界からも『不利な条件でF-3を共同開発するくらいなら、多少高くなっても国益を考えて独自開発を目指すべきだ』との圧力が政府にかかるのは必至」といった論法をアメリカ側に畳み掛け、交渉を有利に持ち込むシナリオだ。

さらに、イギリスやフランスなども共同開発に触手を伸ばしている模様で、これも日本側にとっては有効な交渉カードとなるはず。

後は肝心の“タフネゴシエーター”が果たして日本側にいるかどうかだが、案外これが最大の難関かも知れない。