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日本経済に甘えを生む異次元緩和 日銀・黒田総裁への退場勧告

2016.11.10

経済

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日銀が2016年9月21日に導入した新たな金融政策「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、極めて評判が悪い。マイナス金利政策も狙い通りに市場は動かず、日銀が行う金融政策の限界というものを感じずにはいられない。そんななか、打つ手はまだあると豪語する日銀・黒田総裁。本当に金融市場が見えているのだろうか……。

官製相場極まれり

2016年10月19日、国債市場でドキリとする異変が起きた。長期金利の指標となる新発10年物国債の売買が終日成立しなかったのだ。どうにか翌日には回復したものの、市場のショックはいまだに尾を引いている。

原因は日銀が9月21日に導入した新たな金融政策「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」にほかならない。10年物国債の利回りを0%程度に誘導する新たな金融政策が導入されて以降、長期金利はおおむねマイナス0.1~0%の狭い範囲内で動くだけ。国債価格は変動せず、売買による値ざやを稼げない金融機関は取引を手控えている。「国債ディーラーは開店休業状態」(市場関係者)というお寒い状況だ。メガバンクの国債売買益は営業利益の2割程度を占めるだけに、まさに死活問題なのだが……。

日銀の新たな金融政策は、金融市場調節によって長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」と、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の物価安定目標を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」から成り立つが、これが極めて評判が悪い。あるメガバンクの幹部は、「官製相場極まれりという感を抱いている」とこき下ろすほどだ。

毎月80兆円もの国債を市場から吸い上げる日銀の国債保有残高はすでに400兆円を突破している。国債発行残高の約4割に達する規模で、異次元緩和が導入された2013年4月からの3年半で保有額は3倍に膨れ上がった。国債市場の流動性は極端に枯渇し、金利機能は事実上失われた。この市場の機能不全は長期金利を短期金利のように操作しようとする日銀の傲慢がなせる業と言っていい。市場では「日銀は神の領域に入った」との意見すら聞かれる。日銀は市場の”見えざる手”を操作しようとしているかのようだ。

劇薬マイナス金利の影響

その一方で日銀は、9月、10月と立て続けに金融政策決定会合でマイナス金利の深堀りを見送った。銀行収益に与える影響があまりに大きく、金融機関がこぞって反対したためだ。金融庁も「マイナス金利政策が3メガバンクグループの2017年3月期決算で、合計3000億円程度の減益要因になる」と日銀に圧力をかけた。

この金融機関を死に追いやるマイナス金利という劇薬を発案したのは「黒田東彦総裁、中曽宏副総裁、雨宮正佳理事、内田眞一企画局長の日銀の中枢四人組」(日銀関係者)と言われる。検討を始めたのは2015年夏。「中国発の世界的な株価暴落を受けて追加緩和策のメニューを準備しておこうとなった」(同)という。日銀四人組が手を染めた劇薬マイナス金利の影響はこれから本格化していく。

その影響を最も大きく受けるのは地銀、第二地銀、信金、信組といった地域金融機関にほかならない。地域金融機関は人口減少と企業数の減少というダブルパンチを受け、収益の先行きが危ぶまれている。そこに日銀の量的緩和とマイナス金利が重なり、「国債などの有価証券投資で利益を上げるのはほぼ絶望的」(地銀幹部)と嘆く。活路を見出すため地域金融機関はこぞって大都市圏の不動産融資に乗り出している。だが、競争は激しく利ざやは縮小するばかり。最後は、他行との合併・統合などの再編に乗り出すしかないというのが共通の見方だ。銀行の数が減れば競争が抑えられ、生き延びられる可能性も高まる。

日本経済に”甘え”を生んだ異次元緩和

「もうレームダック(死に体)だな」9月の総括的な検証の直後、日銀内からこんな超えが漏れた。しゃにむに国債を買いまくり、金利低下を促しても物価は上昇しない。黒田総裁が目指す2%の物価上昇率は、18年4月までの残り任期中の達成は絶望視されている。黒田総裁は金融緩和の手立てはいくらでもあると強弁するが、実際は打てる手はもはやないというのが市場の見方だ。

事実、10月31日~11月1日の金融政策決定会合で、日銀は現状維持を決める一方、目標とする2%の物価上昇率達成時期を後ずれさせた。現状を追認するのが精一杯なのだ。そもそも日銀の異次元緩和はアベノミクスの3本の矢の一つで、デフレ脱却、経済浮揚の環境整備の意味合いが強かった。異次元緩和で時間を買い、その間に第二の矢である財政出動、第三の矢である規制緩和をはじめとした成長戦略が放たれるはずだった。財政は予想を超える規模で発動されたが、肝心な成長戦略は成果に乏しい。

一方、日銀の異次元緩和は、日本経済にある種の”甘え”を生んだとの見方もある。日銀が為替も株も債券(金利)も支配する官製相場を作り上げ、日本企業の活動を下支えした結果、日本企業は改革を先送りしてしまったのだ。輸出型企業は日銀による円安誘導で潤い、企業は株高で安穏としてしまった。まさに”ぬるま湯につかったカエル”である。

だが、日銀の異次元緩和はいつか終わる。そのつっかえ棒がなくなった時、日本経済の本当の実力が露わになろう。その時が早く訪れるのか、遅いのか。先伸ばしされればされるほど、失われた時のショックも大きくなる。であるならば、茹でカエルになる前に飛び出すことがなによりも重要となる。

逆説的だが、日銀は異次元緩和を早く止めることが一番の妙薬かもしれない。歴史が教えてくれる通り、甘えを排したところで日本人は初めて本気になるからだ。そうすることで日本経済は覚醒すると言っていい。

今の日銀は、将来の日本金融市場をむしばむ存在

 

元々、金利を人為的に操作する、というのが資本主義社会において禁じ手である。無理な力を加えれば、反作用の力が生まれることは自明だ。中国のような共産国家でさえ、自国の為替操作は国際的な批判がある。日本は自由経済なのに、当局が金利を操作するのでは社会主義国家のようだ。

禁じ手の劇薬であるから、本来なら短期勝負の策であるにもかかわらず、効果が出るまで続けようとしている今の日銀は、明らかに将来の日本金融市場をむしばむ存在になっている。

自らに課した2%の物価上昇のコミットメントに縛られて、強引な手法を取り続けている日銀の罪は重い。マイナス金利の効果が出る兆しが見えない以上、早く間違いを認めて、正常な金融政策運営をしなければ、バブルを生んだ、いつか来た道をまた繰り返す羽目になる。

 

政経電論せいけいでんろん

「政経電論」の編集部です。佐藤尊徳(そんとく)編集長の下、若い世代に向けて政治・経済・社会問題を発信しています。イノベーションや働き方改革、北欧型の社会保障、国防、原発、クジラ等に注目中。

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