自民党の顔は誰がいいのか 秋の総裁選大予想

2021.3.1

政治

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自民党の顔は誰がいいのか 秋の総裁選大予想

写真:菅義偉首相(ロイター/アフロ)、石破茂氏(つのだよしお/アフロ)、河野太郎行政改革担当相(アフロ)、野田聖子幹事長代行(片桐圭)、小池百合子都知事(つのだよしお/アフロ)

新型コロナウイルス対応や東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長辞任、菅義偉首相の長男が関与した総務省幹部への接待問題で揺れる菅内閣。発足からたった半年にもかかわらず、内閣支持率は30%台~40%前半と低迷し、秋の総裁選での再選を危ぶむ声が出ている。来年の今頃、内閣を率いているのは誰か。菅首相か、それともポスト菅の誰か、か。大胆予想する。

接待問題に足を引っ張られる菅首相

「私の長男が関係し、公務員が違反行為をすることになり大変申し訳ない」。菅義偉首相は2月22日の衆院予算委員会で、自らの長男が関与した接待問題についてこう謝罪した。

ただでさえ未知のウイルスとの戦いに追われている最中、しかも東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視発言とその後の人事のごたごたがようやく落ち着いたところ。首相としては目下最大の懸案である新型コロナウイルスワクチンの対応に全力を注ぎたいところだが、身内が関与した接待問題で足を引っ張られるのはかなり不本意だろう。

NHKの2月の世論調査によると、内閣支持率は38%で不支持率の44%を下回った。政権発足直後の62%から低下傾向にあり、こうした不祥事はさらにマイナスに作用しかねない。しかも、国民にとってワクチンの円滑な普及は当たり前。仮にワクチンの普及に成功しても支持率を引き上げることにはつながらず、逆に混乱や重大な副反応などからあれば支持率の低下につながりかねない。低支持率のまま今秋の衆院総選挙が迫ってくれば、自民党内で“新たな選挙の顔”を模索する動く可能性がある。

“新たな顔”の可能性を考える

河野太郎:まずはワクチン担当相としての評価

ポスト菅として目下、最注目なのは河野太郎行政改革担当相だ。日本経済新聞の2月の世論調査では「次の政権の首相にふさわしい人」のトップが25%の河野氏。石破茂氏が16%の2位、小泉進次郎環境相が13%で続き、菅首相は6%にとどまり安倍晋三前首相に次ぐ5位に沈んだ。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の世論調査でも上位5人は同じ顔ぶれで、発信力が高い河野氏に国民の期待が集まっていることがわかる。

ただ、2位に入った石破氏も安倍政権時代、「次の首相にふさわしい人」と言われながら、その機を逃し続けてきた。最大の原因は国会議員の支持が広がらなかったこと。2012年、民主党から再び政権の座を取り戻す直前の総裁選では、多くの党員票を集めて第1回投票で首位に立ちながら、国会議員限定の決選投票で安倍前首相に逆転を許した。

当時、安倍氏も「政権放り投げ」の記憶がまだ新しく、安倍氏に批判的な議員は多かった。それにもかかわらず、石破氏が負けたのは多くの国会議員に「石破氏よりは安倍氏の方がまだまし」と思われたからにほかならない。

その点では上役の機嫌取りをせず、自民党文化に染まろうとしない河野氏にも共通点がある。河野氏に勝機があるとすれば小泉純一郎元首相のように、圧倒的多数の世論を味方につけることだろう。その点ではネット上における発信力は高いといっても、小泉元首相と比べると国民に語りかける力はまだまだ物足りない。今後、ワクチン担当相として調整力と発信力を発揮していけるかがポスト菅の大本命になれるかどうかのカギを握る。

石破茂:再び機運は高まるか…?

それでは2位の石破氏に勝機はあるだろうか。結論から言うとかなり厳しいだろう。石破氏は安倍前首相の後継を決める2020年9月の総裁選で菅首相、岸田文雄に次ぐ最下位で敗れた後、敗北の責任を取り自ら率いる石破派(水月会)の会長を辞任した。石破氏を首相に押し上げるために作られた派閥だけに、周囲からは「首相をあきらめ派閥を投げ出した」と映った。石破派は鴨下一郎元環境相らの集団指導体制となり、石破氏は顧問に就任したが、次期総裁選で再び石破氏を担ぐ機運が高まるという可能性は低い。

岸田文雄:地元・広島の参院補選次第では後がない

前回総裁選で首相に次ぐ2位につけた岸田氏も厳しい。2位といっても菅首相に大差をつけられ、石破氏との票差もわずか。しかも、総裁選で多くの露出があったにもかかわらず国民の支持は高まらず、世論調査の「次の首相にふさわしい人」でも菅首相の後塵を拝している。

さらに、岸田氏の地元・広島の衆院3区選出だった河井克行元法相が、妻である案里氏の参院選をめぐる買収事件で起訴され自民党を離党すると、その後任の支部長選任をめぐって指導力を発揮できず、選挙区公明党に譲ることになった。岸田氏に批判的な二階俊博幹事長が後押ししなかったからとの声もあるが、永田町では「地元ですら調整できないのに総理・総裁は務まらない」との批判が噴出する。

広島では河井案里氏の失職に伴う参院再選挙が4月に行われるが「これを落とせば岸田氏の致命傷になりかねない」(自民党議員)。まずは4月の参院再選挙で勝ち抜いた上、党内で存在感を高めていく必要がある。

野田聖子:ジェンダー論議が追い風に

河野、石破、岸田以外の自民党議員でほかに思い当たるのは野田聖子幹事長代行だ。野田氏は過去の総裁選で度々出馬に意欲を示したが、20人の推薦人を集められず断念してきた。ただ、今は東京五輪・パラリンピック組織委員会の森前会長の発言を機に、日本における男女共同参画意識の低さが世界的に注目を集めている時期。無派閥で特定の自民党有力議員の色も付いていないことから、女性活躍の象徴としてポスト菅に担がれる可能性はある。

小池百合子:国政復帰に意欲か

自民党ではないが、女性でもう一人気になるのは小池百合子都知事だろう。東京都は新型コロナウイルス対応に関しても、東京五輪・パラリンピックに関しても特に注目されがち。小池都知事は先頭に立って積極的に発信しており、目線の先に“国政復帰”への意欲を感じ取る永田町関係者は少なくない。2020年の都知事選では二階幹事長との関係の近さも明らかになっており、二階氏ら自民党有力者がポスト菅に担ごうとする可能性もゼロではない。

野党の話がないじゃないか…!次期総裁選大予想

残念ながら野党の誰かが近い将来、首相の座についている想像ができる人はほとんどいないだろう。国会では相変わらず揚げ足取りばかり。内閣支持率が下がっても最大野党である立憲民主党の政党支持率は1桁台に低迷しており、枝野幸男代表も“次の首相”として支持は集まっていない。逆に言うと野党の支持が高まらない限り、与党の危機感も高まらない可能性がある。

こうした状況を総合すると、筆者予想の本命は野党の支持が低迷するなか、菅首相が総選挙でギリギリ勝利し、その後の総裁選を切り抜けるというシナリオ。ワクチンの普及で大きな失態がなく、4月の衆参3補選・再選で全敗を逃れる、という前提だが。ワクチンに関して仮に何かあったときは河野氏も道連れとなるので、その際は総裁選で良い意味でも悪い意味でも色が薄く、女性活躍を世間と世界にアピールできる野田氏を総裁に担ぎ、総選挙を戦うというシナリオが対抗馬か。

大穴は二階氏などの自民党有力者が小池都知事を担ぐというシナリオ。超大穴は選択肢がなく、仕方なく安倍前首相を担ぐシナリオだろうか。いずれのシナリオが実現するにせよ、総裁選と衆院選が重なる2021年は、政治に大いに注目する年となるだろう。