「地方創生」は麻薬か特効薬か 目覚めよ、地方自治体!

2015.5.11

社会

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安倍政権がぶち上げた成長戦略がついに本稼働。青息吐息の市町村にカンフル剤を打ち、人口増加と景気回復の一石二鳥をもくろむが、「平成版”産めよ増やせよ”」との揶揄も聞こえる。歴代政権も実現できなかった地方活性化に不退転の決意で挑むが、果たして死角はないのだろうか?

石破大臣率いる地方創生プロジェクトが目指すもの

地方創生プロジェクトは「ローカル・アベノミクス」とも呼ばれる、アベノミクスの3本の矢の具現化の1つ。出生率アップと地方の活性化を同時に成し遂げる点が特徴で、これを安倍政権は「地方創生」なる造語で端的に表した。

要するに”風が吹けば桶屋が儲かる”の発想だ。「人口増加には子供の増加が必須」→「女性の出産・育児を支援」→「出産時期の高齢化・晩婚化も阻止し、30代までの出産を後押し、世代交代の回転を速める」。さらに、「この動きを過疎化する地方で展開、若い世帯の定住を目指す」→「地方に魅力ある就職先が必要」→「企業誘致や町おこしを加速」。すると地方も復活し、東京への一極集中も改善、おまけに人口が増えれば需要が増え日本のGDPは上向き……と、ざっとこのようなシナリオを描く。

これを達成するため、国はすべての都道府県・市区町村に対し「地方人口ビジョン」と「地方版総合戦略」を作成するよう指示。加えて、国が開放したビッグデータ「RESAS」(リーサス、地域経済分析システム)を駆使するとともに、達成状況をKPI(重要業績評価指数)やPDCAの手法で”見える化”し、地域の自律性と地域間の連携も推進するという壮大なプランだ。

【CONTENTS】

■いま、なぜ、地方創生なのか?
数十年後の日本に起こる衝撃予想

■国が掲げる地方版成長戦略は信用できるのか?

■良いお手本、残念なお手本
小泉進次郎イチ押しの”創生町”も

■民間企業の取り組み
三菱商事復興支援財団

政経電論が考える地方のあり方
道州制こそ地方が生き残る道

地方創生で市町村間の競争は激しさを増し、下手をすれば短期の人口増を目指し、補助金バラマキによる出産適齢期女性の争奪戦に陥る危険性もある。これでは本末転倒で、地方はますます疲弊ばかりだ。これを防ぐには道州制しかない。そもそもカリフォルニア州よりも狭い国土に1700超の市町村と47の都道府県がひしめいていること自体非効率で、また過当競争に陥り共倒れを起こす可能性もありうる。

月並みだが全国を10前後の道州制に再編、市町村も大幅に統合・広域化して、健全な”地方間競争”を促すのが得策だろう。もちろんその先には「連邦制」「大統領制」「憲法改正」といった問題も立ち塞がるが、取り急ぎ緩やかな連邦制的発想からスタートし、中央省庁が握る予算、人材、情報、権益の大半を委譲、各州の自由裁量に任せて広域行政を推進すれば実に効率的ではなかろうか。とにかく現状のままでは、少子高齢化による税収減のなかでの社会保障費急増という重圧で、大半の市町村は窒息しかねない。

産業界でM&Aは当たり前。(独占・寡占はダメだが)中堅クラスの企業が”ドングリの背比べ”を続けていては業界全体の成長すら望めない。道州制による地方行政の業界再編も待ったなしだ。

小さな政府を目指し、地方のことは地方に任せるべき

これまでも地域活性化策はさまざま試みられてきた。しかし、地域振興券の配布、公共事業の拡大など、ムダとは言わないが、その場限りの景気刺激策程度のものしかなかった。

本来、地方自治体の自主性に任せて、国はその手助けをする程度のものでなければ活性化策は永続的には続かない。今は東京都や政令指定都市の一部を除いては、”自治体”として単独で存続していける地域などほぼない。

徴税権は国が持ち、全国一律の税率では、東京圏に人が集中するのは仕方のないことだ。再び東京にオリンピックが来るとあっては、なおさら地方との格差が広がるはずだ。効果が波及していけばいいのだが、今の制度では結局、吸い上げたお金を補助金などでバラまく以外のことをするには限界がある。

成熟社会においては、小さな政府を目指し、国は「防衛」と「外交」と「福祉・医療」などの仕事に限定し、地方のことは地方に任せるべきだと思っている。そうすれば地元の道路や橋を造る政治家が国会議員として当選する構図もなくなって、健全になるだろう。

そこではやはり道州制がカギだ。行政権を地方に移し、地方間のサービス競争を促していくしかない。今よりも地域間格差が出てくるかもしれないが、全国一律のユニバーサルサービスに限界が来ているから、今のような問題(地方創生などの待ったなしの政策)が出てきている。日本は今、根本から国のあり方を考えなければならない時期に来ているのだ。