憲法改正に大きな影響を及ぼす自民党総裁選と国民民主党代表選

2018.8.27

政治

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憲法改正に大きな影響を及ぼす自民党総裁選と国民民主党代表選

写真/Bloomberg

自民党総裁選が9月7日告示、同20日投開票の日程で行われる。安倍晋三首相は26日に立候補を正式表明し、石破茂元幹事長との一騎打ちの構図が固まった。首相側は“圧勝”により求心力を保持したい考えだが、石破氏がどこまで迫れるか注目される。一方の野党は、9月4日に国民民主党代表選を実施。これら2つの選挙は、この国の政策展開に大きな影響を及ぼすかもしれない。

vs 石破氏、安倍首相側に慢心はない

「日本は大きな歴史の転換点を迎える。平成のその先の時代に向けて、新たな国づくりを進めていく。その先頭に立つ決意です」。安倍首相は8月26日、訪問先の鹿児島県でこう述べ、総裁選への立候補を正式表明した。

自民党の総裁をめぐって選挙が行われるのは、野党だった2012年以来、6年ぶり。前回は安倍首相と石破氏に加え、石原伸晃前経済財政担当相、故町村信孝元官房長官、林芳正文部科学相の計5名が立候補したが、今回、安倍首相に挑むのは石破氏一人。「安倍一強」が続くなか、有力候補とされてきた岸田文雄政調会長が出馬を見送り、出馬に意欲を示していた野田聖子総務相は推薦人20人を確保できなかった。

今回の総裁選は[405]の国会議員票と、同じく[405]の党員・党友票の計810票を争う。すでに最大派閥の細田派(清和政策研究会)や第2派閥の麻生派(志公会)など7派閥中5派が安倍首相支持を打ち出しており、議員票では安倍首相側が約300票を固めた。

計算上は党員・党友票のうち4分の1程度を獲得すれば勝利だが、安倍首相周辺にそんな甘い考えはない。前回の総裁選では党員・党友票で石破氏に大差をつけられたが、今回は党員・党友票でも圧勝を狙う。出馬表明の地を鹿児島に選んだのも“地方重視”をアピールして多くの党員・党友票を獲得する狙いからだ。

憲法改正に向け圧倒的な求心力が欲しい安倍首相

安倍首相側が圧勝を狙うのは、“勝ちっぷり”が今後の首相の求心力に直結するから。自民党総裁はもともと、連続2期6年までに制限されていたが、昨年、安倍首相のために3期9年まで延長された。

とはいえ、今回勝利しても、もう次はないため、いわゆる「レームダック」(死に体)になるのは避けられない。今回、石破氏に票数で迫られるようなことがあれば求心力の低下に歯止めがかからなくなり、政策の遂行に影響が出かねないため、それを避けようと「石破潰しに躍起になっている」(自民党議員)のだ。

安倍首相が求心力の保持にこだわる背景には憲法改正論議の停滞がある。憲法改正は安倍首相の悲願。一時は改正に向けて大きく動き始めたかのように見えたが、「モリカケ問題」など政府の不祥事も重なって改憲機運は急にしぼみつつある。

今回の総裁選では争点に憲法改正を掲げ、改憲に慎重な石破氏に圧勝することで「民意を得た」として改憲論議を再び活性化させる狙いがある。再選されれば党内議論を加速させ、秋の臨時国会で9条に自衛隊の存在を明記した自民党案を提出。早期の国会での発議につなげたい考えだ。

石破氏は安倍首相の方針について「スケジュールありき」だと批判。9条2項を残して自衛隊の存在を追記する安倍首相案ではなく、9条2項の「戦力不保持」を見直して「国防軍創設」を盛り込む旧自民党案を軸に、慎重に議論するべきだと主張している。

安倍首相が圧勝するか、石破氏が意地を見せられるかで秋以降の憲法改正の動きが大きく変わってくる可能性がある。

9月4日、国民民主党代表選 与党に抗える野党はできるか

一方の野党では、立憲民主党に次ぐ勢力の国民民主党も代表選を実施中。9月4日の投開票に向け、玉木雄一郎共同代表と津村啓介元内閣府政務官が代表の座を競っている。

国民民主党は旧民主党勢力の結集を狙って今年5月に立ち上げた新党だが、支持率は1%程度と低迷。同じ旧民主党勢力である立憲民主党の支持率が10%程度で推移するなか、大きく水をあけられている。

代表選の最大の争点は来年の参院選をにらんだ「野党連携」。津村氏はこれまでの玉木氏の「対決より解決」路線を批判。共産党も含めて候補者の一本化を急ぐべきだと主張する。玉木氏は党の独自性と野党共闘のバランスに配慮し、参院選についても「まずは自分たちの独自候補を立てる」と指摘。共産党との協力にも慎重な立場を示している。

当初、代表選は9月下旬の予定だったが、自民党総裁選と重複して埋没するのを避けるために前倒しした。しかし、支持率が低迷している上に、政策的な争点も乏しく注目は集まっていない。さらに、打撃だったのが柚木道義元財務政務官の離党。代表選の矢先に結党以来、初の離脱者が出たことで、国民民主党の混迷ぶりが浮き彫りになった。

代表選は9月2日まで全国で街頭演説などを開催し、国会議員と国政選挙の公認内定者、地方議員、党員・サポーターに割り振られた合計284ポイントを争う。現状は玉木氏が優位に立っており、このままだと大きな方針転換はない可能性がある。

来春の統一地方選や夏の参院選で野党が分かれたまま戦えば与党を利することになるため、新代表が野党第一党である立憲民主党の枝野幸男代表らとどんな対応を話し合うかにも注目が集まりそうだ。

この秋に行われる自民党総裁選と国民民主党代表選。2つの選挙の結果は、憲法改正というこの国の大きな政策転換に影響を及ぼす可能性がある。